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詠み直し

作者: R4

 人里遠く離れた山奥に、見目麗しい双子の姉妹が住んでいた。姉は気弱だが、体貌閑麗、口美辞多し。心優しく、艶やかな黒髪を腰まで垂らした長身痩躯な乙女で、妹は容色妙麗、皎として玉人の如し。さざれ水のような空色の髪と、翡翠色の瞳を持ちこの世の者とも思われぬ美形であった。

妹は生まれつき体が弱く、満足に歩くこともできなかった。そのせいだろうか、彼女は貪欲極まり、残酷で嫉妬深く、その荒々しい心であらゆる物を憎むことで、呪いを振り撒くことができた。一方で、姉には妹のような異質の才は無かったが、憐れみ深く、純粋で清らかだっため、天地に遍く全ての者と心を通わせることができた。

姉は毎日、甲斐甲斐しく妹の世話を焼いた。日中に外出できない妹の代わりに野へくり出し、山菜や茸などの野草を摘んだり、衣服を洗濯したりした。植物達は姉を好いていたため進んで身を差し出したが、妹のことは忌み嫌い、恐れていた。

「天女様、天女様。どうか私共の身体をお召し上がりください。天地の恵を一身に浴び、青々とした葉を茂らせた今が食べ頃でございます。ですがどうか、どうかあなたの妹君にはお与えにならないで下さいませ。石の詰まった瞳に、蒼天のようなあの髪。おおよそ、命ある者の姿ではございません」

 姉は、心優しく、妹を信じていたので、妹と心を通わせたことは無かった。妹の心に、底知れない悪意と悲しみが潜んでいることなど想像すらしなかった。

「あなた達は、妹を誤解しています。あの子は生まれつき体が悪くて、日差しにすら痛みを覚え、歩くだけでも肺が痛んでしまうのです。あんまり苦しそうに歩くものだから、あなた達には君悪く見えてしまうのでしょう。私は妹を信じていますし、妹もきっと、私を愛してくれているはずです」

 妹は、姉の出かけてる間、家の寝床の中で恨みと憎しみを募らせていた。弱く生まれた自分の身体を呪い、そんな自分を生んだ世界を呪っていた。

「何故、私はかくも弱く生まれてしまったのだろう。私も姉様のように、外を自由に歩きたい。太陽の光を体いっぱいに浴びたいし、川の流れに素肌を晒してみたい。何故、私は姉様ではないのだろう。健康で悩ましい曲線を描く、あの体が欲しい。闇よりも暗く、漆でも塗ったかのように艶やかなあの黒髪が欲しい。あらゆる生き物に好かれる、あの優しく清らかな心が欲しい。手に入らないのならせめて、姉様を私のものにして、ずっと傍にいて欲しい。首輪をかけて、永遠に手元に置いておきたい」

 妹の口から呪いが漏れる。

――かくとだに虚しき運命にある上は呪詛振り撒きて恨み晴らさむ――

 妹の撒き散らした憎悪にあてられ、一日に必ず数匹の若鳥が家の門口に落ち、のたうち回った後そのまま息絶えた。帰って来た姉に、妹はいつもこう説明した。

「あの鳥達は、心優しい私に感激して、否と言うのも聞かずに身を差し出してくれたのです。姉様、有難く頂きましょう。でなきゃ申し訳ないし、何よりもったい無いわ」

 姉が野草を摘み、妹が鳥を仕留めることで、姉妹の生活は回っていた。姉は野草を茹で、鶏肉を焼き、妹が食べやすいように粥を作った。その上、匙で中身を掬って食べさせてやったりもしたが、妹がしばしば嘘をついたため、口移しで食わせてやらねばならなかった。もっとも、妹の空言もあながち出鱈目ではなかった。彼女の身体は、年々弱っていくようだった。

「私の唾液と、呪いを受けた鳥が、姉様の身体に混ざる。混ざった肉は、姉様の髪に、瞳に、唇に、胸に、手に、尻に、足になっていく。姉様の中に、私の呪いが入る。私が混ざっていく。姉様の体は、私の物。姉様の心は、私の物」

――黒薔薇の褪せぬ色香に染み入りて茎も花弁も我が物とせむ――

 姉の身体に、僅かではあるが少しずつ、確実に妹の呪いが染み込んでいった。

 食後の時間は、夜の散歩に出かけるのが常だった。姉は妹の手を引き、時には負ぶって、野原や川や、丘へと足を運んだ。星の光すら直視できない妹は、川面に映った月を楽しみ、姉の膝を枕にして叢に寝転び、丘の上から、遠くの峰々を望んだ。満足に出歩けない己の定めを妹は憎み、その憎しみは呪いとなって周りの草花の命を奪った。

「可愛い妹、何故草花は、あなたの姿を見て枯れてしまうのでしょう。とても可哀想です」

 朽ちた草花を掻き抱き、悲しみにくれる姉の姿は、夜の暗闇の中でも一際黒く目立っていた。黒瑪瑙のようね、と妹は見惚れた。

「きっと、私の心優しさと美貌にあてられて、己の存在に絶望してしまうのだわ。時折、私は本当に憎らしく思ってしまいます。人を夢中にして、執着させる、絶対的で、残酷な優しさや美しさといったものが」

 寝床に入ると、妹は毎晩咳き込み、姉を心配させた。

「姉様、お願い、私を殺して頂戴。こんな弱い体で、おまけにこんなに醜い心で、生きていたって仕方無いわ。私は本当は、恐ろしい人間なのよ。空を飛んでいた若鳥も、野原の草花も、本当は私が呪いを撒いて殺していたの。私は、罪。存在を許されざる者。せめて姉様の手で葬って頂戴」

 妹が死を願う度に、姉は妹以上に傷つき、彼女を抱き締めて慰めた。

「可愛い妹、後生だから、そんなことを言わないで下さい。貴女が居なくなってしまっては、私はどうして生きていけるかわかりません。貴女は私の、たった一人の肉親で、とても優しくて純粋な子です。だから、どうかそんな子を言わないで。ずっと二人で、生きていきましょう」

 姉は泣きながら、儚く散っていくように思える妹を失わないようにと、しがみつくように抱き締めて眠った。妹が語ったことは真実であったが、彼女は自分の言葉を姉が鵜呑みにするとは考えていなかった。ただ、美しく優しい姉が、他の誰でもない自分の為だけに悲しみ、枕を濡らしている。そう思える深夜の一時だけが、妹に生きている実感を与えるのだった。邪悪な笑みが、妹の頬に広がっていた。


 ある日、姉妹の住まいの近くを立ち寄った旅人を、姉が助けた。旅人を襲っていた獣を、心を通わせて説得したのである。山を下りた旅人は、早速この出来事を吹聴して回った。噂は噂を呼び、いつしか幾枚もの尾ひれを付けて国中を泳ぎ回った。曰く、人里離れた山奥に、三丈を超える獣をすら従える閨秀、黒羽の君がいらっしゃると。

