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11・考え付くことは似ているのかもしれない

 姫が何か言ったような気はするが、その事はスルーして薔薇騎士団の者たちを咬刹夏へ送り、訓練を行う事になった。私も試験機の具合を知りたいので彼女らに同行。


 咬刹夏に到着すると今日も試験機の飛行が行われており、上陸する以前からその姿を見ることが出来た。


「ほう、ここがアレの訓練場か!」


 旅の疲れも無く元気な姫様である。そして、薔薇騎士団一行を飛行場へと連れて行き、基礎訓練を行っている者たちへと引渡した。私はその足で試験機の状況確認へと向かう。


 試験機建屋では、担当するドワーフや浮田衆の者たちが集まって何やら図面とにらめっこしている。


「おう、帰って来たか!」


 私に気付いたドワーフが声を掛けてくる。


「何か問題でもあったのか?」


 私も彼らが覗き込んでいる図面を覗くと、どうやら大幅な変更が必要な個所が発見されたらしい事が見て取れた。


「ひとつじゃ力不足だ。速度が出るのは良いが、動かせなくなるんじゃあ使えねぇだろう?」


 どうやら櫂漕ぎ魔道具を流用したシステムが力量不足であるらしい。飛行機に積める程度の魔道具だからそんな大型ではないのが悪かったのだろうか。


「それはそうだが、基本的に低速でしか使用しないのではなかったか?」


 ただし、本来の目的を考えるとそこまでの力量が必要な筈は無かった。離着陸の利便性を上げるのが目的なのだから、時速150km以下で動けばよいはずだ。


「そのつもりだったんだがよ。旋回や降下の時に操作すると動きが良くなることがあったんだ。そういう使い方が出来りゃあ、もっと自由に飛べると思わねぇか?」


 たしかに、そう言う話があったような気がする。速度や状況に応じで自動制御しているという話を読んだ記憶がある。


「なるほど。そう言う事か。それで、飛行中に動かすのに必要な魔力供給も可能なんだな?」


 そこが一番大事なポイントだ。離陸時の様な場合や上昇時のような最大出力の場合は動かせないかもしれないが、多くの場面で動かせるならば、それに越したことはない。


「ああ、問題ない。推進器の方をちょいと弄る必要はあるがな。今のままやれば推力不足に陥る」


 なるほど、全体に影響が及ぶような話だったか。それは確かに現場の改修なんて次元での変更が出来る話ではない。


「わかった。出来る事は全て試してみてくれ」


 こうして、すでにほぼ組み上がっていた2号機を推進器試験機へと変更し、3号機は大幅な変更を行う必要性から半月近く完成が遅れることになった。


 私も機体の設計をやり直すのでしばらく忙しい時間を過ごしていたが、暫く後、息抜きも兼ねて薔薇騎士団の訓練を覗いてみる。


「妾はもう十分乗りこなせておる!アレに乗せるのじゃ!」


 と、早くも軽飛行機から『隼』への転換を要求している姿を目撃し、サッと隠れた。訓練部隊の者に騎士団の話を聞いてみると、40人のうち操縦適性があるのは25人だったという。すでに残る15人は他の分野について模索しているらしい。だが、今後を考えて試験機の後部操作員としての可能性も考慮してみる様に助言し、その場を離れる。


 またある日、現在使用している雷撃砲以上の射撃機会を得るアイデアを思い付いたというドワーフに引っ張られて行った。


「単に二つ並べただけではないのか?これは・・・・・・」


 そこには雷撃砲が二つ置かれていた。これがどうしたというのだろうか。


「いや、二つじゃねぇ。よく見てくれ。魔導炉をひとつしか備えていないだろう?コイツは二門一組なんだよ。いや、これで一門だ」


 ちょっと何を言ってるのか分からない。


 そもそも雷撃砲という、前世知識に照らせば何を言っているのか分からない名称が付いているが、それは発射方式がレールガンのように発射機に雷の電撃を通すことで、金属の矢を放つ仕組みであることから、雷撃砲という安直な名前になっている。

 そして、この武器の欠点が、銃器というより弓のない連弩という事。

 何を言っているのか分からないと思うが、私も初めて説明を聞いた時には何のことか分からなかった。実際の動きを見て何とか理解が出来たほどだ。


 この連弩。矢を一本一本弾倉という名の矢筒からレールへと据え置く(番える)必要があるので、初速は速いが発射速度はそうでもない。前世でよく使う単位でいえば、毎分60発とか70発程度でしかないのだ。

 発射速度が毎分二桁発というのは自動艦砲クラスであり、航空機関砲としてみれば欠陥品としか言えない。

 確かに、弾倉容量は60発なので、あまり早すぎても困るが、初速で誤魔化しているだけなので発射速度が遅いことは問題だった。

 遅い理由は簡単だ。魔導炉の魔力を一気に雷撃変換してしまうと、雷撃砲自体が過大な電流の熱で熔けてしまう。その為、魔導炉の効率を故意に抑えて使用していたのだという。超小型魔導炉なのに、発生魔力量はこれで十分だとか、畜魔石で満足していた我々とは一体・・・・・・


 そうした経緯から、弾倉容量を一挙に倍に増やし、尚且つ発射速度も引き上げる事が出来、それでいて雷撃砲自体への負担が少ない方法という、無い物ねだりを実現したのが、目の前の物体らしい。


「なるほど、魔導炉ひとつで番え装置も連結一組とすることで動作も簡便化したと。交互に発射可能だから、事実上二倍の発射速度も達成できると?」


 物体の構造を見聞してそう問うてみると、自信たっぷりに頷き


「やろうと思えば3倍も可能だ」


 と、胸を張るドワーフ。

 なるほど、前世におけるガスト式の様なモノを開発したという事か。たしかに、コイツであれば、『大鷲』や現在試験中の機体に搭載するのは可能だろう。特に試験機の場合は時速560kmを記録しているのだから、実用化までに速度低下があっても、それを100km以内に抑えれば、飛竜に対抗できる。流石に100kmもの速度低下が起きるような事態にはならないと思う。たぶん、きっと・・・・・・


「わかった。ならば、試験機での採用を見込んで開発を続けて欲しい」


 今はあくまで見込みだが、この新型雷撃砲が実用化できるなら、今後に期待が持てる。


 それから半月、3号機は早々に設計変更以外の部分を完成させ、改設計の図面を早くしろとせっつかれ、本当にこの短期間で完成させてしまった。例の新型雷撃砲の搭載も考慮したので私も大変忙しかった。


 今回も初飛行を行うのは例のドワーフ達だ。


 すでに1号機である程度の特性を掴み、2号機で推進器試験を終えての飛行なので、何の不具合も無く飛んだ。

 そして、いきなり試験を始めるものだから、私は開いた口が塞がらなかった。ドワーフという奴は思いっきりが良いのか、自分たちのウデに絶対の自信があるのか、どっちなんだろうか?

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