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5・見事に有言実行されている

 それから一月余りのち、南部衆は宣言通りに飛行機を完成させてきた。

 設計自体はこちらで行ったもので、形は低単葉のありふれた軽飛行機をベースとしているが、プロペラ推進ではなく推力式である為、推進器を機体の下に取り付けた格好になっている。まるでYak17だ。


 そして、プロペラ機であればエンジンが装備される位置に魔導炉を配置したという。当然ながら、南部衆には飛行機を操縦できるものは居ないので、完成の連絡を受け、浮田一門のパイロットを伴い、咬刹夏へと赴いた。


 そこで見た機体は私の予想を裏切るほどである。


「言った事はしっかりやった。どうだ?」


 自信ありげに語る南部衆のドワーフ。確かに、彼の言う通りならば凄いなどと言うレベルではない。革新的だ。


「魔導炉など無理だと思っているだろう?ソレは、お前たちがたかが鉄しか扱わないからだ、咬刹夏じゃぁ、多種多様な鉱物が出る。お前らの好きな金や銀もだ。この炉はそうした中でより軽量で魔力適性の高い軽銀を使った。ああ、お前らと違って精錬も加工も可能だ」


 機首のカバーを開いて配管がつながった円柱の物体を指してそう言う。なるほど、確かに銀のような光沢があるソレ。大きさもちょっとした小樽、前世でいえばビールサーバーにつなぐビール容器程度だ。


「ついでに、試しに動かして見りゃあ、あの推進器じゃあ耐えられなかった。ちょっと出来の良すぎる魔導炉を拵えすぎたからなぁ、アッハッハ」


 と、少々厭味ったらしく笑う。という訳で、推進器自体もドワーフ製に変更されている。


「分かっているとは思うが、この機体はせいぜいが渡り鳥の速度程度しか出せない強度で設計した。あまり性能を上げたからと言って、機体が壊れたのでは意味がない。それに、本当に二人乗って飛べるかどうか、貴殿が乗り込んで試してもらおうか」


 と、嫌味に返す。自信たっぷりに頷くドワーフ。


 それから実際に平野でもってしばらく滑走試験を行い、動作に問題がないことを確かめ、いざ初飛行である。


 機体は大きな排気音を発しながら滑走し、見事離陸した。風の魔法と火の魔法を複合し、まるでバーナーのような音を立てながら飛ぶ姿は、確かにジェット機と言えなくもない。


 10分ほどの試験飛行を終えて着陸して来ると、乗り組んでいたドワーフは興奮気味に降りて来た。


「どうだ!スゲェだろ。俺たちがこれを作る事を認めてくれるんだよな?色々試したいこともある。飛び方も教えろ」


 どうやら、酒の話しよりも飛行機の製作と、自ら思い付いたり見つけたアイデアや改良点を早く試したいらしい。


「予想以上の事を実現している。飛行機製作は南部衆に任せよう。こちらでの試験の為に人を連れて来るが、貴殿らにも操縦法を教える様に伝えておく」


 さて、酒の話を忘れているならそのままで良いかと思ったら、しっかり覚えていた。なんとも抜け目が無いというかなんというか。


 こうして新たな軍の立ち上げ自体は成功したが、問題がすべて解決したわけではない。


 現在のところ、飛行機の速度は時速200kmを超えない程度であるし、操縦できる人員もごく限られている。

 これから軽飛行機を増やしてパイロットを増やしていくという過程にある。


 そして次に問題となるのが、飛行機に搭載する武器だ。


 現在の魔道砲は初速が遅い為、飛行機の武装としては不適切である。とは言え、珍兵器的なロケット戦闘機や初期のジェット機に存在したロケット弾ポットの様な使い方は出来なくはないが、我が国の魔道兵器がその用法に向くとは思えず、なにより、その様な珍兵器はとても実用的ではない。


「ところで、今後はこの飛行機に武装を考えなければならない。が、今の魔道砲では空での再装填は出来ず、狙いを定める事すら難しいように思う。何か案は無いか?」


 飛行機製造と今後増える酒の流通について騒いでいるドワーフにそう聞いてみると、何とも呆気なく返答があった。


「ああ、そんなもの、この推進器を応用すりゃあ良い。風やら火やらを用いて風を吹かす事が出来るなら、矢を飛ばす装置として応用も可能だろう?」


 というのだ。そんな事は思い付きもしなかった。一体どのようなものだろうか?


「ほう?全く想像が出来ないが、どの様な装置だ?」


 そう聞くと、すでに彼らはその武器についても試作を行っていた。


「それなら、アッチにある。コイツには積めないが、もう少し大型の機体を作れば可能なサイズと重量だ」


 と言って案内された先にあったのは、短い砲身を備えたリボルバー銃の様なモノであった。たしかに、これなら数発は連続して撃てそうだ。


「コイツは雷の魔法を応用した武器だ。火の魔法を利用した魔道砲よりも簡単で大量の矢を飛ばせる。この円筒には矢が60本入るが、コイツを次々飛ばせる訳だ。お前たちのシケタオモチャ以上のブツだろう?」


 と自慢する。確かにそれはそうだろう。手持ちサイズをはるかに超えたソレならば。


 実際、射撃するところを見ると、前世記憶にあるレールガンと構造が似通っている事に気が付いた。ということは、かなりの魔力を消費して発射しているのではなかろうか?初速は分からないが、レールガンよりは遅く、魔道砲よりは速い。前世の一般的な機関砲と変わらないくらいは出ているだろう。


「この程度の大きさであれば、アレに積んだ魔導炉で事足りる」


 と言って示されたのは、リボルバー銃の下部に付属した物体だった。なるほど、これならば重量は弾倉込みでも100kg程度にしかならない。戦闘機として実用に耐える機体であれば問題になる事は無いだろう。

 

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