 国中の人間が姉の姿を胸に浮かべ、一目見ようと姉妹の家を訪れた。心優しい姉は、それらの人々に丁寧に接したので、そのことがまた彼女の名声を高めた。国中の力自慢が腕試しを申し込み、姉はその戦いの全てに打ち勝った。長身で、身体の柔らかい姉には才があった。痩躯を捻り、射干玉の黒髪を躍らせ、流水のように斬りつける姉の姿はある種の艶めかしさを以て世界から独立し、白紙に垂れた一滴の墨汁のように人々の目を引きつけ、魅了した。中でも、姉の剣技を最も近くで見ていた妹は、羨ましさや誇らしさ、恨めしさや憎しみと併せて、もう幾度目かもわからない、否定しようのない愛しさを覚えた。家を訪れる人が多くなるにつれて、妹は以前にも増して家の中に籠もるようになった。

 姉の名声は世に轟き、遂に国から勅令が届いた。武人として召し抱えたい、とのことであった。使いの武士は、目を輝かせて言った。

「本当に羨ましいことだ、烏羽の剣士殿。あなたほどの美貌と技量ならば、幾日もかからぬ内に将に見初められ、嫁として屋敷に招かれることだろう。もっとも、我等のような武人は、想い人の愛玩物に成り下がるよりはむしろ、隣で剣を振るうことを選ぶがね」

 姉は、使いの言っていることが理解できなかった。

「将とは、何でしょうか。武人とは、何でしょうか。屋敷へ招かれると、何がどうなるのでしょうか」

「これは驚いた。なるほど、剣士殿はこのような辺境の生まれだから無理もない。よろしい、暫し待たれよ」

 そう言うと、武士は腕組みをして目をつむり、塾考の後語り出した。

「武士とは、我等のような刀を振るう者共の集まりで、日夜異国の者と鎬を削り、名誉を得んと戦いに身を投じている。将とは我等武士の長のことで、この国の実質的な最高権力者でもある。剣士殿のように、髪を腰まで垂らしているが、貴殿とは違って金色に光る絹のような髪だ。将は剣士殿の噂を聞いて、待ちわびた運命の相手やも知れぬと期待しておる。武人として腕を競い、命賭けで汗を流した後の食事は何にも増して美味であるし、その後の契りもまた格別であろう、想い人と共に戦った後でならば尚更だ。将の悩ましい躯体に抱き締めて貰えると想像するだけで、私などは昂りが抑えられない。ああ、本当に、剣士殿が羨ましい」

 姉は、申し込まれた勝負の後に食べた食事が格別に美味であり、またその後の睡眠も格別に心地よいものであったことを思い出した。毎日あのような思いができるのであれば、武士になるというのも確かに悪くはないかもしれない。将とは、どのような人物なのだろうか。金とは、何であろうか。私と似た髪をしているというが、顔形も似ているのだろうか。抱かれて眠るのはどのような心地なのだろうか。そういえば、私は毎晩可愛い妹を抱き締めて眠っているけれども、そういえば抱かれる側になったことは一度もなかった。姉の心に、様々な想念が浮かんだ。

「将の嫁として、屋敷で暮らすのも悪くはないだろう。優秀な侍女に囲まれて、何不自由ない生活を送ることができるし、将御自らが剣士殿を守り、愛でてくれるはずだ。剣士殿の美貌を手腕確かな絵師が絵画に残し、学識豊かな詩人が歌に詠むことで、剣士殿の名と姿は千年先の人々にも伝わることであろうな。まあ、私はあくまでも武人としての道を進むことを勧めるがね。誰とも知れぬ者共の賞賛よりも、血沸く闘争と、甘美な快楽を求めていこうではないか」

 侍女、屋敷、絵師、詩人。知らない言葉が次々と姉の想像と好奇心を掻き立てる。私が絵師に、描かれる。詩人に、詠われる。将に、守られる。何不自由ない生活……。

 不意に、妹の顔が脳裏に浮かび、姉の空想は霧消する。そうだ、私が屋敷へ行ってしまったら、妹はどうなるのだろう。誰が、毎日彼女の為に野草を摘みに行くのだろう。誰が、若鳥の粥を作ってやるというのだろう。誰が、彼女を負ぶって、夜の散歩の連れていくのだろう。衣服を洗濯するのは。膝枕してやるのは。泣いているあの子を抱き締めて寝かしつけてあげられるのは。

「謹んで辞退させていただきます、と、将に伝えて下さい。私は、妹と生きていかなければなりませんし、また共に生きていきたいと思っています。あの子を一人、置いていくわけにはいきません」

 使いの武士は、四六時中家に閉じこもり、陰気な気配を漂わせている妹を好いてはいなかった。一瞬を争う戦場で培われた経験が、武士に警鐘を鳴らしていた。この女は危険である、と。そして、全てを手に入れられる才を持ちながら、その才を妹の為に費やしている目の前の剣士を不憫に思った。

「剣士殿、心配には及ばん。妹君は、我等の僕が責任を持って日々の世話を焼こう。衣、食、住、その他諸々の雑事も一切心配することはない。我等としては、剣士殿には何の気兼ねも無く、ただ刀を振るって貰えればそれで良いと考えている」

 武士の言葉に姉の決心は揺らいだ。すかさず、武士は畳みかけた。

「剣士殿、貴殿の妹君への献身と愛情、察するに余りある。なれど、人生は有限なれば、能う限りの風物を見、聞き、知り、味わい、楽しむことこそが肝要であろう。決断なされよ、剣士殿」

 呻吟、懊悩の後、果たして姉は首を縦に振った。妹は絶望し、武士を憎み、世界を憎んだ。あの女に、将とやらに、姉が取られてしまう。

 姉の出発の日まで、妹はどうにか決断を曲げて貰おうと、姉の気を引くためにあらゆる手を尽くした。夜は普段にも増して泣き喚き、強く咳き込み、食事を拒んだが、それでも姉の決心は揺らがなかった。姉の心はずっと、まだ見ぬ人生に、まだ知らぬ新しい人生に向いていた。

 出発の朝が来た。東天正に白し、悲しいほどに絶好の旅立ち日和だった。日が出ているのにも関わらず、妹は姉を見送りに外へ出た。日の光が、妹の肌に突き刺さる。妹の顔が苦痛に歪み、視界が眩暈で揺らぎ、足元が頼りなげに震える。姉妹は、手を繋いで一緒に歩いて、山を降りた。妹は、もう、なりふり構っていられなかった。姉の居ない生活、そんなものを自分が到底受け入れられないと理解していた。あんなに毎晩、一緒に生きると約束してくれたのに、あまりにも酷い裏切り。それでも、姉を呪うことはできなかった。憎む心より、愛する心のほうが遥かに強かった。

 山の麓で、妹は最後の望みをかけた。

「姉様……一生のお願い。行かないで。体の弱い私を置いて、どこへ行ってしまうの。私、姉様のお粥がまだ食べたい。一緒に散歩もしたいし、毎晩、寝かしつけて欲しいわ。私、いい子にしますから。これからは、悪巧みなんてしないし、呪いも振り撒いたりしません。だからお願いします、行かないでください。姉様が居なきゃ駄目なの」

