表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/47

登場人物まとめ

本編または補足にも書ききれなかった内容や、裏設定も少し載せてあります。

ネタバレを山ほど含みますので、本編読了後に閲覧するのをオススメします。

〜登場国〜


◆カルム王国

大海に隣接し、渡航技術と海上戦に長けた大国。海の向こう、東洋の国との貿易も行われている。ウイン帝国とは長年、敵対関係にあったが現在は停戦中。カルム王国側は和平を望んだ王が多かったが、一度も実現したことはない。カルム王家の男は総じて己を曲げない頑固さがある。

王都の近くに第四王子。東部の街に第三王子。北部のはずれに第二王子がそれぞれ屋敷を構えている。


◆ベルデ国 

三つの国に囲まれた内陸国。領土は小さく武力も乏しいが、自然が豊かで気候も年中穏やか。湯治でも有名。ベルデ人の殆どがグリーンフィンガーズ(※SF=少し・不思議要素が入ってます)の能力を持つため、毎年が豊作である。恵まれた土壌を他国から狙われ、なす術なく奪われてきた歴史がある。

外国人と結婚すると子孫は能力が衰えると考えられており、国王は必ずベルデ国生まれの女性と結婚する。反対に国王の娘達は、侵攻阻止のために外国へと嫁いでいく。かつて、強力なグリーンフィンガーズを持つ者は"太陽の愛し子"と呼ばれていた。


◆サリド皇国

陶磁器が有名。平和主義国を謳っているが歴史を遡ると、その時代を制した国に味方してきたので、他国からは日和見国と言われる。


◆ウイン帝国

カルム王国に何度も戦争を仕掛け、ベルデ国から領土を奪った事もある。血気盛んな国民性で、皇帝も好戦的な人物が多い。しかし近年、不作が続いて飢饉が深刻化してきた為、やむなくカルム王国と停戦協定を結んだ。


※国土の大きさ

カルム王国=ウイン帝国>サリド皇国>>>ベルデ国


※兵力

ウイン帝国(飢饉が無ければ)>カルム王国>>サリド皇国>>>>>ベルデ国

ただし、海軍だけならカルム王国が最強。



〜登場人物〜


【カルム王国】

◆エイレーネ・グレン・カルム(旧姓エイレーネ・メイ・ベルデ)

元ベルデ国の王女。家族からの愛称はレーネ。橙色の腰まで伸びるふわふわな髪が特徴的。瞳の色はエメラルドグリーン。結婚当時は十六歳。小柄で華奢な体つきでも、うちに秘める正義感は大きい。気立てが良く、愛らしい容姿をしている。色っぽさは無いものの、どこか人を惹きつける魅力を持つ。花と海が好き。感情豊かなのでよく笑い、時には誰かの為に涙を流し、怒りを露わにする。家族を大切にしており、家族からも愛されている。五人兄弟の長子で、年子の弟との絆は特に強い。母親を尊敬しており、母親の教えを守ろうとする頑張り屋でもある。ベルデ人の特徴であるグリーンフィンガーズの力が極めて強力。しかし本人にあまり自覚は無い。子供の頃から父親のほうが凄いと思うように意識しているうちに、自身の能力に疎くなっていったため。

弱い立場にある人々に対して思い遣り深く、使用人や民からよく慕われている。リファトとは相思相愛。彼の看病はエイレーネの役目で、その手には薬独特の香りが染み付いてとれなくなった。しかしエイレーネはそれを勲章も同然に考えている。医療の知識は看護師並。激甘すぎるリファトに何年経っても赤面してしまう場面もあるが、エイレーネからちょっぴり仕掛けてみる事もある。

他の貴族からの評価は二つにわかれており、優しいお妃様だと好意的に見られるか、王子達を虜にするほどの女性なのかと懐疑的に見られるかである。媚を売られてもエイレーネが肩入れする事はないので、取り入ろうと目論む貴族はやきもきしている。肩入れしないとは言え、社交場でも弱い者に優しく、除け者にされている人を見つけると、さり気なく輪の中に招き入れてあげるため、尊敬の眼差しを向ける貴族も多い。最終的に王太后となるもエイレーネに野心は無く、権力に固執もしていない。しかしながらカルム王国に骨を埋める決意は固く、王族としての振る舞いも常に意識している。亡くなった者達のことを忘れておらず、特に殉職した親衛隊と、東部の街の女性達の死を悼んでいる。

