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The truth of the truth(5)

 琉乃は汗だくになりながら仮の救命救護室にやって来た。息があがって唾を飲み込むのがやっとだった。ここには琉乃が数週間前から看護している身元不明の男が眠っている。

 琉乃には確認事項があった。

 あの患者には腕に斑点と異色のリングの形の跡があった。琉乃には一瞬霞んだことがあった。2222年に、琉乃が医師免許を剥奪された理由となったあの論文。正直なところ、今でも疑わしいところがある。それでも、ううん、でも… 琉乃はずっとそれを反芻していた。

 扉を開けた。簡易的なベッド。そこに、その男はいなかった。

「そんな… どうして」

 琉乃がベッドに近づくと点滴を無理やり取り外した跡があった。

 琉乃は顔を伏した。そして両頬を手で叩いた。

(まだ、… まだやらなくてはならないことがあるわ)

 琉乃は目的の場所へとまた、ひたすら走った。


 陽はもうすぐ傾き始める。影の伸びと比例して琉乃の頭にずっと抱いていた疑問があった。大石は会話の最中に時折嘘をつくことに琉乃は気が付いていた。それに何の意味があるのか、琉乃はずっと解らなかった。だから黒のトープの男について敢えて解る嘘をついた。あちらの反応が見たかったからだ。


 琉乃は荒れている息を整えた。身なりも整え、ノックをした。

「琉乃です。よろしいでしょうか」

 ドアが開いた。大石が出迎えてくれた。

「どうぞ」

「失礼します」

 官邸内の部屋の奥に壮馬がいた。テーブルには淹れたハーブティーがあった。ハーブティーの茶葉もいくつか常備してあった。


 琉乃には壮馬が悲痛な顔をしているようにみえた。

「琉乃、どうした? そんなに急いでここに来たのか」

 平静を取り繕っても、壮馬はそれを必ず見破る。恐らく壮馬は予感している。それは大石も同じだろうと琉乃は確信した。

「鈴木一家の件について報告があります」

 大石が口を挟もうとした。直ぐに壮馬はそれを遮った。

「よい。続けろ」

「民の話によると鈴木家父、英男さんの夜間の徘徊、そしてそれをご家族が困惑していたということを聞きました。この件についてはお二人はご存じでしたか? 」

「いや」

「いえ、私も存じておりませんでした」

 壮馬も大石もかぶりを振った。琉乃は続けた。

「民はこうも言っておりました。鈴木さん宅で卸している牛乳の質と量の低下がみられていた、と」

 大石は眉間に皺を寄せた。

「つまり、英男さんの徘徊の理由として、その牛乳が関係している、というのですか? 」

 琉乃は頷いた。

「草の通りにあった吐血を採取して成分を解析しておりました」

 壮馬が半歩、琉乃に近づいた。

「成分の解析? お前、そんなことも出来るのか」

「… 」

 琉乃は限りある医療資源の中で自身の知識を可能な限り駆使していた。だが今はそんなことを誇示する必要性はないと琉乃は判断した。



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