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囚われの姫


その昔、身体が弱い姫がいた。

息をすれば喉が張り裂け、歩くと骨が折れ…。

生まれてこの方外へ出たことがない。



一度でいいから太陽を浴びたい、


一度でいいから地に足をつけたい。


そしてあわよくば、

かっこいいお付きの騎士様と恋をしてみたい…………。


そういった想いが頭に駆け巡っていたその時、下の階から声がした。



床に耳をつけて聞き耳を立てる。



………どうやら医師と王が会話をしている様子。


そしてその会話内には驚きの内容があったーーーーーーーー。




「姫の寿命は持ってあと一年」




ショックで強く呼吸をしてしまう。

そして吐血。


いつものように、小さくゆっくりと呼吸を…と集中する。



そうしている内、ドアからコンコンとノックの音が。


「どうぞ」と姫は素っ気なく答えた。



そこには案の定、

王が立っており真剣な眼差しでこちらを見ている。


先刻の内容を伝えに来たというのだろうか。

とは言うものの、動揺を隠しきれてはいない。

王は迷いごと等があると手を後ろに組む癖があるのだ。



そして息を呑み、王は言った。




「何でも一つ、願いを叶えてやろう」




哀れみの慈悲だろうか。


私はあらゆる感情がどっと押し寄せてきた。



そして気づけば、口が動いていた。




「外へ出たい」




王は悲痛の表情をした後、


「わかった…少し考えてみよう」

と言いその場を後にした。



私は全てを諦めた。



あの言葉を発してただの一度も王は聞いてくれたことがない。


またいつもの通り適当な物を渡してきて遇らわれるのであろうーーーー。










数日後、またドアからノックの音が。



「何…?」と弱々しい声で私は答える。


扉は開き、

そこにはボサボサ頭の隈が酷い頼りなさそうな男騎士がいた。



信じられなかった。



王はこんなのを私に寄越したのだろうか…。




男騎士は何やら言いづらそうにごもごもしている。


私はギロっとした目で彼を見た。


男騎士はヒッと小さく声を出した後、漸く口を開いた。



「この城は魔物に現在進行形で襲われており、姫の身が危ないとのことでここへ来ました…」




私は目を見開いた。



身が危ないと王から聞いたのだろうか。


そして今ここには王がいない。ということは…………。


騎士は私の表情から察したのか、残念ながら…と低い声で報せた。





プツン、と糸が切れた音がした。





「私は産まれてから今までずっと不幸…。外へ出ることもままならず…これからの人生もどこかで幽閉されて生きていく…」


気づけばそんなことを口走っていた。



そんな時、

連絡通路の奥から魔物が押し寄せてくるのが見えた。


男はなにを思ったか鎧の左籠手を外し、

魔物たちに左腕を向けた。

手の甲には文字のようなものが刻まれていた。




「”風“のルーン」




男がそう言った途端、

全てがブワっと吹き飛んだ。


何が起こったのかわからず私は呆然としていたが、

塔と城との間が隔絶され外の風景が見えるようにーーーーーーー。


生まれて初めての“外”を目の当たりにし自然と涙が出てきた。





風がなびく風穴の前で男は言う。





「外へ出るだけ?もったいない。この広大な世界を共に冒険しませんか」





そうして手を差し伸べてきた。



私は

「うん」

と一言答え、その手を取った。







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