ずっとも
俺の名前は、小平ヨウ。大学卒業後は、地元の企業に就職が決まっている。高給取りとは言えないが、実家から通えるので、金銭的に余裕はあるといえるだろう。
そんなことより、実家の隣に住んでいる幼馴染みのカスミのことだ。2歳下の彼女のことは妹のように思っていた。だが、高校を卒業する頃には異性として意識するようになっていた。だが、俺は告白できないまま、他県の大学に行った。気恥ずかしくて告白できなかったのだ。大学生活中に女友達は何人かできたが、彼女とまではいかなかった。帰郷したら、カスミと付き合いたいと思っている。
現在の彼女は、高校を卒業した後、俺の勤める予定の会社で事務として働いている。
離れている間も、時々LINEはやり取りしていた。ただそれは兄妹のやり取りのようなものだ。俺は、彼女と新たな関係になるために、カスミにLINEを送った。
ヨウ「カスミは付き合っている人とかいるの?」
しばらくすると既読マークがつき、またしばらくして返事が来た。
カスミ「ずっとモだよ」
「ずっトモ」――ずっと友達という親友宣言。彼女は俺に脈がないのだ。俺は、がっくりと肩を落とした。
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帰郷した俺は、実家の玄関前に立っている。隣の家にはカスミがいるだろう。あれからLINEは返さなかったが、これからは昔のように兄のように振る舞おう。
玄関を開けると、カスミが飛びついてきて、俺をぎゅっと抱きしめた。両親も玄関に立ち、俺たちの様子を見て満面の笑顔である。
母は「やっぱりお似合いね」
父は「真面目にお付き合いするんだぞ」と言った。
何だ?夢でも見ているのか?
俺を抱きしめながら満面の笑顔で顔を見ているカスミはこう言った。
「私、ずっと『喪』だよ。喪女だよ。ヨウ兄ちゃんを待ってたんだよ」
なんということだ。俺は、彼女が「ずっと『喪』」だよ」と言ったのを「ずっトモ」と勘違いしていたのだ。