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The Cow(3)

 官邸では壮馬が手にバックソーンの小枝を持って眺めていた。

 大石がハーブティーを淹れて壮馬のもとに一脚置いた。

「壮馬さま、どうぞ」

「あ、ああ。大石、お前も飲め」

「失礼致します」

 大石は一口啜った。

「その枝はなんでございますか? 」

「いや、やはり夢だったのかな」

「夢? 」

「なんでもない」

 はぁ、と大石はやり過ごした。

「それにしても鈴木さんのお宅の件はどうしたものでしょうか」

「ああ、衛兵からの報告もこれといって進展はなしだ」

「ええ、衛兵の足には期待しているのですが、難しいのでしょう」

 壮馬はもう一度、手に持った小枝をみた。

「琉乃、あいつ… 」

「琉乃さまですか? そうですね、琉乃さまの動きにもどうにか成果を出して頂きたいものです」

「… 」

「壮馬さま? 」

「あ、ああ。なんでもない」

「壮馬さま、先程から変ですよ」

「いや、なんでもないんだ」

 壮馬は椅子から立ち上がり窓から空をみた。そして棚から一冊の本を取り出し、見開いた。

 大石は手に持ったカップをソーサ―に置いた。

「琉乃さまのことですか? 」

「… ああ」

「我々に残された唯一の書物、壮馬さまの一族であるあの家系に代々伝わる聖伝。そこに書かれた壮馬さまの義務。そしてある夜に現れる奇妙な女の記述。見事に聖伝の重きに身を奮わせております」

「琉乃には出来たらここでのことには関わってほしくなかったのだがな」

「… 壮馬さま、琉乃さまに関してはこうありました。破壊か救いかは己次第、と」

「己次第、か…。 俺に何が出来ようものか。俺は本当に名ばかりの都の主でしかない。それを痛感するのは琉乃が来てから大きくなっている」

「そんなことはございません。壮馬さまの存在がどれほどのことか、私は誰よりも知っております」

「お前にも申し訳なく思っている。希子… お前の姉君を俺は守ってやれなかった」

「壮馬さま、それ以上は言ってはなりません」

「… ああ、そうだな」

 大石は立ち上がり、壮馬の隣で一緒に空を眺めた。

「琉乃さまに期待しましょう。なによりも現時点での問題に直面しなければなりません」

 壮馬は聖伝をはらりと捲った。それを大石は共にみていた。

 ハーブティーを一口含み、壮馬は大石をみた。

「美味いな。さすが梅の力作だ」

「誠にございます」

 大石は微笑み、壮馬に応えた。


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