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3:サキュバスとダンジョン


 校門出てすぐの交差点、学校の向かいにある管理局の施設。そこが異界(ダンジョン)の入口。

 異界(ダンジョン)とは空間の裂け目を入り口とする異空間で、管理に大規模な施設は不要だって習いはしたけど、この交番みたいな建物を見るとちょっと残念な気持ち。

 これから冒険するんだって気にならないというか……

 安全な初心者異界(ダンジョン)で、冒険も何もないんだけど。



(それでも、約束の一時間前に来るぐらいは期待しちゃってるんだけどな。)



 あれからなんだかんだ言いつつ、結局初めての探索を期待しちゃってる。

 もし猛の言う方法でちゃんとレベルが上がるなら、Sランクスキルの探索者としてチート無双!なんてこともあるかもしれないし。

 なかなか時計の針が進まない。待ち遠しい。



(……どうせ安全な異界(ダンジョン)だし、ちょっと下見しちゃおうか。)



 待ちきれなくなって、施設の中へ。

 


「探索の申請ですね。かしこまりました。

 探索者補助端末(ステータスフォン)をこちらに、はい、完了です。

 ステータスは常にこちらで確認しておりますので、もし危険な状態になってもすぐに救助が向かいます。

 それでは、探索をお楽しみください!」



 改札機の様なモノに端末をかざし、奥の部屋へ。

 なんだか大仰な設備が配置された円形の空間、その中心の空間が裂けていて。

 その向こうには森だろうか、木々が茂る空間が見える。

 外側からは交番みたいに見えてたけど、入ってみれば雰囲気がある。

 鼓動が高鳴る。ようやく、冒険するんだって気になってきた。




 裂け目に飛び込めば、瞬きの間に景色は一変。



(すごい、本当に教科書で見たみたいな……)



 生い茂る木々、空気がさっきまでの世界と違って澄んでいる。

 呼吸するだけで力が湧いてくるような。

 異界(ダンジョン)の中には魔力が満ちているから、それのせいだろうか。

 気がするどころか本当に力が湧いてくる。



「あ……居た、『牙うさぎ(ヴォーパルバニー)』!!」



 茂みから顔を出したのは大きな牙をむき出しにしたうさぎ。

 ゲームで言うとスライム、探索者じゃなくても勝てる様な魔物だ。

 とはいえ一応、生身にあの牙が刺されば痛いだろうし──



「──魔術装具召喚(マギア・ロード)!」



 その声を端末が認識し、足元に術式が展開されて。昇る光が身体を包む。

 光が散れば、身に纏うローブと三角帽子、それと杖。わかりやすい魔導士感。

 召喚したのは端末に登録されていた魔術装具(マギア)、つまり初期装備。

 防御力は低そうなままだけど、武器があるだけ十分だろう。

 本当は魔術を使うための装備なんだろうけど……使い方はガイドに無かったし。



「どうし……って、まだ準備できてない!!」



 しかしうさぎはお構いなしに牙を光らせ飛び掛かってきた。

 


「っとりゃあ!!」



 反射的に、杖を思いっきり振り回して反撃する。

 すこーんと軽快な音と一緒に吹っ飛ぶうさぎ。

 二、三回跳ねて倒れて、ぴくぴくしたらもう動かず、体が魔力になって散る。

 ……スライムみたいな魔物とは言え、まさか一撃とは。



「思ったよりも弱……お、魔石!

 ちっちゃいけど、幸先良い感じ。」



 うさぎからドロップしたのは小さな藍色の宝石。

 初心者異界(ダンジョン)のドロップアイテム何て大抵売れやしないけど、この魔石は別。

 燃料や電池の様な物だからちゃんと値段がつく上に殆どの魔物からドロップする。

 一般探索者の主な仕事は魔物を狩り、この魔石を売る事なのだ。

 と言ってもドロップ率は低いから、時給で言えばバイトと変わらないけど。



「時間もまだあるし、もうちょっと奥に行ってもいいかな。」



 時計を見ればまだ10分しか経ってない。

 魔物もあの程度ならどれだけ来たって大丈夫。奥へ、森の奥へと歩いていく。

 進むほどに茂みは深く、木は高く、陽の光がか細くなっていく。

 

 茂みが揺れる。音はさっきよりもずっと大きく、木々まで揺れ始めた。

 こんな所に出てくる魔物はうさぎか小鬼ぐらい。

 そんなに大きい魔物なんて出てくるはずがないのに──



「────触手!?」



 飛び出したのは、巨大化したイソギンチャクの様な魔物、『ローパー』

 でも、知っているのはこんな熊みたいな大きさじゃない。

 もっと子犬の様な大きさで、うさぎにも狩られる様な魔物なのに。


 

「まさか変異種?……」



 その異界(ダンジョン)のレベルから逸脱した強さを持つ突然変異。

 それと出会うのは宝くじを当てる様なものなのに、初めてで遭遇するなんて。


 触手の束の中心、一つ目がぎょろりとこっちを見つめている。

 これだけはわかる。絶対、ヤバイ。

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