 妹の、人生で初めての、心の底からの懇願だった。生まれて初めて、彼女は人に頭を下げた。

 姉は言った。

「ああ、私の可愛い妹。誤解しないで下さい。これが今生の別れというわけではないのですから。いい子だから、ほんの少しの間だけ、我慢して下さい。私は、外の世界が見てみたいのです。武士、屋敷、絵師、詩人、そして、将。それが何なのか、私には皆目見当がつきません。ですがどうしても、それらの言葉に惹かれて仕方が無いのです。ですからどうか、ほんの少しの間だけ、待っていて下さい。愛しています、私の可愛い妹」

 愛しています、その言葉を聞いた瞬間の妹の胸に計り知れない量の憎しみと悲しみが湧き上がった。妹は、姉に聞こえないように独り言ちた。

「私が必死に喉奥に抑え込み、言わないようにしていた言葉を、貴女はあっさりと言ってしまうのですね。貴女にとって、私に向ける愛などは、所詮はこの位のものだったのですね。おまけに貴女は、私を置いて冒険に出かけてしまう。全部、嘘だったのですね。貴女は私を、愛してなどいなかったのだ」

 妹は俯き頷いた。姉は妹を抱き締め、頭を優しく撫で、背を向けて歩きだした。

――現世に降り発つ君を待つ我は心余りてなお胸に秘む――

 妹の身体から呪いが弾け、辺りに撒き散らされた。妹はその呪いを傍らの木に差し向けた。木は根元から青く蝕まれ、妹へ向けて傾いた。

「助けて、姉様」

 姉が振り返った時、既に大木は倒れ、妹は大木の下敷きになっていた。空色の髪は砂埃に塗れ、白磁のような肌も泥水のように濁っていた。妹は気を失った。消えない憎しみを抱えながら。


 夢の中、四方八方底の無い暗闇の中で妹は目覚めた。苦しくも、寂しくもなかった。その暗闇を、姉のようだと感じていたから。

「こんな風に、いつまでも姉様の髪の中に包まれていられたらどれ程良いだろう。私に、そんな未来は訪れない。私の生に、思い通りになる事なんて一つもない」

 妹がそう思うと同時に闇は剥がれ、彼女はどことも知れない洞穴に取り残された。氷の張った壁に、霜の這っている床。外では雪が吹き荒れ、出歩くことなど考えることすらできない。

 傍らに、黒薔薇が一輪萎れていた。妹は、この花は姉だと思ったので、必死になって育てることにした。花に覆い被さって吹雪から守り、自らの衣服を燃やして暖を取り、血を垂らして水の代わりにした。

――愛がため血肉も心も捧げたり繁く生ひたれ烏羽の君――

 妹の献身が実り、花は透き通った氷に深く根を下ろし、茎は伸びて妹に巻き付いた。茎の棘が肌に食い込み、流れた血が花をより一層成長させた。妹は体に苦痛を感じていたが、それ以上に強い恍惚を感じた。姉の為に苦しんでいるのだと思えば、痛みなど何の障害にもならなかった。

 意識が朦朧とし始めた頃、妹の顔の前で、花は潤いに満ちた、何よりも黒い花を咲かせた。妹の血を吸って育ったので、茎は真っ赤に染まっていた。

 妹は花を近づけ、花の香を嗅いだ。密の匂いと共に、懐かしい姉の香が鼻孔をくすぐった。太陽と、草花と、汗の匂い。妹は花を掻き抱いて言った。

「姉様は、私のものです」

 直後、黒薔薇は凍り付き、音を立てて千の氷片に割れた。妹は悲しむこともできず、掬い取った氷の粒を茫然と眺めていた。外で、吹雪が吹き荒れていた。


 妹は目を覚ました。何かとても幸せな夢を見ていたような気がするし、恐ろしい悪夢を見ていたような気もする。体を起こそうとして、何かが自分を強く締め付けていることに気が付いた。姉の手が、これまでにない程に力強く自分を抱き締めていた。目蓋は赤く腫れ、大量の涙の跡であろう筋が二つ、頬に走っていた。妹は思った。

「これはどういうことなのだろう。姉様は私を置いて、旅に出てしまったはず。私の懇願を無視して、心無い言葉を残して、おざなりの愛を囁いて去って行ってしまったはず。それとも、あれもまた夢だったのかしら。旅も、姉様の嘘も全部夢で、私はいつも通り寝床で愚図っていただけなのかしら。ともかくも、眠ったままの姉様の為に、濡らした布巾を取ってこなくては」

 床に手を突き、立ち上がろうとして、妹は体に違和感を覚えた。普段の調子の悪さともまた違った、根本的な瑕疵を体に感じた。

 妹は自らの身体を見下ろした。両脚の膝から下が、すっかり斬り落とされていた。どちらの足も同じ箇所で断たれており、その美しい太刀筋は誰の仕事か見紛うはずもなかった。妹は今や、不満足にすら、歩くことができない。

 妹は言葉無く無表情に、虚空に消えた足元に思いを馳せた。妹は思った。別に構わない、と。元からあってないような物だったのだから。ただ、姉様に布巾を渡せないのは残念だ。そんなことを考えていた妹を、起き上がった姉が後ろから強く抱き締めた。

「可愛い妹、命があって本当に良かった。あの大木が貴女に倒れてから、貴女は実に三日三晩眠っていたのです。その上、そのような体になってしまうなんて。可愛い妹、愚かな姉を許してください。たった一人の家族を置いて、蔑ろにしようとした罰が下ったのです。貴女の側以外に、私の在るべき場所があるでしょうか。こんなことになってしまった以上、私は一生、貴女と共に在ると誓います。ずっと、二人でいましょう、私の可愛い妹」

「姉様、私、とっても嬉しいわ。こんなことになったのに、喜んでしまっている私を許して頂戴ね。姉様とずっと一緒に居られると思ったら、私、怪我をして良かった、なんて考えてしまっているの」

 妹の頬に、醜悪な笑みが広がった。妹は思った。もうこの際、嘘でも、罪深くても構わない。姉と一緒に居られるならば、私は悪鬼羅刹にも堕ちよう。私はきっと地獄に落ちるだろう。それでもきっと、姉様なら付き添って下さるはずだ。

――恋心永久に秘めても愛き姉を我は導かん黄泉の果てまで――


 姉は使いの武士の元へ赴き事の次第を話したが、武士は納得しなかった。邪悪な妹が、奸計を働いたのだと考えたからである。なんとしてでも姉を連れて行こうとする態度に困り果てた姉は、不本意ながらも逃げ出すことを決意した。妹を椅子に座らせ、四の足それぞれに車輪を括りつけ、押して進めるような道具を作り出した。春月天に在り、天色朦朧。雲開いて夜朗らかなり。この世に生を受けてから、ずっと二人で過ごしてきた慎ましやかな木屋を、姉は踏み出し念願だった冒険の旅に出た。生憎、自由は付いてはこなかった。