エイレーネがベルデ国に逃亡している間、カルム王国が長雨に見舞われたのは"太陽の愛し子"を追い出したから…みたいな理由があったりする。彼女が手を加えた畑は無事だったのもその能力の恩恵。


◆リファト・グレン・カルム

カルム王国の第四王子。エイレーネと結婚した時は二十一歳。灰を被ったような艶の無い髪で、体の殆どが先天的な皮膚病のため変色ないし変質している。特に顔と手足の変質が酷く、その容姿から"呪われた王子"と呼ばれて忌み嫌われる。しかし瞳は深い青色で、病がなければ美丈夫だったと思われる。家族から罵倒され、暴力を受けるのが日常と化していた。外出も厳しく制限され、王宮を歩き回る際は黒いヴェールと手袋で病変部を隠すよう強要された。使用人や乳母さえ滅多に近寄ろうとしない、空虚で孤独な日々を送ってきた。短い間だったが教育係を務めた老師が、リファトの人格を形作った。過酷な生い立ち故に、自分を下卑する傾向が強く、家族の温もりに飢えている。二回の結婚は無残な結果に終わり、三回目の結婚の折、エイレーネの肖像画に一目惚れした。この時の肖像画はずっとリファトが隠し持っている。エイレーネや子供達の肖像画は沢山欲しいが、自分のは要らない。

リファトの世界はエイレーネか、エイレーネ以外かの二択で構成され、愛が重く、とても嫉妬深い。彼女のお願いに激弱。耳を貸さなかったのは一度だけである。自分は誰かから愛されるような人間ではないと思ってきた為、エイレーネの想いも受け止めきれずにいた時期もあった。彼女に愛されていると理解し、身も心も差し出されてからは、溺愛の箍が外れた。でも大切にしすぎるあまり夜のお誘いが控えめなってしまい、いざ事に及ぶと止まれなくなるので本末転倒である。

エイレーネとアーロン、ライファンとレフィナードのような兄弟の絆に対する憧れが捨てきれなかった。十年に渡って手紙を送り続けた末にマティアスと打ち解けることが叶い、ものすごく浮かれている。

一連の出来事を経て、味方になってくれる貴族は増えたが社交界での評判は昔と大きく変わらない。とはいえ一応、摂政の立場にあるので面と向かって嘲笑される事はなくなった。リファトとしては、エイレーネと子供達に危害が及ばなければ良しである為、自分が"呪われた王子"と呼ばれる事は気に留めていない。あくまで自分はフェルナンとライファンの繋ぎ目であると自覚し、執政をおこなっていく。

後世ではエイレーネと共に"王国で一番愛された夫妻"として有名になる。


◆ギャストン

リファトの父。カルム王国を治める王。統治能力は有るものの、とにかく女関係にだらしなく、愛妾が途切れた試しがない。王妃のことは愛するどころか嫌っており、その子供達も然り。後継となる王太子との接点だけは一応持っている程度。息子達が全員二十歳を越えても世継ぎを作らないので焦っていた。そんな折、王妃に毒殺される。


◆ニムラ

リファトの母。生まれた頃より王妃となるべく育てられた。敬虔深い両親を持った故に、占いや預言を信じて頼る傾向がある。あまり美人ではないのがコンプレックスで、自分を愛さず、美しい愛妾にばかり構う国王を恨んでいた。結婚してすぐ二人の王子が生まれたのは良かったが、それ以降、夜伽が一切なくなった。媚薬を盛って第三王子を孕むも、顔立ちが両親のどちらにも似ていなかったので不貞を疑われる。体裁を取り繕おうと再び媚薬を使い、第四王子が誕生した。ところが生まれてきたのが見るに耐えない不気味な王子だった為、王から完全に見限られてしまった。それが理由でリファトを酷く嫌い当たり散らすが、アンジェロのことも好きではなかった。ただ単に、使える駒が第三王子しかいなかった。その第三王子の策略により酷い最期を迎える。


◆フェルナン

カルム王国の王太子。リファトの長兄。頭の回転が速く、父親同様、国を治める力に優れている。だが女好きな一面だけは微塵も似なかった。幼少期から不仲な両親を嫌というほど見てきた為、恋や愛といった感情に虚しさを抱いている。その所為で自分の妃も娘も愛せなかった。けれど人の愛し方が分からなかっただけで、二人を心底嫌っていたつもりはない。立場上、国王である父の側につき、母と第三王子の勢力と敵対する。晩年は生きることにも疲れ果て、リファトに後を託して眠るように息を引き取る。


◆マティアス

リファトの二番目の兄。子供の頃からしょっちゅう王宮を飛び出し、野山を駆け回っていた変わり者。屋敷が与えられる事が決まると、自ら辺鄙な場所を選び趣味の狩猟に没頭して暮らした。礼儀作法とか格式ばった事が大嫌い。既婚者ではあるが、妃は早々に偏屈なマティアスに愛想を尽かして出て行っている。落馬して下半身付随になった直後から偏屈と人嫌いが加速。自暴自棄になっていたが、リファトからの手紙を読むようになり、頑なな態度はゆっくりと軟化していった。最初はどうせ今だけと思い、段々とそのうち届かなくなるのではと不安になり始めるも、字の汚さを恥じて返事が書けなかった。理由が判明しても書けないまま。本気で案じてくれたリファトをたった一人の弟と明言し、エイレーネのことも義妹として好感を持っている。

後年、姪っ子の婚姻に口を挟んで揉めるが、まさかの姪本人から直々に説得される。その事でリファトに「立派に育てすぎだ」と涙目で怒った。ずっとぶちぶち文句を垂れていたものの、いざ甥や姪が結婚して王宮を出てしまうと、旅行のついでだと言い訳して顔を見に行き、視察と称して国を飛び出したりする。ツンデレ伯父さんである。姪からおじ様って呼ばれるのをいたく気に入っている。


◆アンジェロ

リファトの三番目の兄。美形と持て囃されるが、顔の造りが他三人とやや異なるという理由で不貞の子ではと疑われていた。弟は不幸でいるべきで、兄を差し置いて幸せになる事は許さないと本気で思っている。自分より不幸な存在が居る事で、心の均衡を保っていた節がある。母と結託して弟を苛め抜き、周囲からは母親に贔屓されているように見えただろうが、アンジェロは誰からも愛されていない事に気が付いていた。十八歳で結婚した後、死別や離婚を繰り返しながら女性を取っ替え引っ替えしたのも世継ぎの為ではなく、一人の人間として愛されたい願望の裏返し。エイレーネが妻として、母として愛情全てを注ぎ出す姿は、アンジェロの目を惹きつけてやまなかった。エイレーネを欲するあまり人格を大いに欠き、狂っていく。果てには弟に惨敗し、女遊びの代償を払うことになった。処刑の裁定が下るより先に、幽閉塔にて病没する。


◆ヴァネッサ

フェルナンの妻。王太子妃。とても物静かな女性。未来の国母と謳われ、懐妊も早かったが、彼女の栄華はそこで終わりを迎える。次第に冷遇された妃と揶揄されるようになり、社交界での立場を失っていく。それでも一人娘のために必死に耐えていたが、離縁を宣言された日に絶望の底へ叩き落とされた。縋るような気持ちでエイレーネに娘のことを頼み、王宮を後にした。その後は祖母の故郷であるサリド皇国へと旅立った。まさかそこで愛娘と再会できるとは思わず号泣。それから少しずつ元気を取り戻し、娘共々エイレーネに感謝する日々を送っている。


◆シルヴィア

フェルナンとヴァネッサの娘。ギャストンの統治下で育った唯一の王女。内気で気弱な性格のため、絶対の味方であった母が去った後は、毎日泣き暮れていた。悲しみの最中にエイレーネから貰った手紙は、今でも大切に保管してある。サリド皇国の皇族に嫁いでからは心機一転し、エイレーネのような女性を目指す。現在、三児の母として育児に奮闘中。飼い猫も子猫をたくさん産んだ。

子供達が少し大きくなると、みんな連れてカルム王国に遊びに行ったりする。シルヴィアにとってエイレーネは恩人であり、姉のように慕う人でもあり、友人でもある。


◆ミランダ

ギャストンが生涯で最も夢中になった愛妾。そしてギャストンの最後の愛妾でもあった。貧困層の生まれ。母親は娼婦で、父親は不明。長く豊かな銀糸の髪、アイリスのような紫の瞳を持つ、類い稀な美女。ギャストンから寵愛されるが、ミランダは国王を愛してはいなかった。愛や信頼といった形の無いものに決して執着せず、親切は安売りしない主義。優しさで身を滅ぼした母のようにはならないと決意している。自分の母親に複雑な思いがある故、優しいばかりのエイレーネのこともあまり快くは思っていなかった。でも死んだ母と似通る部分があって無視もできなかった。自分が生きた証を歴史に刻むべく、平民から王の愛妾へとのしあがった凄まじい努力家。

ギャストン亡き後はベルデ国で暮らしている。ベルデの国柄を大層気に入り、悠々自適な生活を満喫中。旅行はするがカルム王国の土は二度と踏まない。ミランダに紅茶を持ってくる侍女は、愛妾だった頃に雇った女の子。ミランダは手切れ金を渡してカルム王国に置いていくつもりだったが、侍女本人がお供を続ける事を選び、ずっと一緒にいる。


◆ギヨーム

リファトの侍医。患者と真摯に向き合うが故、口煩く厳しいことを言う。確かな腕を買われて王宮勤めを始めるものの、絶対に賄賂を受け取らず、権力者の言いなりにならなかったために陥れられ、王宮を追放された。その際に"呪われた王子"の侍医も押し付けられた。追放されてからは、町医者とリファトの侍医とで、忙しく働いていた。孤児や貧しい人々には無償で診察を行うので、本人の暮らしぶりは質素。当初はエイレーネに疑いの眼差しを向けたが、やがて彼女の本気を認め、熱心に指導まで行う。エイレーネと協力し、リファトの健康状態の改善に貢献した。

アンジェロを看取った後、侍医を引退して町医者に専念する。


◆アリア

孤児院から引き抜かれたエイレーネの侍女。手先が器用で、細かい仕事が得意。真面目な性格なので孤児院では模範児だった。五歳の時、家族と事故に巻き込まれ、天涯孤独となった。事故の影響で左足が麻痺しており、歩く際に引き摺っているが、補助があれば小走りくらいは可能。父親は行商人だったのを朧げながら覚えていた。微かな記憶をもとに、独学で星が読めるようになる。見た目が黒髪クールビューティ、所作も貴族の令嬢と遜色なく、異性から密かに人気があったりする。

孤児院で出会ったジェーンとは家族も同然の親友。一番辛かった時期に支え続けてくれた事をずっと感謝している。ジェーンの右側に立つのが定位置。また、侍女として迎え入れ、自ら指導してくれたエイレーネのことも深く敬愛している。

勤勉な働きぶりを評価され、前侍女長から後釜に推挙されるが辞退し、代わりにジェーンを推薦する。曰く「一歩前に踏み出して、人を引っ張っていく力がジェーンにはあるから」との事。


◆ジェーン

アリアと同じく孤児院を出てエイレーネの侍女となった少女。いつも元気なムードメーカー。ひどい癖っ毛なので髪を伸ばしたことがない。読んだり書いたりして覚えるのは苦手だが、耳が良いので聞いて覚えるのは得意。赤ん坊の頃、孤児院の前に捨てられたため、正確な生年月日は不明。生まれつき右目がまったく見えず、左目の視力も弱い。誰かの手を借りなければ生活できなかったが、同室になったアリアを元気付ける事で、誰かの力になれる喜びを知る。仲間内では素を全開にしているものの、偉い人達の前に出る時は仕事モードに切り替える。コツは「アリアになりきること!」らしい。

アリアの事は本当の家族と思っている。アリアの左側が定位置。しかし次第に自分が親友の重荷になっていると感じ始め、でも置いていかれるのは嫌だと苦悩するようになった。そんな折にエイレーネと出会い、ひとりでも歩けるようにしてもらったので、人一倍強い恩義を感じている。

やがて侍女長の座につくことになり、本人的には不向きだと思っている(書類仕事が苦手だから)ようだが、親友の見立てに狂いはない。


◆ポプリオ

リファトに雇われている庭師。エイレーネとの結婚が決まった際、古城の庭造りを依頼したのが始まり。名前に似合わぬ巨体の持ち主。でかい図体の割にもの凄い奥手で、話し声がめちゃくちゃ小さい。大概の人は聞き取れず、無視されたと誤解する。だがしかし既婚者で、子供もいる。エイレーネとは園芸仲間。黙々と作業する時間はひたすら穏やかである。自宅から通いで働いているので、古城の取り壊しを機にリファト達のもとを去ったが、大庭園の計画が持ち上がった際に呼び戻される。計画実行の責任者に据えられた。リファト達がいつ来ても楽しんでもらえるよう、毎日丹念に庭の手入れをしている。エイレーネとハリエットから贈られた新しい花嫁衣装は、家宝になっている。


◆マルコ

リファトが探してきた料理人。出身はベルデ国。ベルデ人らしく野菜料理が得意。魚料理の修行のため、カルム王国にやってきた。出身地ゆえに馬鹿にされ、ろくに修行させてもらえなかったところをリファトに雇われる。まだベルデ国にいた頃、子供だったエイレーネを見た事がある。リファト達が城を移ってもずっと専属料理人としてついて行き、最終的には料理長の座に就任。カルム王国の料理界を大きく発展させる。涙脆い男なので、生まれた子供達を抱かせてもらうたびに号泣していた。厨房へ顔を出すと、内緒で味見と称して摘み食いさせてくれるため、子供達から人気。


◆ハリエット

とても腕の良いお針子。誰にも媚びない、逞しい性格の女性。自他ともに認める仕事人間で、美しい衣装を仕立てるのが生き甲斐である。客は選ばないが、一つ一つのドレスを大切にしてくれるエイレーネのことは一番の良客と認め、贔屓気味。仕立て以外の仕事を請け負ったのはエイレーネだけ。リファトや子供達の服ももちろんハリエットが仕立てている。新しい流行を起こすべく、エイレーネに新作を着せたがる。仕事に忙殺されるのは大歓迎。

再会したシルヴィアにサリド皇国の布地を回してくれとお願いしたり、どこまでも抜け目ない。


◆ユカル

リファトの侍従。日に焼けた髪を後ろで括っている。物心ついた頃から奴隷として生きてきた。腕に奴隷の焼印がある。窃盗団のボスに買われ、命じられるがまま盗み続けること十数年。死と隣合わせの日々から生き延びる為の術を学んでいった。盗みはもちろん、違法取り引きや無許可の出入国など犯罪行為を重ねていたものの、人殺しだけはしたくないと強く思っていた。他者の命を尊ぶ気持ちがある事を見抜いたリファトが、身元引受人を申し出たおかげで獄中死しなくて済んだ。

俊敏で運動能力が非常に高い。剣術より体術のが得意だが、どんな武器も扱うことは可能。護衛から諜報まで幅広くこなせるチート。人間としての尊厳を守ってくれたリファトとエイレーネに忠誠を誓っている。元の性格は気が短く、口も悪いが、培った理性でそれを抑えているだけ。

初めてできた友人のアリアとジェーン、同じ侍従のイシュビをとりわけ信頼している。背が高くて格好いいのでモテるが、ユカルは残りの生涯を償いのために使うと決めており、結婚も恋愛もする気がない。


◆イシュビ

エイレーネの侍従。勉強は不得手だが体力は人一倍ある。有り余る力を他人のために役立てたかったので騎士になった。捕らえた妃を暴行し流産させよ、という耳を疑う指令が下った際、従うことを拒否。そのせいでニムラの怒りを買い、騎士号を剥奪された上に殺されかけた。けれどもイシュビのことを覚えていたエイレーネにより救いの手が差し伸べられる。休憩時間でさえ鍛錬に費やすほど生真面目。髪も短く刈っている。騎士団に所属していた時は負け知らずだったが、ユカル相手だと毎回引き分ける。単純な体力勝負ならイシュビが勝つが、身のこなしと柔軟性はユカルのほうが上。自分の背中を預けられる唯一無二だと互いに思っている。


◆クレヴァリー公爵

代々カルム王家に仕えてきた公爵家の当主。貴族の中でも発言力が強い。お金や権力に屈することを良しとせず、時には王の反感を買ってでも、国にとって最善の意見を通す。そういう誠実さを買われ、長らく宰相として重用されてきた事を誇りとしている。ギャストン、フェルナンにも仕え、その後はリファトの忠臣となって支える。


◆バーバラ

東部の街に暮らす少女。アンジェロに誘拐され、無理やりエイレーネ役を演じさせられていた被害者の一人。エイレーネとは全く面識が無かった。エイレーネ役は大勢いたが、バーバラ以外は全員死亡している。アンジェロから受けた酷い仕打ちをエイレーネの所為にし、死を覚悟で王宮まで乗り込むが、逆に助けてもらうこととなった。家族の元に無事帰されたバーバラは、自分の目で見たものを、街の人々に語って聞かせた。

定期的に東部の街へ弔問するエイレーネを案内するのはバーバラの特権。


◆ワルター

マティアスの屋敷にいる家令。マティアスに仕えていた人間の中で、唯一辞めなかった人。子供の頃からお世話していることもあって、王子相手でも遠慮が一切無い。痛い所を突きまくる物言いにマティアスは怒り、クビにしてやるといつも言うが、堅苦しくされる方が嫌いなので何だかんだ気は合うらしい。リファトに返事を書くよう再三言い続けたが駄目だった。ワルターが代筆すると提案しても許してもらえなかった。でも実際にリファトと会い、人となりが分かってからは、マティアスの許可なく返事を書くことを決めた。

引き篭もるのも大概だったが、マティアスがあちらこちらへ旅行するようになるのも、振り回されて大変な目に遭う。甥達の手紙にもやっぱり返事を書かないものだから、ワルターが全部代筆している。そのうちワルターのほうから、クビにするならさっさとしてくださいよと言い始める。


※リファトとエイレーネの子供達

◆ライファン

孤児院で生まれた第一子。髪と瞳の色は母親譲り。思慮深くて慎重な気質。園芸は好きだがグリーンフィンガーズの力は微弱。父は母を守り、母は父を支える、二人のそういう姿を規範としている為、兄として弟や妹を支えようと努力する。体の弱い弟をよく気にかけている。また、侍女や侍従に守られた話を聞いて育ったので、使用人達に対する信頼や敬意も大きい。天才と言われる次男、万人に好かれる三男のほうが、自分より王に相応しいのではと思い悩む時もあった。

八歳で王に即位し、十八歳の誕生日を迎えた日に全権が委ねられる。稀に見る大飢饉により崩壊寸前まで追い詰められたウイン帝国を助けたことで、史上初めて仇敵との和平に成功する。その事で反感も多く買ったものの、優れた統率力と判断力を以って正しい道を追求した。後世では、カルム王国史においてライファンが統治した時代が最も栄え、最も平和だったと言われる。数々の功績を讃えられ、名君として名を残す。とっても生真面目でお堅い王妃様を迎えるが、仲の良い夫婦となって連れ添う。


◆ステファナ

第二子。顔立ちは母に似ているが、母以上に溌剌とした女の子。いつも笑顔。花が好きで土いじりも嬉々として行うが、グリーンフィンガーズの力は強くない。勉強も兄や弟には敵わず、平均よりは上くらい。でも全く悲観していないし、嫉妬もしていない。わたしの兄弟すごいでしょう!と逆に得意げ。面倒見が良いのでライファンと一緒に弟妹の遊び相手になっている。子供の時分は母の真似をしたがり、園芸だけでなく医療にも興味を示す。

適齢期になると長年の宿敵であるウイン帝国に嫁ぐ事を自分で決めた。伯父から猛反対を受けたが「王女に生まれたならば、自国のために尽くすのは当然です。お母様がそうしたように、わたしもこの身に背負う使命を果たします」と強い覚悟を見せた。敵国に馴染むまで苦労は絶えなかったものの、夫からは大切にされていた模様。


◆レフィナード

第三子。喘息持ちで、体があまり丈夫ではない。しかし人並外れて頭が良く、一度覚えた事は忘れない。家族はみんな好きだが、中でもライファンを慕っており、いつか必ず役に立ちたいという願いは誰よりも強い。

兄が正式に王位を就いだ際、自分を宰相にしてほしいと頭を下げた。その頃には喘息も克服していたが、結婚はせずに兄の右腕となることを選ぶ。宰相になるには若すぎると反対意見も多数あった。しかし優れた知恵と豊富な知識は年寄り達の度肝を抜き、地道に積み重ねてきた知力で自分の道を切り拓いていった。


◆ルーフェン

第四子。秀でたものはないが、両親の優しさを目一杯詰め込んだような男の子。とてもおっとりしていて、声を荒げたことがない。家族の笑顔が大好き。親切で人懐っこいので使用人からの人気は一番高い。

