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「歌劇場に行ってみませんか?」


 脈絡の無い、唐突な提案であった為、エイレーネは直ぐに返答できなかった。花瓶の花を整えていた格好のまま固まっている。それを、気が進まないせいと解釈したのか、リファトの眉が下がった。


「お好きではありませんでしたか?」

「いえっ、ベルデ国には歌劇場が無かったので、とても興味があります!」


 急いで弁解すれば、彼はほっとしたように「では今度、一緒に行きましょう」と誘ってきた。

 カルム王国では紳士淑女の嗜みとされる観劇だが、かくいうリファトも劇場に足を運んだ事は無い。ならば何故、今になって行ってみる気になったのか。きっかけは先週まで遡る。

 不定期ではあるものの、民達との交流は続いており、第四王子夫妻はいつも一緒に畑を訪れる。農民達は元より、彼らから話を聞いた商人やら職人やらも、最近では見物にやって来る。今し方、エイレーネが触っていた花瓶も、しがない陶芸家を自称する老夫婦から頂戴したものだ。

 初めは遠くから王族を眺めるだけだった人達も、次第に緊張を解いていったらしい。特にエイレーネは同じ年頃の乙女達に引っ張りだこだった。どうやら想像するしかない本物のお姫様の暮らしが気になるらしい。きゃあきゃあと盛り上がる会話は、当然リファトの耳にも届く訳だ。


「姫様は街の大きな劇場に行ったことがあるんですか?」

「みんな素敵なドレスを着てるんですよね!憧れます!」


 残念ながらエイレーネの外出先はもっぱら畑と孤児院である。ドレスも汚れても構わない軽装なものばかり着用している。リファトなんて侍従が見つかってからは出掛ける理由が無くなり、エイレーネに同行するのみとなっていた。古城の庭だけは毎日のように見に行くが、それは出掛けたうちに入らない。

 それ故、エイレーネは「わたしも行ったことはないんです」と返すほかなかった。別に彼女はきまりが悪そうにしていた訳でも、不服そうだった訳でもない。至って普通に話していた。ただ単にリファトが心苦しく思っただけだ。広い空の下で生き生き笑うのが似合う彼女を、己の臆病さのせいで古びた城に留めてしまっている。その事がひどく申し訳なかった。


 カルム王国には大きな歌劇場が点在しており、リファトの城の近くにも立派な劇場が建っている。二人とも演目に拘りは無かったので、天気の良い日に行ってみる事にした。

 歌劇場に集まるのは上流階級の人間ばかりとあって、エイレーネも身嗜みには気を遣う。といっても、彼女が所持するドレスは多くないので、あまり悩む必要は無かった。どちらかと言えばアリアのほうが、気合い充分であった。新しく試したい髪型があるらしい。慣れたように髪を梳く侍女は、また一段と成長したようだ。いつもと違う髪型にリファトは目敏く気が付き、笑顔で褒めちぎるので、エイレーネは照れてしまった。

 こうして、初々しい夫婦を見守る侍従、侍女と共に総勢五名を乗せた馬車は出発したのである。




 城とは一風異なる雰囲気を持つ歌劇場を、エイレーネは興味深そうに眺めていた。少々みっともないが、思う存分周りを見渡したくなる。うずうずするエイレーネに気が付いたリファトは「失礼」と彼女の手を取り、自身の腕に掴まらせた。彼の意図が分かったエイレーネは気恥ずかしくなりつつも、はにかむのであった。

 外出に際し、リファトは礼儀として手袋は嵌めていたものの、顔を覆うことはしていない。隠そうが隠さまいが、どのみち人目は集めてしまうのだ。農民達のように好意的に受け入れられる事など無いのは覚悟の上。あれはエイレーネが起こした奇跡だと思っている。それでも彼は下手に隠すのをやめたのだ。


