57/60
Betrayal within betrayal(8)
救命救護室の扉がノックされた。
「失礼」
松田だった。松田が衛兵を連れて救命救護室を訪れた。
「松田さま」
琉乃は松田が入室する手前で引き止めた。
「壮馬さまは細菌による感染で瀕死状態になります。近寄るのは危険です」
遠くにいる壮馬の顔は痩せこけていて意識は皆無といってもよさそうな脆弱さを帯びていた。
「あの点滴は? 」
「せめてもの抗いになります。あれで少しの細菌の増殖を抑えております」
「その必要性などあるのですか? 」
「恐らく壮馬さまはもう…… そのあとの火葬や埋葬のことを考えますと感染が残された我々に被害の及ばぬようこのような処置を致し方なくしております」
「なるほど」
「…… 壮馬さま」
大石が涙を浮かべ絶望的な顔をしていた。それを松田は一瞥する。
「琉乃先生、私はこれで」
「その方が懸命でございます。ここにいたら松田さまにも危険が及ぶ可能性があります」
「ああ、では後処理を頼みますよ」
琉乃は一礼した。大石は涙で咳き込んでいた。
松田は衛兵を携え、華麗に歩いて行った。
「いい気味だな」