 姉妹はあてどもなく、気の向くままに世界を見て回った。時節の移り替わりは、いつも天が伝えてくれた。

 春。江山の花々、暖風と共に来たれり。陽光一切の憂いを除し、春一番盃に入る。新たな生の芽吹きを祝って、姉妹は屠蘇を回して飲んだ。日は柔らかく、妹にも優しかった。梅百花頭上に開き、春にして白銀世界にあるが如し。

「梅が笑っていますね、まさにこの世の春とばかりに命を燃やしています。可愛い妹、貴女にも聞こえますか。彼女達の今を楽しまんとする、騒がしくも物悲しい歌声が」

「ええ、姉様。もちろん聞こえるわ。だけれど私、花と言えば桜が好きなの。古の歌にも、桜花咲きかも散ると、って言うでしょう」

 空知らぬ雪の季節。桜花咲き乱れ、近くして燦爛、遠くして朦朧。数里の間白雲に覆われ、恍として路無きが如し。花弁の舞散る道を、二人は雲海でも渡っているかのように歩んでいった。

「私は梅が好きです。紅も白も、私には縁の遠い花ですから」

 梅、桃、桜。花見を楽しみながらの旅路は、突如として降った雨に、文字通り水を差しかけられた。霧のようなか細い雨であったけれども、嫋やかな花々を散らしてしまうには充分だった。春雨意を専らにして、白色洗い流す。月に叢雲、花に風。姉妹は桜の木の木陰に入り、散って行く花々を寂しく見つめていた。

 すると、雨の向こうから、錆塗れの刀を携え、申し訳程度に布切れを纏った男達が表れ、姉妹を連れ去ろうと襲いかかってきた。姉は心を通わせ、説得を試みたが、財を貪り、飽くことを知らない男達に通じるはずもなかった。姉は思った。私一人ならどうなっても構わない。しかし、このか弱い妹だけは何としても守らねば。姉は刀を抜いた。その裏で、妹が口ずさんだ。

――麗しの黒き瑪瑙に付く錆をこそぎ落とさん二度とは来でね――

 数瞬とかからずに足元の花々は濁った赤に染まり、血生臭い匂いが辺りに立ちこめていた。戦場となった木陰の中心で、姉は自らの罪を噛み締めた。

「理由はどうあれ、人を殺めてしまった。私は地獄へ落ちるでしょう。それでも、可愛い妹が無事で本当に良かった。妹が幸せに日々を過ごせるのであれば、私は喜んで刀を振るい、血に狂いましょう」

 姉は無言で妹の椅子を引き、花散る山道を立ち去った。春雨が、火照った肌に冷たかった。

 夏。新緑茂る、多くの命が最も輝く時。春に芽吹いた木々の葉が青々と垂れ、野山はまさに万緑と化した。蜂が蜜を探して飛び回り、蝉も番を得んと命の限り騒いでいる。炎帝無情にして、微風も送らず。肌を焼くような酷暑に、妹は息を荒げ、目をつむって椅子にぐったりと背もたれた。

「姉様、今です」

「はい、可愛い妹」

姉妹は日向を避け、木々の影から影へ素早く移動することで、なんとか先へと進んで行った。二人は知らず知らずの内に、影鬼で遊んでいるような心持になり、いつしかこの移動を楽しんでいた。

 梅雨に入った。肌寒い風が袖を揺らし、にわか雨が積暑を洗い去る。日におびえる心配の無くなった姉妹は、二人を包み込む巨大な傘を差して黙々と歩を進めた。空は雲に覆われ、視界は暗く、沈黙と倦怠が世界に圧し掛かっていた。妹は思った。月に叢雲、花に風。姉に、私。

 にわかに涼風が吹き荒れ、雨が姉妹を横殴りに濡らした。道端の河川から蛟が表れ、妻になる気はないかと姉に迫った。姉は妹の身体を思い、水底ならば楽に生きられるだろうと承諾しようとしたが、妹が許さなかったため丁重に断った。蛟は怒り、姉を攫おうとしたが、双子の顔を見て思いとどまった。

「天つ乙女が、何故斯様な場所に居られる」

 蛟の隙を見逃さず、妹は唱えた。

――故有りて今は故無き二人なり我妹なれど姉妹にせむ――

 妹の呪いにより、姉は妹に縛られた。姉は蛟を一振りの元に斬り伏せ、生臭い血が再び体に染み渡った。罪と、血と、呪いが姉に積もる。肌寒い憂鬱が姉妹に降り注いだ。藍色の紫陽花が、毒々しい花弁を曇天に晒していた。

 秋。空高く、風月甚だ美し。天色朦朧、雲開いて朗らかなり。十五夜の名月に、楓銀杏の衣替え。姉妹は水面に映った月を眺め、流れる紅葉を見て、唐紅に月くくるとは、などと口ずさんで遊んだ。柿に茸、筍などに舌鼓を打ち、程よい涼しさを楽しんだ。美しく、豊かで恵まれた季節だった。

 使いの武士が姉妹を追って二人の前に立ちはだかった。

「烏羽の剣士殿、目を覚まされよ。其方が家を発ちてから幾日も経ってないと言うに、その姿、立ち居振る舞い、纏う気配、まるで飢餓に狂う獣のそれだ。見よ、其方の妹君を。その心に巣食う卑心と邪念を。人に尽くすことが常に最善とは限らぬ。今一度、今一度考え直されよ、愛しいわが君」

「お侍様、あなたが何を仰られようと、私が変わることはありません。これ以上、妹を悪く言わないで下さい。あなたを斬りたくはありません」

 話は終わった。武士と姉は無言で見つめ合い、時を待った。秋風が両者の間を通り抜け、紅葉が互いの足元に散っていた。

 妹は椅子に身を屈め、呪いを呟こうとした。その時、姉の口から言葉が漏れた。およそ優しい姉の声とは思えぬ、氷柱のように冷たく、刺すような声で、妹が一瞬、自分の声かと聞き間違えたほどだった。

――見つめ合い心通わせその後に斬り合う運命にある我等とは――

 姉の口から呪いが漏れた。妹によって齎された呪いは、いつかの呪言の通り姉の中で巣食い、根を張り、侵食していた。武士が狼狽えた隙に姉は斬りつけ、敵の片腕を切り落とした。武士は命からがら逃げ出したが、散らばった紅葉は噴き出した鮮血で更に赤く染まっていた。

 親切にしてくれた武士を斬ってしまった罪悪感に耐えられず、姉は心を閉ざした。秋が終わるにつれ、染まった葉の紅色はくすみ、濁っていった。枯葉のような焦げ茶色に近づいていく紅葉の色は、どす黒い血潮を連想させ、更に姉の心を痛めつけた。姉の口数は、目に見えて減っていった。銀杏の黄、楓の紅、椿の花弁。世界を色とりどりに彩った草花は散り、全て同じ土色に穢れ、その内どこへともなく消えてしまった。

 冬。雪が降り、妹は調子を崩した。姉妹は山の洞窟に籠もり、苦寒をやり過ごした。姉はふさぎ込み一言も発さず、妹は寝て起きてを繰り返した。起きている間は、姉を心配し、ずっと寄り添っていた。外で吹雪が荒れ狂っていた。

