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0:サキュバスの始まり

 Sランク、そのSが意味するのは悲しみ(Sad)だった。

 だって強くも無いのに代償だけがある。それは────



「銀髪で、眼がぱっちりしてて、おっぱいも大きいのが良いって言ったけど」



「…………オレがそうなりたかったわけじゃない!!!」



 ──オレが女の子になる事だった。






 世界に異界(ダンジョン)が現れてから五十年、異界(ダンジョン)は人々の生活に欠かせない物になった。

 かつては常に死と隣り合わせだった探索者という職業も、異界管理局による安全管理と法整備が行き届いた今では、十六歳になれば誰だってなれる。

 

 そして今日はオレ、由良(ゆら)夏希(なつき)の十六歳の誕生日。

 念願の探索者登録は大げさな儀式なんかもなく、手続きは1時間もかからず終わって、今ちょうど帰宅したところだ。



「これでオレも、探索者なんだ……」

 


 自室の天井に掌をかざすと、ぼんやりと紋章が浮かび上がる。

 異界(ダンジョン)を探索するには、はびこる魔物を倒すために魔力が必要だ。

 そのため、探索者として登録する時には掌に魔法因子を移植する。

 実感はあまりないけど、これで自分の体に魔力が巡るようになっているらしい。

 


「これが探索者補助端末(ステータスフォン)で、こっちがガイドと」



 スマホに似た端末と、探索者ガイドと書かれた冊子を取り出す。

 探索者ガイドによれば、この端末が探索者としての証明書になるらしい。

 

 側面のスイッチで端末を起動した。点灯した画面にはアイコンが並んでいる。

 異界(ダンジョン)マップ、アイテムボックス、ステータス等々と書かれているのは、アプリの様なものだろう。操作法もスマホとほとんど変わらないようだ。

 つまりこのステータスアイコンに触れれば、自分のステータスが表示される。


 ──ドキドキしてきた。

 初期ステータスなんてほとんど決まってるけど、固有スキルはその後の探索者人生を大きく左右する。

 大抵はCランクで、Bランクも学校に数人いるかいないか、Aランクならそれだけで最上位の竜滅等級(ゴールドクラス)になれるかもしれない。


 どうせ大したことないってわかってるけど、それでもちょっと期待してしまう。

 指先が震えだす。心臓が高鳴る。



「……来い、Aランク!!!!」



 指紋がくっきり残るぐらい思い切りアイコンを押す。表示されたステータス、それは──



【LV】:1

【HP】:200

【MP】:300

【筋力】:7

【体力】:7

【魔力】:50

【俊敏】:9

【魔防】:42





【固有スキル】:ランク?/種族変化・???




「なにこれ、ランクがハテナ?」



 アルファベットがある筈の部分には?が書かれ、その先にも?がある。

 意味不明の表示に困惑しながら探索者ガイドのページをめくる。

 確か、スキル表があった筈。そこを見ればこの表示の意味も……見つけた。



「なるほど。まだどの種族になるかわからないんだ。」



 種族変化スキルとは、異界(ダンジョン)の異種族の特性を手に入れるスキルらしい。

 変化は魔法因子が移植されてからゆっくりと進行していく。

 スキルの判定は所持者の魔力とつながった端末が行っているため、変化しきってない状態だとまだ詳細がわからないのだ。



「そう言えば、エルフっぽい探索者とか居たなぁ。」



 いつかニュースで見た有名探索者は、耳長で超がつく程美形の人だった。

 あの人は多分、種族変化・エルフのスキルを持ってたんだ。



「じゃあ、オレも……」



 あんな風な美形になって、女子からちやほやされまくり。

 チートな種族スキルでダンジョンも楽々攻略して、メディアにも毎日活躍を流されちゃって、現代の英雄みたいに言われちゃって。

 もし、そうなれたら。



「銀髪で、眼がぱっちりで……おっぱいもおっきいのが良いな。」



 昔の日本人は殆ど黒髪だったらしいけど、魔力の影響で色んな髪色の人がいる。

 もしかしたら、そんな彼女が出来ちