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13・ようやく反撃に移る事が出来る

 威勢よく後部操作員を引き連れて乗り組んだは良いが、結局一機で何かが出来るという訳ではない。


 たしか、前世のかの人物は一機で一軍を屠っていたのかもしれないが、残念ながら、今の彼女にはそこまでの力は無い、ハズだ・・・・・・


 主に後部操作員の訓練と習熟に二月を費やし、新型機も何とか12機を数えるまでに増えた。技量は『大鷲』のパイロットや力不足と分かった『隼』を引き上げることで何とか確保している。


 そんな最中にも、爆弾搭載という提案をして来た魔王様。


「飛竜を攻撃するのが第一なのじゃが、やはり、渡ってくる船や、場合によっては占領地に築かれたトゥーファンの拠点も叩く必要があろう?」


 という、至極真っ当な意見を出してきたので、それを取り入れて新型機への爆弾搭載も可能なように改造が施され、訓練には爆撃訓練まで加わった。


「そうだ、降下を始めたら翼を開いて減速態勢に入るんだ」


 ハンナ姫が編み出した新型機による急降下爆撃法をこうして皆で会得しようと頑張った。


 そんな事があって季節が一巡りした頃、ほぼ約束通りに一年が過ぎ、ハンナ姫をはじめとする薔薇騎士団の中からも飛行隊を編成できる人数が技量を認められ、彼女たちだけで12機の薔薇飛行隊が編成された。

 さらに、『隼』にカナードを装着した改造機がそこそこ性能を発揮してくれているので、専用の攻撃機として新たに飛行隊が組まれ、こちらにも薔薇騎士団の騎士達が配属されている。


「まさか、ここまで上手く事が運ぶとはのう。戦闘機にはならんが、攻撃機としてならアレも使える。速度は遅いが、ミラージュ50みたいなモノよな」


 と、エプロンに並んだ機体を見回して満足げなハンナ姫。私はドワーフや彼女に引っ張られるように、新型機の後部操作員の一人として飛行隊に参加する羽目となった。


 そして、彼女からの提案もあり、新型機には『屠龍』の名を冠する事となり、攻撃機には『呑龍』の名が冠されることになる。

 『呑龍』の推進器もドワーフ達のたゆまぬ努力(好奇心)によって推力が増強され、単発用により大直径化した事で元の『隼』よりも推力は高い。ただ、爆弾を機外に搭載する関係から、速度はそこまで求めず、離陸性能向上が最大の目的となってはいるが。


 こうして、なんとか僅かにキメの湊周辺のみを未だ維持するテハン、そして、それを空から掩護する騎竜軍という状態が維持されたところへと、我々新型機飛行隊が参戦する事となった。


 我々の進出に先立って、4機ほどの『屠龍』が先行してテハン領域の偵察を行い、飛竜の基地などを捜索していた。

 我々が泊潟へと進出した頃には、前線に近い飛竜の基地も確認され、いつでも攻撃できる状態になっていた。


「機は熟した。反撃の狼煙を上げる時ぞ!」


 さっそく、司令官でもないのに、ハンナ姫が気勢を上げてそんな事を言う。私がそれを抑えようとするのだが、彼女の言葉に悪乗りしているドワーフを抑えるのは一苦労なので、まずは連絡用の『飛燕』によって都へと帰還報告と、新たな作戦計画の上奏へと向かった。私としても、自国を襲撃している飛竜基地が判明しているのに、指を咥えて見ているという選択肢はない。


 あれから一年余り、ようやく最近は武田や雑賀の勢いもなく、私へ露骨な事は言わなくなっている。村上勢は既に海上からの偵察によって、テハンの都であったスイでは造船が盛んにおこなわれ、遠からずキメないしは泊潟へと大軍が押し寄せる兆候をつかんでいた。


 そうした状況から、ハンナ姫の叫ぶ大陸反攻作戦にも現実的理由があり、帝も首を横には振らず、私に作戦を一任するとの御下命を拝する事が出来た。これによって、一時的に泊潟方面の村上勢の指揮権も授けられ、より一層、作戦の内容を濃くする事が出来ることになる。


 まずは問題を抱えながら奮戦していた『大鷲』から、ドワーフや蓬莱人によって編成された『屠龍』飛行隊へと配置換えを行い、『大鷲』飛行隊のメンツは機種転換の為に咬刹夏へと向かう。

 半ば数合わせとして配備が継続されていた『隼』は出力が向上し、爆撃能力を有する『呑龍』へと機種変更となる。こちらはほぼそのままなので、現地での乗り換えと習熟で対応している。


 ただ、まずは数が揃うまでは薔薇飛行隊を中心にして迎撃任務が行われ、薔薇の騎士を含む『呑龍』飛行隊がキメの支援に飛んで行くという、平凡な作戦がしばらくは続き、ハンナ姫のストレスの原因となっている。


「いつになったらアカの陣を叩けるのじゃ!」


 と、定期的にやって来るが、『屠龍』の第二陣が揃って迎撃と侵攻攻撃の二面作戦が可能になるまではどうしようもない。


 そんな時、武装を外し軽量化している偵察用『屠龍』が哨戒中に船団を発見した。


「船団か。村上衆の話しと合わせて考えると、こいつ等はトゥーファンの仕立てた海軍なのだろう」


 まずは村上衆へと情報を伝える。


 そして、ストレスをためているハンナ姫の機嫌を取るために我々も海軍に先立ち爆装にて飛ぶことにした。

 さすがに低速とは言え、動く船を相手に爆撃訓練などしていないので、当たるとは思っていない。が、目的はご機嫌取りなのでそれで構わない。


 その話を伝えるととても喜んでいるハンナ姫。


「とうとうその時が来たんじゃのう」


 だが、海へ出た事のないトゥーファンが海へ出張ってくるのだから、大抵は奴隷にされたテハンの水夫や軍人ではないのかと思うのだが?


「そうかもしれんが、キメへと害をなそうというならば同じことよ。島国には分からんことかもしれんがの」


 と、えらくドライな返答だった。姫がそう言うのだから、私があれこれ気を揉んでも仕方が無いと割り切り、部隊の出撃準備を命じた。


 当然だが、薔薇飛行隊12機だけが単独で出るのではなく、護衛の為にドワーフの『屠龍』飛行隊も一緒に飛ぶ。そこの一機に私も搭乗する。


 時間の関係で出撃は日を跨いで翌日の夜明けだった。朝日に照らされながら20機の『屠龍』が先行して哨戒に向かった偵察機を追う。


 一時間も飛行すると大陸の沿岸部が見え、その影に沿うようにさらに南下を続けると、船団を発見した。


「赤い旗だ。トゥーファンで間違いねぇな」


 というドワーフ。私もその船団を確認するが、まだ遠くてハッキリと旗が見えない。が、そもそもそのガレー船っぽい船の帆には赤い竜らしきマークが描かれているので、間違いはないだろう。

 ふと、薔薇飛行隊の編隊へ視線を向けると、すでに降下態勢に入っていた。


 各々急降下爆撃の要領で攻撃を行うが、さすがに目標が小さく移動している事もあって命中弾は出なかった。


「至近弾が2発か。櫂手や甲板にいくらか被害が出ているようだが、この程度か」


 と、私が観察していると、上昇していった薔薇飛行隊が船団後方から雷撃砲により掃射を加えた。流石に沈没や火災と言った被害を与えることはできないが、帆が破れ、マストを壊す効果はあった。水夫や兵士にも相応の被害は出ている事だろう。

 執拗な攻撃で8隻のガレー船が帆が破れ、マストを損傷している。どうやらそこで弾切れになったらしく、薔薇飛行隊は我々のいる高度まで上がって来た。

 ハンナ機が接近してきて帰還のハンドサインを送って来た。


「お頭ぁ、帰るんだよな?」


 と、確認してくるドワーフに、帰還を伝え、ハンナ機がそれを了解して北へと飛んで行く。我々は薔薇飛行隊が着陸するまでが護衛なので、飛行場まで周辺監視の任を全うした。



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