 春。江山の花々、暖風と共に来たれり。陽光一切の憂いを除し、春一番盃に入る。程よい陽気と繁栄の予感に、妹は息を吹き返し、姉は表情と言葉を取り戻した。妹は思った。

「良かった、いつもの姉様が戻ってきて下さった」

 このようにして、多くの時を姉妹は共に旅をして過ごした。東西南北、一天四海を巡り、この世とも思えぬような場所を訪れ、見て、聞いて、学び、心を躍らせた。欲に憑かれた獣や、盗賊等の理を解さぬ者共が姉妹を襲ったが、その度に姉は死に物狂いで戦った。向かってくる者を斬り、叩き、掴み、抉り、殴り、組み伏し、噛み切り、屠った。全ては、可愛い妹を守るために。射干玉の髪には濁った赤が混じり、乱れを知らなかった毛並は固まり、かつての艶やかな姿など見る影もない。

 妹は、機会あるごとに呪いを振り撒き共に戦ったが、旅をしていくにつれてその必要は無くなった。姉は戦いに酔い、剣に狂い、血に踊った。敵を切り伏せる時の姉の表情はすさまじく、命を奪うことに何の感慨も抱いていないようだった。旅の中で、再び姉は心を閉ざした。何も考えないでいることは楽だった。

「私はただ、可愛い妹に尽くしていれば良いのです。それが、私にできる唯一の償い。分不相応な夢を抱いた、私への罰。何も求めることなく、ただ可愛い妹の望みを聞いてやりましょう」

 妹はいつしか、姉を恐れるようになった。何の感情も窺えない、彼女の鏡のような視線に晒されると知れず背筋が凍った。

「もし、あの事故が私の仕業だということを姉様に知られたら、私はどうなってしまうのだろう。その時、姉様は優しい姉様のままで居てくれるだろうか。一太刀に、首を落とされてしまわないだろうか」

 そこまで考えて、妹は思い直した。いや、姉様が私をお疑いになられるはずがない。それに、たとえ知られたとしても、愛しの姉様に殺されるのならば、それこそ本望ではないか。天が裁きを下したとしても私は姉様の物だし、姉様は私の物だ。

 妹は自らの手で震える肩を抱き締め、笑みを浮かべた。この旅がいつまでも続けば良い、と思った。


 数百年もの旅の果て、姉妹は他の誰も到達し得ない、雲を貫く高峰を昇っていた。季節は冬。辺りには吹雪が吹き荒れ、膝元まで雪で埋まっている。一年に一度、必ず巡ってくるこの季節を、双子はいつしか山奥の秘境でやり過ごすようになっていた。椅子を曳いて進むことはできなかったので、妹は姉の逞しい背中に負ぶられながら山を登っていった。二人とも、一言も話さなかった。姉は最早、春夏を問わず自分から言葉を発することはなかった。妹のほうも、自分が姉に愛されていることは疑わなかったが、それでも彼女の纏う雰囲気は凄まじく、たまに視線を交わす度に緊張し、声が震えた。

 峻峰の頂上近くの洞穴に、妹は身を横たえた。床には霜がはり、内から見る外の吹雪は一層肌寒く思えた。姉はだらしなく壁に寄りかかり、そのまま地面へとずり落ちて座り込んだ。妹は「ありがとう、お姉様」と姉を労った。姉は言葉こそ発さなかったものの、慈愛に満ちた微笑みを返した。

 その年の冬は暖かかった。雪にも吹雪にも例年の勢いは無く、姉妹の心も落ち込まないでいられた。二人は数年ぶりに、和やかな会話を楽しんだ。話題は、これまでの旅路のこと。薬草狩りを楽しみ、花畑に目を細め、都人に求婚され、絵画や詩人の意味を知り、賢人と出会い、異質の者に取り憑かれ、神と人の婚姻式に立ち会い、意を決して水泳に挑戦し、辺境の珍味を楽しみ、悪政を成す王から逃れ。その気になってみれば、話題はいくらでもあった。妹は思った。もう、話すべきことは話しつくした、などと思い、会話を避けていた先程までの自分が信じられない。やはり、自分は姉様が好きなのだ。妹の矢継ぎ早に繰り出される話を姉は笑顔で見つめ、時には相槌を返し、しゃがれた声で返事すらした。姉の声を聴くなど、実に数十年ぶりのことだった。妹は遂に、姉に求婚することを決心した。

「姉様、昔、西の果てで漁師と水神の婚姻式に出たことがあったわね。人魚達の吐く泡が虹色に照って、浜の男女は一人残らず素敵な歌を詠んで、私達も浮かれ切って、我を忘れて、恥を捨てて。今思うと顔から火が出そうだけれど、とても素敵な思い出よ。その時、あの二人がとても羨ましいなって思ったの。命尽きても、いいえ、命尽きた後もずっと一緒に居るなんて。姉様、お願いがあるの。私、姉様に、私の妻になって欲しい。私と結婚して頂戴。病める時も健やかなる時も、ずっと一緒に居ましょう」

 姉は優しく微笑み、頷いた。妹は天にも昇る心地で姉の元まで這っていき、かくして双子は契りを結んだ。姉の唇は柔らかく、唾液は蜜の味がした。気の遠くなるような年月を経て、姉妹は結ばれた。旅が始まってから、長い時が過ぎ去っていた。その事が、妹に油断を齎した。

「姉様は、私のものです」

 妹の頬が、ほんの少し、微かに醜く歪んだ。それだけで、姉には充分だった。

 姉は妹の背に手を回し、無理矢理に視線を合わせ、心を通わせた。彼女の素質を、妹はすっかり忘れていた。心通わせるまでもなく、危うきは切り捨てるのが、今の姉の信条だった。

 姉は知った。妹が世界の全てを憎んでいたことを。草花を、若鳥を、そして他ならぬ、自分の姉を。姉は思った。あの日、新たな世界を夢見ていた私。お侍様の勧誘に首肯して、この身一つで飛び込んで、成功も失敗も、闘争も快楽も、全てを味わってみようと期待をふくらませていた私。あの美しい、亜麻色の髪をした武士と背中を合わせて戦っていたはずの私。将に見初められ、嫁として屋敷に招かれていたはずの私。見るも聞くも、生きるも死ぬも自由だったはずの私の人生。ほんの少し手を伸ばしていれば手に入っていた、目の前に転がっていた私の人生を、この女は奪い取った。卑劣な嘘と底知れない憎悪を源にして。

 これまでの人生に、何の後悔も無かった。妹を愛していたし、守ってやらねばと心から思っていた。人々に恐れられ、化物と避けられるようになっても、可愛い妹一人が慕ってくれさえすれば。これまでは。

「騙していたのだな、我が妹。血に塗れ、人の道を外れた私を見て、影でほくそ笑んでいたのだろう、我が妹」

 姉は黒髪逆立て、爪をむき出しにして妹を押し倒し、頬を張り、腹に噛みつき、空色の髪を引っ張った。妹は必死に抵抗したが、幾億と刀を振るってきた姉に敵うはずもなかった。呪いを振り撒こうにも、憎んでいない相手を呪うことはできなかった。何百年も連れ添って、助けてくれた姉を、心の底から嫌いになることはできなかった。

