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ハウスリーク(7)

 頭上の雨雲の色が濃くなってきた。次第に雷雲に変わりつつある。


「いた! 高杉さん‼ 」 


 高杉は地面に転がり、意識を失っていた。


「昏睡状態に入りつつあるわね」


 雨が強くあたってきた。


「大石さん、雨を逃れる場所へと移動したいわ。高杉さんをおぶってくれる? 」


 私は無言のまま頷き、そのまま先奥へと続く洞穴へとそのまま吸い込まれていった。


 洞穴の中で高杉を寝かせ、そのまま琉乃さまは高杉に付きっきりになった。


 なにやら琉乃さまは高杉の喉を押さえている。


「なにをしているのですか? 」

 心もとない状態で私は琉乃さまに訊ねた。


「嘔吐を誘発させているの。まずは毒性を身体から取り除きたい」

 そうこうしている内に高杉は大きく嘔吐し、そのまま持っていた水を飲ませていた。


「大石さん、火をおこせる? 高杉さんの身体を温めたいの」

「やってみます」


 森のなかに電気など通ってやしない。

 自力で火を起こさねばならない。

 私は雨の中、枯れ木を集めた。


 洞穴に戻ると応急処置は済んでいたようだ。


「高杉さんは大丈夫なのですか? 琉乃さま」

「ええ、大丈夫よ。でも体調が優れていないのは事実だから安静にしていないとね」


「いま、火をおこします」

「お願いします」


 枯れ木は雨のせいで湿っていた。

 幾分経っても火が起こせる状況にはならなかった。

 自分の無力さを思い知った。


「大石さん、ありがとう。なにか他の手を考えましょう」

「… 申し訳ありません」


 そう言う私の横で琉乃さまは服を脱ぎ始めた。

「琉乃さま⁉ なにをされているのですか⁉ 」

 琉乃さまは下着姿になりその豊満な身体のラインが顕わになった。

 私のことなどお構いなしにそのまま脱いだ服を高杉に被せた。


「これで少しは、ましでしょう」


「… それでは、私も」


 いそいそと服を脱いだ私も琉乃さまと同様に高杉に衣服を被せた。


 琉乃さまと私は背中を向けたままその場にいる。


「この大雨が収まるまではここにいた方がよさそうね」

「そうですね」


 私は洞穴の出口の方向を見ていた。雷光が光り、近くの木に落雷したようだった。


「大石さん、ちょっと横向いててもらえる? 」

「… はい」


 横を向き、視線の先を間違わないように神経を使う。

 その隙に琉乃さまは歩き、洞穴の出口になにやらしていたようだ。


「大石さん、もういいですよ。さっきと同じくしてください」


 そう言われ洞穴の出口の方をみていると、なにかの植物が植えられてあった。

「これは? 」


 思わず琉乃さまの方をみてしまい、琉乃さまは顔を赤らめ固ってしまっていた。

 私は慌てて顔を向き直す。


「申し訳ありません‼ 」


「それはハウスリークです。

 さっき蓬を摘んでいたときに偶然みつけて少しばかり拝借させてもらっていたんです。

 様相が可愛いでしょう? 

 これは古くから屋根に生えることで避雷針の役割を果たすといわれていたんですよ。

 一種のおまじないのようなものです。

 ここから無事帰れますように、と」


「… 私は酷い男ですね。

 民をこんな目に合わせたのも私が間接的に関係しております。

 自分の立場をきちんと把握していない、愚かな男です」


「自分を責める必要はないわ。

 高杉さんは何年生きている人だと思うの? 

 わたし達の倍は生きているのよ。

 目が覚めた頃には全てを理解し、自分がとるべき行動がわかる人よ。きっとね」


 私はずっと胸に抱いていたもやもやを琉乃さまにぶつけた。


「… 琉乃さまは、壮馬さまのことをどう想っているのですか? 」




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