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イッシンジョウノツゴウニヨリ ~逆ハーレムを築いていますが身を守るためであって本意ではありません!~  作者: やなぎ怜


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 アレックスにメッセージを送り、確認を取る。ベネディクトがニセハーレムのメンバーとなったことを告げれば「なんでそんなことになってんの?!」とおどろきの声――実際はテキストだが――が返ってくる。


『ごめんだけど明日の朝はベネディクト先輩に迎えに来てもらうことになったから。くわしくは昼食のときに。食堂で落ち合おう。あとそのときに先輩も合流する予定』

『オッケー』


 テキストメッセージでのやり取りなので、アレックスの調子は伝わってこない。それがなんとなくレンを不安にさせる。明日の午前の授業はどれも彼と被りがない。明日、アレックスと顔を合わせるのは食堂がはじめてになりそうだ。


 不安の理由は他にもあった。なにせベネディクトはアレックスを下心アリとみなしているのだ。しかもベネディクトは可憐な容姿に反してやや思い込みの激しいところがあり、言い方も直截なものが多い。そもそも奨学生(スカラー)を「お高くとまってる」などと評していたアレックスと、当の奨学生(スカラー)であるベネディクトが顔を合わせて、反目し合わないかが不安だ。


 だがベネディクトの提案も一理ある。彼をニセハーレムに加えれば、アレックスのときよりもレンにアプローチするハードルは上がるだろう。ベネディクトはあの美貌に加え、奨学生(スカラー)にして学年主席――主席であることはあの後イヴェットに確認して事実だと知った――。そんなベネディクトに勝ると自負できる男子生徒が、どれほどいるか。


 男子生徒除けの効果はそれなりにあるように、レンには思えた。……実際どう転ぶかは、わからない。アレックスのときのように火に油を注ぐ結果になることもあり得た。


 ベネディクトはアレックスのときの結果を、見通しが甘いし態度も隙だらけだ、と一刀両断した。アレックスに下心アリと言い切ったときのように、レンに対してもベネディクトは容赦がなかった。


「『今はふたりの時間を大切にしたい』という言い分はまあまあ、と言ったところだ。しかし先延ばしにしているに過ぎない言い訳は落第だな。おまけに君の態度が少しも変わっていないのでは、付け入る隙があると誤認させても仕方がない。ハートネットへの態度も、他の男たちに対する態度も、だ。すべて赤点。……男どもを蹴散らしてやろうという気は本当にあるのか?」


 レンはぐうの音も出なかった。ベネディクトの指摘があまりに正確で、真っ当なものだったからだ。


 そう、レンはアレックスという――ニセの――恋人を作った割には、彼とは別段ブラフのためのデートなどもしていない。なぜなら今のレンにとっては恋愛よりも勉強のほうが大事だからだ。そして学内でも友人だったときと変わらない態度でいた。……当たり前だ。レンとアレックスはずっと友人なのだから、態度が変わるはずもない。


 そして男子生徒たちをどちらかと言えば避けているていどのレンの態度も、曖昧でよくないとベネディクトは言う。レンお得意の曖昧な笑みは猪突猛進な男子生徒には好意を抱かれていると誤解させるものだ、というのがベネディクトの主張だった。


「イヤならイヤとハッキリ言え。迷惑なら迷惑だと意思表示をしろ。君から言わなければなにも伝わりはしない。ハートネットに代わりに意思表示をさせても、君に気のある男たちは納得しない」

「ハイ……おっしゃるとおりでございます……」


 今度はレンがしおらしく――というか、しおしおになる番だった。年下の男子高校生に説教をされては、しおしおになってしまうのも無理はない。


 しかしベネディクトに赤点をつけられるのは、当然と言えば当然だった。だからレンはぐうの音も出なかったわけである。


 だがベネディクトはそんなレンを見て少し言いすぎたと感じたらしい。またわざとらしい咳払いをしたかと思えば、じっとしおれているレンを熱っぽい目で見つめる。……レンは反省の念からうつむいていたので、そんなベネディクトの視線には気づかなかったが。


「……まあ、そんな状況も僕がそのニセハーレムに加われば変わるだろう」

「……だといいんですけど」

「信用していないのか?」

「滅相もございません!」

「当たり前だ。この僕に勝ると自負するほどの男は、この学校にはそうそういない。大船に乗ったつもりで僕に身をゆだねて欲しい」


 レンはまたベネディクトの自信たっぷりな――たっぷりすぎる――態度に舌を巻いた。ここまで言い切れるのはすごい。レンなど自己肯定感が低い人間からすれば、ベネディクトのそれはエベレストよりも高いものに見えた。それに、失敗を恐れていない堂々たる態度。すごすぎる、とレンは感心しっぱなしだった。


「でも本当にいいんですか? 私のハーレムメンバーになるなんて役を引き受けちゃって……」

「借りを返したいし、君の助けになりたいのだと何度も言っているが?」

「ちゃんと聞いてますよ! でも、ベネディクト先輩ほどの方なら、引く手あまたでしょう? そんな先輩が私なんかのハーレムに加わるって、違和感すごすぎないですか?」

「……自分を貶めるような言葉は感心しないな」

「でも事実です。客観的に見てなんでそうなったのかって、謎でしょう」

「先ほども言ったが――恋愛は理屈じゃない。君に助けられて惚れたと言えば、納得する者はするだろう。しない者は恐らくどんな理由であったとしても納得しない」

「そういうものですかね……」

「そういうものだ」


 結局レンはベネディクトの主張に押し切られた。そしてそのままいかにベネディクトとレンがラブラブであるかのアピールをするかという話になり、説得力を持たせるために明日の朝はベネディクトが登校の迎えに来ることになった。――そして話は冒頭へと戻るわけである。


 魔力がなくても使えるスマートフォンを手に、レンは自問する。――本当にこれでよかったのか、と。結局ベネディクトに流されてるじゃないか、と。そしてそれが一番いけないことだと他でもないベネディクトが言っていたのではなかったか、と。


 レンは自問するが、簡単に答えは出ない。そして勉強は抜群にできるが賢いというわけでもないレンは、思考することをいったん放棄する。答えを出すのはベネディクトの論がどういう結果を生み出すのか見届けてからでもいいと思ったのだ。


 ひとまずの問題は明日。アレックスとベネディクトが顔を合わせたときに、どのような化学反応が起こるか、だ。もしケンカに発展しそうだったら、レンが仲裁をしなければならないだろう。そう思うとどうしても憂鬱になってしまう。杞憂に終わればいいが、と思いつつレンはスマートフォンをベッドに放り投げると、明日の授業の準備に取り掛かった。

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