「姉様、ごめんなさい。許して下さい。お願い、許して、許して……」

 妹は蹲ったまま、姉の折檻を受け続けた。服は破れ、体中に痣が浮かび、血が霜の張った地面を赤黒く染める。過去の罪が見える形となって身体を苛む。妹はひたすらに悲しい気持ちになり、己の運命を呪った。洞穴に瘴気が充満し、不快な臭気が辺りに漂った。

――幸いを追えど甲斐なく願わくば君の刀の錆となりたし――

「姉様が悪いのです。私の前で優雅に歩く姉様が、細やかな身体を躍らせて、美しく剣を振るう姉様が悪いのです。私、どれ程姉様になりたがったかわからないわ。花に好かれて、動物に懐かれて、武士に愛されて、その上将の妻になるかも、なんて、どれだけ姉様は私を虐めれば気が済むの。姉様は幸福になればなる程私、自分が惨めで死にたくなってしまうわ。姉様お願い、幸せにならないで。ずっと私と一緒に、不幸で居て頂戴。それが無理なら、どうか私を殺してください。さあ。殺して。殺しなさい。いつか、こんな日が来ると思っていました。愛しい姉様が殺して下さるのなら、私、とっても嬉しいわ。大好き。大好きよ、お姉様」

 そう言って、打擲を受け続けた妹は、泣き疲れ気を失った。赤く腫れた頬に、一筋の涙が伝った。妹の言葉が、鋭利な刃物となって、姉の心を切り刻む。呪いが洞窟に満ち、姉の身体を外となく内となく浸食していく。纏わりつく悲嘆と絶望の中で、姉もまた自身の不明に絶望した。

「私は、何と不出来な姉だったのだろう。妹の抱える傷を知らず、知ろうともせず、この子のことを、ただただ純粋無垢で、不幸で健気な子だとばかり思っていたなんて。私は可愛い妹に何もしてやれなかったばかりか、手ひどく傷つけてしまった。私が生きている限り、可愛い妹に幸せな未来は無い」

 姉は覚悟を決めた。正座をして、瞳を閉じ、刀を抜いた。これまで命を奪ってきた者共を思った。武士を思い、妖を思い、花を思い、鳥を思い、廻る季節を思い、空を思い、最後に妹を思った。限りない後悔と、底なしの愛情と共に、刀を喉に突き立てた。

――愛故に足と臓腑を贈ります幸せになって可愛い妹――


 夢の中、妹は山奥の、懐かしい家へと向かっていた。片手に仕留めた若鳥を下げ、背負った籠には山菜がたっぷりと入っている。山道の向こうに、懐かしい、明かりの灯った家が視界に入ると、妹は待ちきれずに家路を走って辿った。

 家に入ると、暖かく、優しい香りが身体を包む。囲炉裏の傍で、艶やかな黒髪を垂らし、烏染の着物を付けた女性が鍋の中をかき回している。柔らかい光の中で、その姿はまるで、夜が少しだけ抜け出してきたかのようだった。女性が振り返った。ささやかな微笑みが浮かび、胸が自然と高鳴る。

「お帰りなさい、あなた」

「ただ今戻りました、姉様」

 姉妹は、夫婦となって元居た家で静かに暮らしていた。妹の採って来た鶏肉と山菜を、姉が炊いていた粥に入れる。香しい匂いが鍋から漏れ、妹の空腹は頂点に達する。

 姉妹は囲炉裏を挟んで、向かい合って粥を食べた。毎日食べているはずなのに、何故か永らく食べていなかったような心地がして、妹は知らず涙を流していた。そんな妹を、姉は不安げに見つめていた。

 食後、二人は同じ布団にくるまり、次の朝を待った。姉の痩せた長い身体が、小柄な妹を巻き込むようにして包み込む。姉は慈愛に満ちた表情で妹の髪をなで、額に口を付け、長い髪を垂らして妹の視界を覆う。妹を目を閉じて、心地よい感触に身を委ねた。

「私は今、姉様の中に居る。姉様に想われている。大事にされている。何より、愛されている。やっと辿り着いた、永遠の安息。このまま心地良い闇の中で、いつまでも揺蕩っていたい。私の意識が溶け出して、姉様と混ざってしまえば良いのに。そうすれば私達、ずっと一緒に居られる。私は愛し合っている。こんなにも愛し合っているのに、それでも一つになることは決してできない。私はそれが、とても哀しい。もっと近くに、もっと一つに、もっと、もっと」


 妹は目を覚ました。何かとても、良い夢を見ていたような気がしたが、どうにも思い出せない。不気味なくらいに爽やかな目覚めで、洞穴の中も、吹雪が吹き荒れていた外も、意味ありげな沈黙を保っていた。

 妹は覚めやらぬ頭と、未だ怠い身体に鞭打ってなんとか立ち上がり洞穴の外を目指した。足元が定まらないので、壁に手をついてなんとか前に進んで行った。妹は思った。体の調子が著しく悪い。どうやら寝すぎてしまったらしい。さあ、今日も頑張って働こう。愛する妻の為に、山菜を採り、獣を仕留めよう。そしてまた、幸せな夜を迎えるのだ。

 洞穴の外に出た。吹雪は止み、晴れやかな日差しが積もった雪に反射して、足元からも世界を照らしていた。空の水色とのコントラストが美しい。

 爽やかなそよ風に眠気を吹き飛ばされ、妹は自身に起こった異変に気付いた。深呼吸をして、冷気をいっぱいに吸い込んでも、肺が発作を起こさない。これだけの日差しを浴びているのに、肌が痛まない。そして何より、と妹は足元を見た。白磁のような、長くて細い足が股の付け根から伸びている。潰れた足が元通りになっていた。

 妹は歓喜に身を躍らせて雪山を駆け下りた。小石を蹴飛ばし、自分の足が動くことを何度も確かめた。野山の新選や空気を胸いっぱいに吸い込み、小鳥の囀りを真似て遊んだ。兎を追いかけ、川で泳ぎ、草原に寝転び日差しを貪った。もう我慢することはないのだと、心からの笑顔を浮かべた。

 あっという間に一日が過ぎた。夕日が山に沈み、影が白銀の山裾を侵し始める時になってようやく、妹は姉のことを思い出した。そして改めて、自分の置かれた奇妙な状況を考えた。

「姉様はまだ、あの洞窟の中に居るのだろうか。まだ、私に怒っているのだろうか。どうして、私は助かったのだろうか。泣きわめいて、気を失ってしまった後でなら、幾らでも私を殺せたはず。私の足は、肺は、肌はどうして治ったのだろうか」

 妹は山裾に座り込みあれこれと頭を悩ませたが、結局一人で山を降りることにした。姉と喧嘩したのは生涯で初めてのことで、再び会うことが恐ろしかったし、会ってどうすば良いのか知らなかった。何より、自由になった身体で、世界を回ってみたいという思いのほうがずっと強かった。旅の中途で、体験したくても身体が許さず、泣く泣く断念した物事がいくらでもあった。

