「レプリコン」(レプタリアン・Re・コンタクト)レプタリアンのDNAを注射される。(この連載が続いているうちは作者は無事です)
「 世界中で日本人だけが新型感染症のワクチンであるレプリコンの接種を義務付けられたが、
そのレプリコンとは、感染症の免疫を持つ人のDNAだった。
犯罪者、天才などのDNAが接種されたが、それぞれがロット分けされ情報収集されていた。
一方、NASAから宇宙人のDNAが盗まれたが、盗まれたのではなく、NASAが意図的に盗ませ、独自に情報収集をしていた。
主人公もワクチン接種をしたが、そのDNAは宇宙人のものだった。
宇宙人であるレプタリアンは、再びコンタクトを図る。
それがレプリコンであり、その名前の意味は「レプタリアン・Re・コンタクト」である。
レプタリアンの遺伝子を接種した主人公は、レプタリアンに意識を乗っ取られてしまうのか、
その時、別の惑星から来た宇宙人が日本にのみ、新種の麹菌を降り注いでレプタリアンの計画を阻止する」
第一章「お得な情報」
「ミツぅ~、もう区役所から通知来た?」
「ん、注射の通知のこと? もう先週、体育館まで行って打ってきたよ」
2024年の秋、次の冬に猛威を振るうと予想されるウイルスのワクチン接種が開始されていた。
致死率が高いと想定されるウイルスに対して、政府は日本人全員のワクチン接種を義務付けた。
いやなことばかりではない。このワクチン接種を終えると証明書が発行されて、さまざまな特典が得られる。
私は、ホテルや旅館の宿泊料が30%オフとなることや、新幹線や飛行機、高速バスの使用済みチケットを、コンビニや銀行に持参すると、地域内で使えるクーポン券がもらえるので、通知が来た日にワクチン接種を受けた。
注射を打った日は良かったが、翌日と翌々日に39度2分の熱が出て苦しんだ。
こんなに苦しいならウイルスに感染した方が楽なんじゃないかと思ったし、何よりも接種を受けた左腕の肩から肘にかけてが、異様な感覚に陥った。それは腕が重いとも、間接が痛いとも少し違って、自分の腕ではないような、思ったように動かせない、無理に動かすと重くて間接が軋むような感じだった。
その感覚は数日続いたが、今は違和感はなく普通に動かせている。
「私はどうしようかなぁ、義務だから打たなきゃだけど、私は病気したことないから、たぶんワクチン注射も必要ないと思うんだよね」
職場の同僚で一番仲の良いレンゲは、なんとか理由をつけてワクチン接種を遅らせたいみたい。この強制的なワクチン接種に疑問を持っているのかもしれない。
私の名前はミツ。今年、専門学校を卒業して歯科衛生士として働いている。私の勤めるデンタルクリニックは都内の山手線の駅近く。4つある歯科医ユニットは常にフル稼働の、忙しい職場だ。
「まさかレンゲ、注射が苦手なんてことないよね、あはは。国民の義務だから今年中に打った方がいいんじゃない。それよりさー、この前の女子中学生のアンケートで、将来なりたい職業で一位がキャバ嬢だったよね。私のころとは違うなーって思っちゃった」
「私たち、もうおばさんかもね。あーあ、一夫多妻ならいいのになー、仕事しなくても金持ちを見つけて悠々できるのに。貧乏な男と結婚なんかしたら最悪よね」
金持ちの男は早い者勝ちだ。それにあふれたら結婚なんかしない方がいい。女子中学生へのアンケートで、一夫多妻に賛成する生徒の割合が40%を超えてしまい、公表を控える事態になったらしい。
「キャバ嬢に一夫多妻か、はは、それもいいのかな」
私はそれらの情報に対して、自分の意見をまとめられないまま、頭の中で軽く受け流そうとした。
その時だった、頭の中で、電車の車掌のアナウンスのような、聞き取りづらいアクセントの言葉? 意味不明な想い? がよぎったような気がしたが、特に気にもとめずに、
「レンゲも早く注射を打って、一緒に旅行に行こうよ」
と、声をかけた。