 けれど、彼にしてみたら決死の覚悟が、こんな所で裏目に出るとは思ってもみなかった。

 そろそろ二階の座席へ移動しようとしていたリファトとエイレーネは、最も会いたくなかったであろう人物と遭遇する。


「どうしてお前がここにいる」


 アンジェロが険を含ませて放った疑問は、こちらが聞きたい事であった。

 フェルナン以外の王子は結婚と同時に領地の一部を与えられ、王宮を出ている。ただしリファトは追い出されただけで、領地経営は許されなかった。つまるところ、王子同士は領地が被らぬよう考慮して城を構えるのだ。ばったり出くわす事など滅多に起こらないはずだった。だというのに何の因果か、リファトとアンジェロは歌劇場で対峙している。


「僕の前に立つのに、その汚い面を晒しているのはどういうつもりだ?いつからお前は僕の命令に逆らうほど偉くなったんだ?」

「申し訳ありません。こちらで兄上にお会いするとは思っておらず、準備を怠りました」

「チッ…おや、エイレーネ姫も一緒だったか」

「…ご無沙汰しております」


 エイレーネは極力、警戒心を剥き出しにしないよう心がけたが、出会い頭にリファトを侮辱され、神経を逆撫でされていた。


「ははっ!なんとも貧乏くさい格好だな。僕が誘った時に頷いていれば、そんなみすぼらしいドレスを着なくて済んだのに」


 アンジェロのほうも女性を伴っていたが、彼の妻ではなかった。愛人か、はたまた今日限りの遊び相手か。彼は見せつける為にその女性の腰に手を回してから、エイレーネを馬鹿にした。相手の女性も流行りのドレスをひけらかし、くすくすと意地悪く笑っていた。


「わたしはリファト殿下に褒めていただければ、それで満足です」


 しかしエイレーネは標的が己なら冷静に対処できる。豪奢でなくとも人前へ出るのに恥ずかしい格好をしているつもりはないし、着飾る理由はリファトを喜ばせる為だ。

 まかり間違ってもアンジェロの為なんかではない。彼女の言葉の含みを読み取ったアンジェロは、いとも容易く激昂する。


「田舎者の分際で僕に盾突くな!!」


 積もり積もった苛立ちのまま、アンジェロは右手を振り上げた。エイレーネは咄嗟に目を瞑り、頭部を守ろうとする。その直後、肌を打ち叩く渇いた音が響いた。けれど痛みは襲ってこない。

 それもそのはず、開眼した彼女の目の前いっぱいに、リファトの背中があったのだ。彼が庇ってくれたと瞬時に理解する。アンジェロの攻撃は、よりにもよって皮膚の脆い患部に直撃したらしく、リファトのこめかみには血が滲んでいた。


「っ、リファト殿下!!」

「そのまま私の後ろに」


 流血を見て顔面蒼白になったエイレーネは、次は自分が盾になろうとするもリファトに阻まれ、彼の背に縋るような格好になってしまう。


「僕に触るなと言っただろう!?」


 忌々しそうに手袋を外したアンジェロは、それを弟に思い切り投げつけた。


「いいか!?お前は汚物そのものだ!汚物は汚物らしく、片付けられて消えるべきなんだよ!醜悪な姿で生き恥を晒すくらいなら、潔く死んだらどうだ?そもそも汚物が僕に触れておきながら、何の罰も下らないなんておかしいと思わないのか!?」


 ただただ、怒りが猛った。燃え盛る怒りは声もろともエイレーネの胸を焼く。


「殺されたくなければ今すぐ僕の前から消えろ!!」


 その時、怒りに震える華奢な肩がそっと押された。リファトが兄の視線から守るようにして、彼女に退避を促したのである。


「…行きましょう」


 リファトは労るように言った。彼女は俯いたまま、何も言わずに歩き出したのだった。


 肩を支えてもらいながら歩いていたエイレーネであるが、徐々に歩調が乱れていった。そして遂には足が止まってしまう。彼女に合わせてリファトも立ち止まったが、小さな嗚咽が聞こえてきたので、ゆっくりと柱の影まで誘導する。とうに開演時間は過ぎていたので、玄関前はがらんとして静まり返っていた。

