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The truth of the truth(1)

 琉乃はシャワーからあがり、布で身体についた水滴を拭っていた。左の胸部に過去に受けた縫合の跡があった。跡はいまでも少しだけ隆起している。

「おとうさん… 」

 オペ着を着衣した医師を琉乃は思い出していた。

「おとうさんは優秀な小児外科医だったもんね。わたしのこの傷もおとうさんが縫ってくれた… 」

 胸に傷を負った幼い頃の自分を琉乃は回顧していた。運ばれる琉乃は意識が遠のく行方の元に医師が追ってやってきた。

「この女の子の身元は? 」

 琉乃は水滴を拭った身体に服を着た。

(なんでこんなこと、今頃思い出したんだろう)

 琉乃は窓をぎい、と開けた。

 きっと壮馬だったら自分のいうことに意味があることに気が付いてくれると琉乃は知っていた。壮馬はなんだかんだいって勘がいいことを感じていたからだ。

 窓からの都を眺めて、琉乃は考えていた。

 吐血

 牛乳の量と質の低下

 鈴木家父の異常行動

 小屋の痕跡

 そして、手編みのくつ下

 もしここにオカリナがあったら、息を思いのままに吹き込みたくなった。時に先天性疾患の苦しみと後天性疾患の苦しみの味の異なりで優劣をつけたくなる患者心理も行き着く先は同じだった。どんなにいがみ合っても人はただ闇の中に光る一筋の希望が欲しいだけなんだ、と、そんなことを思った。

「わたしもその内のひとり、か… 」

 皮肉だな、とそう思った時眺めの先に煙がたっていることに気が付いた。

(あの家の方向は… 萩原さんのお宅かしら? )

 琉乃は重い窓を閉め、玄関へと向かった。



 お手製の炭化器から溢れる火力に汗を伝いながら萩原は慎重に観察していた。油断をしたら一気に畳みかけられることを経験から学んでいた。服で拭った汗の成分が肌から自分に返るような感覚があった。背後から近づく足音に萩原は振り向いた。

「琉乃先生、息を切らしてどうされたのですか? 」

「萩原さん、なにしているのかなと思いまして… 煙の先が萩原さんのお宅だったから」

「ああ、これですか」

 萩原は朗らかに笑った。

「琉乃先生、少し待っててもらえますか? もうちょっとで終わりますので」

 そう促され琉乃は近くの木こりに座った。萩原は職人の背中をしていた。真っすぐと向き合っている姿が、人として恰好良く思えた。

(きっと、芯が通るってこういうことをいうんだろうな)

「お待たせしました、琉乃先生」

 汗を拭いながら萩原が笑って戻ってきた。

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