「私がまだ生きているということは、姉様はきっと私を許して下さったのだろう。あんなに怒ってしまった後なのだから、姉様も今すぐに会いたいとはきっと思ってないはずだわ。今の私なら、もしかしたら姉様と対等に、支え合えるような関係になれるかもしれない。長い手足や奥ゆかしい微笑、夜空をしずしずと行く後姿を見ても、嫉妬の念に駆られずにいられるかもしれない。でも、謝ることなんていつだってできる。今までの私は姉様しか知らなかったし、知ろうとしてこなかった。独り立ちの時が来たのかもしれない。思いも寄らなかったことだけれど、姉様のことを忘れて、新しい、知らない世界を探しに行くべき時かもしれない」

 妹は山を降りた。溶けることを知らない雪が、いつまでも姉妹のいた洞穴を白く彩っていた。


 かくして、妹は使い古した椅子から、辛酸を舐め続けた山奥での暮らしから解放された。何度も見てきたはずの風景が、全く新しいものとなって妹の瞳に映り込んだ。

 妹は世界に羽ばたき、あらゆる物を体験し、それを楽しんだ。樵となって木を刈り、農家となって稲を育て、学生となって学び、船乗りとなって海を跨ぎ、狩人となって野山を駆け、商人となって荷を運び、詩人となってかつての鬱屈を詠い、兵士となって戦い、釣り人となって川を巡り、炭鉱夫となって鶴嘴を振るい、職人として槌を振るい、人となって生きた。時には乞食となって施しを求め続ける生活すら送ったが、その全てを妹は楽しんでいた。妹は学んで教えた。聞いて話した。騙して騙された。盗んで盗まれた。描いて描かれた。詠んで詠まれた。裏切って裏切られたが、信じて信じられた。殴り殴られ、蹴って蹴られた。褒めて褒められ、貶して貶された。傷つけ、傷つけられ、悲しみ、悲しませた。触れて触れられ、慰め慰められた。まさしく人生であった。

 山を降りて、数百年の時が流れた。妹は一人で、緑豊かな山奥を放浪していた。結局のところ、根無しが一番気楽で幸せだと、妹は考えていた。無意識の内に、足は自然と、かつて姉妹が暮らし、妹が怨恨を募らせていた家へと向かっていた。何故訪れることにしたのか、自分でもわからなかった。かつての家は跡形もなく消え去っていたが、代わりに似ても似つかない小屋が道の外れにぽつねんと建っていた。

 そこには双子の姉妹が住んでいた。一方は生まれつき身体が弱く寝たきりの生活を送っており、その片割れはこれといった特徴のない平凡な少女だった。射干玉の髪も、翡翠色の瞳も、清純な心も呪いも彼女達には縁の無い話だった。妹は寝たきりの少女に自分を重ね、懐かしく思ったため、彼女達の家に一晩泊まることにした。

 次の日の朝、双子の中身は入れ替わっていた。寝たきりだったはずの妹が姉を名乗り、妹を世話していたはずの姉が妹を名乗っていた。川に水を汲みに行く道すがら、妹が言った。

「最初に言いだしたのは、姉だったと思います。寝たきりの私に同情して、外を自由に出歩く私を演じてくれたんです。当時の私は何を馬鹿なことを、と思ったのですが、姉が私のように振舞うのを見ている内に、なんだか本当に外を出歩いているような気がしてきたんです。草っぱを駆けて、野草を摘んで、川を泳いでいるような。今となっては、元はどちらが姉で私だったのか、どちらが元は病気だったのか、さっぱりわからないんですよ。天女様は、私が元はどちらだったのか、わかりますか」

 得体の知れない姉妹だったが、妹は姉妹の間に通っている、確かな絆と愛を認めた。そして、自分にもそのような愛を注ぐべき相手が居ることを、数百年ぶりに思い出した。皆に恐れられ、忌み嫌われて、醜くなっても、私のことを愛して、守ってくれた姉。妹は突然、姉が恋しくてたまらなくなった。

「私は、姉様にきちんと謝らなければならない。そして、これまで姉様が私に尽くしてくれた分だけ、姉様に尽くさなければならない。今の私なら、姉様を幸せにできる。家を建ててあげられるし、若鳥の粥を食べさせてあげられるし、背負って運ぶこともできる」

 妹は早速姉の元へと出かけた。最後にあった場所に姉が居るはずだと、何故か強く確信していた。


 長い年月を経ても尚、雪山はその峻厳な山道と吹雪で常人を阻んでいたが、妹には何のことも無かった。雪積もる坂道を進む妹の胸に、昔日の記憶が次々と浮かんでは消えていく。背が高くて、強くて、格好良くて、優しくて、美しくて、温かくて、柔らかかった姉様。頑張って許して貰おう。許して貰ったら、成長した私を見て欲しい。自分のことを、自分でできるようになった、一人前になった私を。そしてまた、二人で一緒に世界を旅してまわるのだ。

 洞穴もまた、数百年前と同じように不気味な程静まりかえっていた。地面には霜が張り、壁には氷が天井まで伝っている。

「姉様、いらっしゃる。私、姉様に謝ろうと思って」

 妹は洞穴を、少しの不安と沢山の期待を抱いて覗き込んだ。そして、そこで姉の死体を見た。

 姉は瞳を閉じ、安らかな表情を浮かべていた。彼女の刀が喉に深く突き刺さり、頬には涙の筋が二本走っていた。涙は首筋から流れる血と混ざって細い身体を伝い、冷え固まって白い肌を暗褐色に染め上げている。雪山の冷気が死体の腐敗を許さず、姉を永遠の苦悶と後悔の中に閉じ込めていた。

 妹は泣き、凍り付いた姉の遺体に縋りついた。自らの罪を遅まきながら知り、自分が生きていても仕方の無い存在なのだと自覚した。呪いが洞穴の壁という壁から湧き出し、妹の身体を覆った。底なしの後悔と限りない愛と共に、妹は口ずさんだ。

――かのように何ともへまな生なれど貴女と会ひしを幸せとせむ――

 嘘も憎しみもなかった。ただひたすらに、愛しい姉を思って詠んだ歌だった。辞世の遺言としては悪くない、と妹が自嘲した時、何かが軋むような奇妙な音が洞穴に響き渡った。不可解に思った妹は顔を上げた。

 氷漬けになった姉の肌に、微かながら血色が戻り、頬がほんの少しだけ、桜色に染まっていた。彼女の身体を閉じ込めていた氷の一部が溶け、水気を含んだ煙が洞穴に立ち昇っている。微かではあるが、妹の呪いが、姉を苦悶と後悔の檻から解放していた。

 妹はその時、自身の異質の才を理解した。妹は思った。私は、今の今まで、呪いを使う時は憎しみと悪意しか思い浮かべていなかった。けれども、憎悪も邪心も無い、心からの愛を率直に歌うことで、人に祝福を与えることが、私の異才の本質だったのだ。姉もきっと、今際の際に、今私がしたように、詩で恵みを与えて下さったのだ。私の呪いは、心は、人を愛するためにあったのだ。