 エイレーネは声が漏れないよう口を手で押さえていたものの、瞳からあふれる大粒の涙までは隠せなかった。リファトはハンカチを取り出して拭おうとしたが、か弱い力で抵抗された。恐らく、血が出ているリファトに使ってほしいという意味だ。そうと気付いていながら、リファトは敢えて知らんふりをする。


「…怖い思いをさせてしまいましたね」


 リファトが謝ると、もの凄い勢いで否定された。ぶんぶんと音が聞こえてきそうなほど首を横に振ったエイレーネは、再び瞳に涙を溜める。子供の癇癪みたいに泣いているのは、断じて怖かったからではない。未だかつて抱えたことの無いこの赫怒を、どうやって散らせば良いのか分からなかったのだ。故に、行き場を失った激情が涙となって溢れ出た。

 すみません、と。エイレーネは痙攣する喉から絞り出す。ぼろぼろ泣いている場合ではない。早く殿下の怪我の具合を確認し手当てせねば。実兄に痛めつけられた殿下に言葉をかけなければ。やるべき事は理解している。だけど己の心が制御できなかった。リファトという存在がいかに心の奥深くまで根付いていたのか、エイレーネは思い知る。


「貴女が私のために涙を流してくれる、それだけで私は十二分に救われます。ありがとう、レーネ」


 そっと抱き寄せられ、頭を慰撫されてもなお、エイレーネは慟哭する。決して大きくはない分、余計に悲痛な響きがあった。リファトは抱擁する力を強める。


「…あのような…っ、リファト殿下は、あんな風に言われる方では、ないのに…っ!」

「兄上は昔から変わりません。言いたいだけ言わせておけば、じきに収まりますよ。さあ、もう泣かないで。このままでは貴女の綺麗な瞳が溶けてしまいそうです」


 リファトが優しく微笑みかければ、一緒になって笑顔を見せてくれるエイレーネも、今回ばかりは難しいようだ。暫くして涙は止まっても、花が咲くような笑みはなかなか現れない。


「今日は晴天ですし、まっすぐ帰るのはなんだか惜しいですね。少し遠いですが、別の歌劇場へ行きますか?」


 穏やかでゆったりとした彼の声が耳をくすぐる。そうしているうちにあれだけ昂っていた感情が、なだらかになっていく。エイレーネはすん、と鼻を鳴らした。大泣きしてしまった手前、顔向けできなかったが、落ち着いて受け答えができるようにはなっていた。


「わたし…海が、見てみたいです」

「海?」

「ずっと、憧れていたんです。祖国ではネモフィラを海に見立てた花壇も作ったりして…」

「そうだったんですか。もっと早く聞いておけば良かったですね」

「そんな…海への憧れを忘れるくらい、毎日が楽しかっただけです」


 リファトは俯くエイレーネの両手をぎゅっと握った。


「では忘れないうちに向かいましょう」




 歌劇場の外で待機していた三人は、上演中にも関わらず抜け出してきた主人を見つけ、驚きの声を上げた。


「どうなさったんですか?」

「もしやご気分が悪くなったんですか?」


 侍女達の問いかけに対し、リファトは正直にあった事を話すつもりだった。しかしエイレーネの方が僅かに早く口を開いていた。


「やっぱり海へ行きたいと、わたしが殿下に我儘を言ったのです」


 その言い分を間に受ける者はいなかった。エイレーネという姫は、他人に迷惑をかけるような我儘など言ったりしない。観劇を取り止めて抜け出す、といった非常識な真似をするはずがないのだ。

 説明するのも憚られるような事が起きたのだと、ユカル達はすぐさま察した。


「なんだ、良いじゃないですか!海!行きましょう!」


 こういう時、無理して盛り上げようとする訳でもなく、自然に明るく振る舞えるジェーンがいると助けられた。アリアやユカルでは気を回しすぎて、逆に気まずくなってしまいそうだった。