成長し、結婚した後は温かな家庭を築きつつ、人当たりの良さを活かして主に外交面で活躍する。


◆ラトナとエレノア

第五子、第六子。双子の女の子。名前決めで揉めた。兄弟の中ではグリーンフィンガーズの力が最も強い。といっても母親には遠く及ばない。可愛がってくれる姉と大の仲良し。姉のお下がりを巡って喧嘩になったことも。

姉と同じく適齢期になるとラトナはサリド皇国、エレノアはベルデ国にそれぞれ嫁ぐ。



【ベルデ国】

◆ベルデ王(ネレオという名前を考えていましたが本編では未登場)

エイレーネの父。おおらかで家族想いの王様。王妃のことも子供達のことも心から愛している。国王らしく強いグリーンフィンガーズを持つが、エイレーネには少し劣る。エイレーネの強すぎる力はベルデ国に分裂をもたらしかねないと危惧していた。とはいえ愛娘であることに変わりはないので、婚姻にはより慎重になった。王妃を熱病で亡くした後は立ち直ることができず、王位を息子に譲って静かに隠居することを選んだ。


◆エレーヌ

エイレーネの母。毅然とした性格の女性で、子供達の教育に手加減は無い。しかし確かな愛情も注いでいる。ベルデ王とは政略結婚だが、愛し合う良き夫婦でもある。五人の子宝に恵まれた。やはり最初の子であるエイレーネは可愛くて、気を抜くと甘やかしてしまいそうになるので、意識して厳しく接している。相手に共感しすぎて涙する娘の優しさが、王族においては危うさに繋がると思い心配していた。一方でエイレーネの心根は、愛するベルデ王から受け継いだものなので、優しいままでいてほしいと矛盾した願いも持っていた。王と同じ熱病に罹患し、そのまま帰らぬ人となる。亡くなる前に夫と子供達全員に言葉を遺している。


◆アーロン

エイレーネの弟。ベルデ国の王太子。見た目はエイレーネが男の子になった感じ。子供の頃は劣等感を覚えたり、衒いなく褒めてくれる姉に疑心を抱いた時期もあった。けれども、よく知らない大人ではなく姉を信じると決め、姉の良き理解者へと成長していく。グリーンフィンガーズの力は劣るが、勉強はアーロンのほうができる。アーロンも優しい性格だが、感情に揺さぶられることは少ない。理性的な面が強いので、家族みんなから次期国王と認められていた。予期せず王位を継ぐことになったが、家族の期待通りの手腕を発揮する。大人になり、それぞれ家庭を持っても、姉との文通は続いている。

後に統治者となったライファン、ロイドと同盟を結び、ベルデ国の安寧を強固なものにした。


◆ウェイド将軍

ベルデ国に亡命してきたリファト達を援助した人。若かりし頃は王宮勤めをしており、エイレーネのことは赤児の時から知っている。



【サリド皇国】

◆ロイド皇子

エイレーネの婚約者候補の中で最も有力視されていた、サリド皇国の皇太子。温厚な好青年。エイレーネとは数回、手紙のやり取りをした。彼女が妃になってくれたらいいなと期待していたが叶うことはなかった。淡い初恋だったのかもしれない。平和主義国らしく、国と国の繋がりを重んじているので、エイレーネ達の頼みにも快く応じた。カルム王国から届く手紙にエイレーネが差出人となっているものが一通も無いので、リファトに恋敵と見られていることを薄々感じ取っている。

これぞザ・ヒロインみたいな女主人公を書きたかったため、生まれた小説でした。王女らしく芯の強いところもあり、女性らしく感情的な一面もあり、優しくて可愛らしくて、隠れチートでもあったり的な…(でも私のお気に入りはミランダ様とマティアス伯父さんですけどね)。とにかく、ひたすらまっすぐな純愛が書きたかったんです。あと私は、忠義の使用人が大好物なので、今作にもいっぱい盛り込みました。テンプレすぎて飽きられようとも、姫と騎士みたいな主従関係が好きなんです!

この小説を書くにあたり、実在した歴史上の人物から着想を得ています。浅学がバレるので誰とは明かしませんがモデルにした人は複数いまして、中世〜近世ヨーロッパの方々です。

最後に…数ある小説の中から私の作品を見つけ、評価・感想、誤字報告を下さる事、本当にありがたく思っています。更新が遅い上に不定期で申し訳ありませんでした。それでもここまでお付き合いくださった読者の皆様に、心から感謝いたします。ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