 呪い転じて、祝いとなる。心は憎むためでなく、ただ一心に愛するため。生まれを恨まず、運命を受け入れ、ただ幸せを望んで足掻くこと。たとえその努力や献身が、一切報われなかったとしても。

「姉様、貴女様から頂いた御恩、今、お返しいたします」

 妹は氷の前に正座をして、瞳を閉じた。思うことは、姉と過ごしてきた、これまでの日々。

「毎朝起こしてくれた。野草を摘みに出かける時、必ず抱き締めてくれた。野草と鶏肉で、粥を作ってくれた。身体が痛んだときは、匙で掬って食べさせてくれた。月の無い晩には、負ぶって原っぱまで連れて行ってくれた。身体が土で汚れないように、膝に座らせてくれた。姉様の髪は、夜の闇よりも暗くて、月光すらも吸い込んで澄み渡っていた。寝る時に私が泣いたら、艶やかな髪につるんで慰めてくれた。服を縫ってくれた。本を読み聞かせてくれた。誰よりも優しかった」

――今一度貴女の声が聞けるなら我が命など惜しからざるに――

 妹は服を脱いで、姉の身体の纏わりついている氷に被せた。姉が目を覚ました時、冷えてしまわないように。

「冒険よりも、私を選んでくれた。旅に連れて行ってくれた。春には屠蘇に花弁を浮かばせて、共に新年を祝った。花弁を集めて、冠や首輪を作ってくれた。私のために、血に汚れてくれた。剣に狂ってくれた。夏には河原の水を、手で掬って触らせてくれた。ほんの少しだけ、川で泳ぐのを手伝ってくれた。私は必死に、姉様の手を掴んでいた。見渡す限りの花園を訪れた時は、姉様の髪より黒い花が無くて安心した。悲しくなった時は、何も言わずに抱き締めて、頭を撫でてくれた。誰よりも綺麗だった」

――我が姉は乙女のまほろば花のごと打ち咲きにけりまた語りたし――

 妹は朝に夕に、ただひたすら姉を想って詩を詠み続けた。詠めば詠む程、姉の肌は瑞瑞しく、生気を取り戻していった。代わりに、妹の身体は息苦しくなり、足が動かなくなっていった。洞穴の寒気も、弱った妹の身体に残酷に牙を剥いた。

「人々に恐れられても、私を守ってくれた。熱い日は、風を送ってくれた。寒い日は、寄り添ってくれた。額に口づけをしてくれた。手を繋いでくれた。木や花の名前を教えてくれた。紅葉を見ながら、二人でお団子を食べた。黄や赤の葉っぱより、姉様の黒が好きだった。人と神の結婚式に参列した時は、二人で歌って喝采を貰った。話さなくなった後も、大事にしてくれていることは伝わってきた。何より、ずっと一緒に居てくれた」

 千や万の思い出が、妹の胸に浮かんでは消え、言の葉を落としていく。掠れた声と、暗転した視界の中で、作ることの無い愛情と思い出を頼りに、妹は詩を紡ぎ続けた。万や億の言葉が音となって世界に生まれ、泡沫の刹那に消えていく。いつまでも残るのは、愛しい人の記憶。最後の時が来た。

「私は、幸せでした。この思い出の他、もう何も望みません。私の喉を使って。愛しています、姉様」

――頂いたお礼に全てを捧げます色々ごめんね愛しい姉様――

 力尽きて、妹は倒れた。意識が途切れる瞬間、妹は思った。こんな事になっても、私は嬉しい。私の喉を姉様が使って下さるのだから。愛する人と、一つになれるのだから。

優しい沈黙が、ずっとずっと長い間、洞穴に満ちていた。


 衣擦れと足音が、氷の張った壁に反響した。


 妹は、一人きりで、かつて姉と長い年月を過ごした家に横たわっていた。床には埃が幾層にも厚く積もり、蒲団は破け、壁という壁はどす黒く染みが走っている。薄暗く、不潔で、陰鬱な空気が部屋中に漂っていた。

 希望の無い暗室の中で、妹はただ天井を見つめたり、目を閉じて物思いに耽っていた。妹は思った。構わない、私は永遠に、ここに居よう。そもそも、今までのことの全てが、私には過ぎた幸せだったのだ。今頃、姉様は何をしてらっしゃるんだろう。私という疫病神から解放されて、一人で世界を楽しんでいるに違いない。絵には描かれただろうか。詩人に詠われただろうか。将の嫁にはなれただろうか。もう、子孫も居るかもしれない。何でも良い。幸せなってくれてさえいれば。

 小屋の外、扉の向こうから、懐かしい、聞きなれた足音が響く。扉が開かれ、妹の目が光に眩んでいく。


「やっと見つけましたよ、愛しい妹」

 洞穴の中に妹は居た。足は無く、呼吸は酷く苦しかったが、確かに生きていた。何が起こったのかと見上げると、そこに居た姉と目が合った。

 姉はその長身を悠然と聳えさせ、座り込んでいる妹を見下ろしていた。純白の羽衣を纏っており、かつての血生臭さなどどこにも無い。腰まで垂らしていた黒髪は伸びて足元にまで垂れ落ち、背後から指す光が彼女の身体を金色に縁どっていた。長い手足は更に長く、細く、しなやかに洗練されており、その手の揺れにつられて、妹の身体は呼吸も忘れて右に左に、振り子のようにゆらゆらと揺れた。姉の所作の全てが、一目見たものを虜にする魅力に溢れていた。姉が左手を口元へ持っていき、それを目で追っていた妹は自然姉と視線を交わしてしまう。幽玄の美を体現した瞳は底知れない闇を湛えており、感情を窺い知ることはできなかった。その瞳は、妹を批難しているようでもあり、許しているようでもあり、憎んでいるようでもあり、また愛しているようでもあった。

 妹が姉の瞳に心を奪われていると、姉がにこり、と妹に微笑みかけた。かつての優しく慈愛に満ちた笑顔ではなく、人を誘惑して、悩殺するような、蠱惑的な魔性の微笑み。妹はどぎまぎして、視線をつと下に向けた。

 姉は妹に近づいて、妹の顎を手で上向かせた。視線が交錯する。

 姉は息を吹き返した後、妹を探して世界を回った。そして悟った。妹は、自分の内に居たのだと。私達は、一つになったのだと。姉が心の内側に思いを向け、かつて二人で過ごした家を思い浮かべた時、そこには埃まみれの髪で、ただ一心に姉の幸福を願う妹の姿があった。姉の足は都へ向かった。学問を修め、歌を習い、美貌を極めた。妹の気が変わらない内に、彼女を夢中にさせてしまおう、と考えていた。逃す気など、微塵も無かった。

「謝れば、許してあげます。私の愛しい妹」

 かくして妹は許され、全てを姉に捧げ委ねた。そして二人は心の中にあるかつての小屋で、昼は詩を送り合い、夜を共寝をして、いつまでも幸せに、悠久の時をただ二人で、仲睦まじく、安寧の日々を愛し合って暮らした。


読んで下さりありがとうございます。

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