「振り回してしまってすみません…」

「そんなの誰も気にしてませんよ!ね?アリア。ユカルも」

「はい。久しく海へ行っていないので、私も見たいです」

「俺も二人と同意見です」


 頃合いを見て、リファトが出発の号令をかける。移動中はジェーンが海について熱弁するので、エイレーネも熱心に耳を傾けていた。自ずと小さな微笑みを浮かべる彼女に、リファトはこっそり胸を撫で下ろした。平静を装って慰めていた彼も、実はかなり狼狽していたのである。あんなに泣いて怒ってくれたのは嬉しい限りだが、やはりエイレーネには笑っていてほしかった。




 ベルデ国にはエイレーネが手塩にかけて造った花壇があった。花壇というより一面ネモフィラ畑と表現する方が適切かもしれないが、それだけ彼女は海に強い憧れを持っていたのだ。


「……これが海…なのですね」


 寄せては返す波の音。鼻腔に吹き込む潮風。見渡す限りの海原。絵画からは伝わらなかった本物の海を、エイレーネは全身で体感する。


「なんて素晴らしいのでしょう…!」


 空の青とは違う。それでいて波打ち際は白が混ざった薄い青、地平線へ向かうほどに深みを増す。眩しい砂浜が一際、海の青を引き立てる。それが右を見ても、左を見ても、延々と続いているのだ。

 エイレーネは大きな双眼をこれでもかと輝かせた。星より煌めく瞳と、感動に染まる頬を見れば、彼女の歓喜が手に取るように分かった。吸い寄せられるようにしてエイレーネは一歩踏み出したが、アリアの焦った声を聞いてはっとなる。


「お待ちください姫様っ、そのお召し物は砂浜を歩くのに適していません」


 そうだ、今日は歌劇場に行くからと正装に近い格好をしていた。この姿で砂浜を散歩すれば、靴もドレスも砂まみれになってしまうだろう。アリアとジェーンが頑張って綺麗にしてくれたのを汚してしまうのは気が引けた。


「レーネ。私に掴まってください」

「え……っ!?で、殿下っ!?」


 残念がる彼女を見兼ねたのか、リファトはエイレーネを横抱きにして砂浜へ下りようとした。突然、地面から足が離れたエイレーネはびっくり仰天する。常日頃、年齢にそぐわぬ落ち着きを見せる彼女が、意味もなく口をぱくぱくさせる様子は新鮮である。

 一部始終を目撃していた侍女達は大変興奮しつつも、二人の世界を邪魔をしないよう、目配せだけで語り合うのだった。


「お、下ろしてくださいませっ。重たいですから!」


 エイレーネが必死に懇願する間にも、リファトは笑いながら砂浜を突き進んでいく。


「たまには格好つけさせてください。私も男ですから、妻に良いところを見せたいんです」

「あ、う…」


 リファトが笑顔で畳み掛けると、とうとうエイレーネは抗う事ををやめた。もとより抵抗していたのは言葉のみで、暴れてはいない。

 ここはいっそ腹を括り、絶え間なく打ち寄せる白波に集中しよう。そうでもしなければ、触れている箇所から伝わる彼の心音を意識しすぎてしまう。


「…この国の人間にとって海は身近なものです」


 地平線を眺めていたかと思いきや、不意に綺麗な蒼色がエイレーネに注がれる。彼の瞳は海の色とよく似ていた。いつになく近い距離に、体温が上がっていくのを感じた。


「でも貴女と見る海は、とても特別なものに見えます。同じ海のはずなのに、全然違う景色を見ている気分になるんです。レーネは本当にすごい人です」


 胸がいっぱいになる。己の胸に満ち溢れる想いは、きっとこの海より深くて大きい。でも、リファトがエイレーネを包む愛情はもっと、ずっと……。

 どうしてこんなにも愛おしんでくれるのだろう。どうしたら同じものを返せるのだろう。


「………」

「レーネ?」

「…で、殿下。あの…少し、耳を貸していただけますか…?」


 おずおずとそう切り出した彼女に、リファトは不思議そうにしつつも片耳を寄せる。内緒話だろうか。しかしこの海岸にはリファト達しかいないのだから、声を潜めずとも大丈夫なのだが……などと考えていたら、頬を小さな両手で挟まれた。おや?と思った次の瞬間、リファトの額に何か柔らかいものが触れていた。

