001日目:夕方「火を焚いて水を煮沸消毒し寝床を作る」
「さて、焚き火を起こすのは良いがどの方法で行くべきか」
大きめの足に腰掛けて俺は左腕に装着したスマホを操作して録画しておいた火起こし動画を流し観していく。ヒモがあれば弓錐式火起こしが一番楽だがヤシの茎ではしなやかだが長さがないのと強度に不安がある。蔓は頑丈だが若干太くしなやかさに欠ける。
「ここは定番の錐揉み式で行くか」
錐揉み式火起こし……火切り棒と呼ばれる細長い丸棒と、火切り板と呼ばれる丸棒に合わせた穴と火種を落とす溝を端に作る板の2の道具で火を起こす最も有名な火起こし方法だか、同時に一番難しい方法でもある。
「火切り棒はこの一番硬いやつで良いか、火切り板はこの柔らかいやつで」
俺は乾燥させておいた草木の中から硬さの違う二種類の枝を手に取って硬い方を丸棒として石で余計な小枝を切り飛ばして節を擦って滑らかにし、柔らかい枝の方は直角に樹皮を削って木部を露出させ、端の方に丸棒に合わせた穴とその穴に三角形が丸に刺さったかのようなV字の溝を掘った。アナにに合わせて丸棒を押し付けるように回転させれば摩擦で柔らかい木部が削れて熱が発生し火種が出来る仕組みだ。
「コツは回転数より下方向に押しつける事を意識して熱を逃すなだったか」
この旅行が開始される数ヶ月の間に俺はインストラクターを頼んでキャンプについて様々なことをレクチャーしてもらっていた、さっきの言葉もそのインストラクターの教えの一つだった。
宝くじの大金を使って高価なキャンプ道具を購入して楽しむのも有りだが、仕事をしなくてもよい状態の暇つぶし目的でキャンプに挑戦しようと思ったので道具の使い方もそうだが、道具のない原始的なやり方でもキャンプ出来るような方法を教えてくれる人を探してレクチャーを頼んだのだが、その中の一つにマッチやライターを使わずに行う火起こしを一通り教わっていた。
「よし、いくぞ!!」
火切り板を足で抑え、手の平を合わせて前後にこすり合わせて間で抑えた火切り棒を回転させながら、こすり合わせた手の平を火切り棒を下に押し付けるように下がらせていく。下まで行ったら素早く上に戻ってまた手の平を擦りわせるのを続けていく。
火種が生まれずつい棒を離して摩擦熱がドレぐらい熱いか確かめたくなるがグッとこらえて擦り続けると腕がしびれてくるがそれでも擦り続けると穴から煙が出て赤熱した火種が溝から削り落ちてくる。
「やった!」
喜んで思わず一息つきそうになるがすぐに生まれた火種を解しておいた草や木をでくるんで息を吹きかけて火種が草木に燃え移るように調整する、やがて手の平の草木が紅く燃え始めると火を少しづつ大きくしようと小枝を加えていき、火種を押しつぶさないようにキャンプファイヤーのように大きめの枝で周りと上部を囲んでいき、空気を遮らないように小枝や松脂でよく燃える松ぼっくりを加えていく。
「ここまで大きくなったら風で消えないからいいかな?」
太い枝にも火が燃え移ると焚き火らしい焚き火になったので今度は石で周りを囲って簡単な竈にすると竹水筒モドキに水場の水を入れて焚き火にかける。表面が真っ黒になるだろうが、竹が燃える温度になる前に中の水が熱を奪って煮沸されるだろう。何度も使えないがとりあえず今は使い捨てるつもりで煮沸しよう。
時刻は夕方の5時だがまだ明るい、俺は火を燃やしたまま周囲から寝具代わりに竹の落ち葉を多めに集め、斧で手頃な太さと長さの木を切り出しては岩と岩の隙間の上部に乗せて屋根代わりにしていく。
ついでに色々な草を適当に集めて行くと藁っぽい草も見つけたので多めに取っておく。
「暗くなってきたしこれぐらいでいいか」
6時をすぎると日も沈み、焚火の火だけが辺りを照らしていた。スマホのライトもあるがなるべく節約しよう。焚火の前に戻ると竹水筒モドキから湯気が出て煮沸消毒ができたようだった。
フキノ葉で火傷しないように竹水筒モドキを持つと、竹の葉集めをしながら切り出したもう一つの竹水筒モドキに移して熱を冷まし、空いた竹水筒に水を入れて再度焚火にをかける。
湯冷まししながらヤシの実を両手で抱えて岩に叩きつけて割っていく。斧でやってもいいがヤシの実が弾け飛びそうだから確実に割っていこう。俺はそんな事を考えながら割れたヤシの実に指を入れて中身を食べる。
「あーうまい!考えてみれば昨日から何も食べてないからなあ」
ヤシの実の中身は半透明と言うか白く濁った果肉がプルプルしていて、あまり甘みがなく脂っこいが空腹の俺には最高のご馳走だった。指だとキレイに食べれないので竹を切り出して竹ヘラを作って果肉をこそげ落としていく。
二個目のヤシの実を食べ終わり、湯冷まししたお湯を飲んでようやく一息着けた気がしてきた。
飯が終わると俺はいろんな草木を焚火に混ぜてわざと煙を発生させて竹の葉を燻していく。
フキノ葉をうちわのようにして煙を送り込んで寝床となる竹の葉に潜む虫を追い出しにかける。
服がアレば一緒に燻すところだが俺には腰ミノしかないので全裸になって一緒に燻す。
燻し終わると寝床となる隙間に敷いていき、ストローぐらいの枝の皮を向いて先端を露出させて歯ブラシにして軽くささくれた部分で歯を磨き、海に入って体を洗い、湯冷ましした水で頭と顔だけ塩水を洗い落とし、首から下は煮沸してない水で洗い落とす。
「草草履を作りたかったがもう寝るか」
フキノ葉のサンダルは夕方にはボロボロで最後は足の親指で挟んでるような状態だったので眠くなるまで藁草履でも作ろうかと思ったが俺は焚火に枝を継ぎ足して岩の隙間に入って竹の葉の布団に包まれて眠りに入った。
ダイザン・リキの所持品
スマホ
ヤシの腰ミノ
フキのサンダル→ボロくなって焚火行き
良い感じの枝
割った石
フキのフロシキ
乾いた草木
焦げた竹水筒モドキ
湯冷ましに使った竹水筒モドキ
竹ヘラ
適当な石斧
藁
燻製済みの竹の葉ベッド。