The truth of the truth(6)
「英男さんはvCJDに罹患していました」
「vCJD? 」
大石が聞き返した。壮馬は静観している。
「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病です。いわゆる脳疾患になります。つまり、狂牛病に感染した牛を経口摂取したと思われます」
「狂牛病… か? 」
「ええ、ですので鈴木さん宅の牛に対して早急に対応をしなければなりません」
壮馬は納得したように顎に手を置いた。
「それと鈴木一家が行方不明になった件とどういう繋がりがあるというのだ? 」
琉乃は息をひとつ、ついた。
「少し前から複数の民が行方不明になっていたことはご存じですか? 」
「…… 」
「…… 」
壮馬と大石が目を逸らした。
「数週間前にわたしは恐らくその行方不明となっていた身元不明の民を保護、看護をしておりました」
ふたりは琉乃をみた。琉乃は真っすぐな黒い眼差しをしていた。
「その患者から腕に斑点と異色のリングの形の跡がみられました」
ふたりは目を合わせた。大石が琉乃に向き直った。
「それは一体? 」
それについて、そして琉乃の仮説について壮馬と大石は検討がついていないことを確認した。
「壮馬さま、行方不明になっていた複数の民の件はご存じでしたよね? 」
「…… 」
壮馬は琉乃の眼差しをしっかり見て、何も言わなかった。大石が横から入った。
「いいえ、琉乃さま。壮馬さまはなにも知りません。私が報告し忘れたのです」
眼差しを大石に向けて、琉乃は口を開いた。
「大石さんが報告のし忘れですか? あれだけ壮馬さまに従順で仕事以上の関係性でいらしているのに? 」
「…… 」
大石は琉乃から目を伏せた。壮馬が声を出す。
「よい、大石。琉乃、俺がその件について知っていたとしたらどうなんだ? 今回の鈴木家の行方不明とどんな関連があるというのだ? 」
「知っていた、だけではないでしょう? 」
「…… どういう意味だ」
「鈴木宅の前で壮馬さまは民に向かって自ら事件解決に向けて動くことを宣言したわ。そして複数の民の行方不明の件についてはなにも動かなかった。それは逆に言うと壮馬さまがその件に関してなんかしらの関与をしているからこそ動かなかったことを意味するわ」
「…… 何の関与だ? 」
「自然に考えれば直ぐに答えは出る。恐らく、誘拐を指示したのは壮馬さま。そしてきっとそれには大石さんの関与も考えられる。そして可能性として少しの官も関与はしている筈よ」
「なぜだ? 」
「わたしが看護していた身元不明者は大の大人よ。しかも男性です。そのひとを誘拐するには指示命令系統が発生していたと考えられます。その他にも複数人が行方をくらましているとなると自然とその考えが浮かびます」
大石は今も顔を伏せている。壮馬は聡明な顔をして琉乃の瞳を見ていた。
「では琉乃、お前は鈴木一家の行方不明事件も俺たちが関与していると踏んでいるのか? 」
「いいえ、それは考えられない」
「どうして? 」
「さっきも言ったように鈴木一家の件に関しては壮馬さまは自ずと動いた。つまりそれは関与していないというほかないわ。ただ…… 」
「ただ? 」
「鈴木一家を誘拐した犯人は、確信はない。確信はないけれど…… 」
「なんだ? 」
「犯人は、恐らく壮馬さまたちが誘拐し、身元がわからなくなっている被害者たちよ」
壮馬と大石の目に一本の線が入った。
「なんだと⁉ 」
「琉乃さま、それは一体どういうことでしょう⁉ 」
「理由はまだ言えない」
壮馬が声を低くした。
「…… 何故だ? 俺たちを信用できないというのか。…… それもそうだな」
「壮馬さま、わたしには知らないことがまだある。その段階で壮馬さまたちを信用出来ないという判断は下せないの。言えない理由は、わたしの個人的な理由よ」
「個人的な理由? 」
祠へと向かっている衛兵らが足並みを揃えていざなわれていた。土埃が跡に舞っていた。