 エイレーネが額に口付けしてきたのだと、理解するのにたっぷり十秒はかかった。


「…えっと、こ、これは…早くよくなりますように、というおまじない…で……その、わたしを庇ってできた傷ですし、願掛けを……」


 言い訳だか何だかよく分からない事を口走っていたエイレーネであるが、羞恥に耐えられなくなって顔を覆った。額に接吻なんて家族同士で普通に行う事なのに、可笑しいくらいに緊張してしまう。

 口付けされたリファトはというと、束の間、思考が完全に停止していた。顔中にどっと熱が集まり、心臓が暴れるも、頭の中は真っ白であった。彼女はなんという事をしてくれたのか。


「……レ、レーネ…?」

「………」


 エイレーネの顔は二枚貝みたいに塞がれ、窺うことができない。一度の呼びかけでは微動だにしなかった。


「レーネ…」

「………」

「…エイレーネ」

「……っ」

「貴女の顔が見たいです」


 恐る恐る、エイレーネは両手をどけた。彼女は耳の端まで真っ赤になっていた。じいっと見詰められているのが分かり、もう許してほしいと、心の中で訳のわからぬ懇願をする。


「…私も…良いでしょうか…?」


 何を、と尋ねる必要はなかった。どうしてか、聞かなくてもエイレーネは答えを知っていたのだ。甘く掠れた囁きに、彼女は瞳を伏せることで応えた。長い睫毛が緊張と期待に震える。


 惹かれ合うように重なった唇が熱い。あれほどうるさかった鼓動は何処へ消えたのだろう。波の音しか聴こえない。

 ただ、幸せだと。はっきり分かるのはそれだけだった。




 アリアとジェーン、それからユカルの三人は互いを肘で突き合っていた。馬車まで戻ってきた主人達の様子がいつもと違うので、誰がそれを問い正すのか押し付けあっているのだ。どうにも二人が艶っぽいような雰囲気を醸し出している為、迂闊に踏み込めなかった。あのジェーンでさえ、だ。


「…ここの海はいかがでしたか?姫様」


 結局、思慮深いアリアが当たり障りの無い質問をすることで決着した。

 顔の赤みが少し残るエイレーネは、年下の侍女の前で腑抜けた姿を見せまいと、努めて普段通りの声を出そうとする。


「想像以上でした。とにかく広大で、圧倒されてしまいました。潮風を浴びると髪がべたべたする、というのは本当だったんですね。知識として知ってはいたのですけど、やはり実際に体験してみるのは大事ですね。そういえば、貝殻を耳に当てると波音がするといのも検証したかったです」


 しかし彼女は妙に饒舌で、何かを紛らわせようとしているみたいだった。とはいえ、新しい発見をした子供のように語る様は微笑ましく、リファトなどそれはもう愛おしげに見つめている。ユカル達は賢明にも口を閉ざし、静かに成り行きを見守った。

 直向きすぎる視線を感じていたエイレーネは、頬を赤らめながらぽそぽそと言葉を紡ぐ。


「…リファト殿下。また、連れてきてくださいますか…?」


 いじらしい頼みに、彼が否やと言うはずがない。


「もちろんです。レーネが望むだけ、何度でも。どこへだって行きますよ」


 今度、海を見に行く時は、並んで歩ける靴で来よう。エイレーネはそう心に決めたのだった。

【補足】

二人は結婚式で誓いのキスをしていません。リファトの方が「こんな男とさせられては気分が悪いだろう」と考えたからです。

なお、お姫様抱っこで男を見せたリファトですが、翌日には筋肉痛に悩まされます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちゃんと筋肉痛になるのがまたすごくよいですね…! 全身筋肉痛になっても男を見せねばならぬ時がある…!! 三人とも、帰ってからそりゃもう盛り上がったでしょうなぁ…wwww
感想一覧
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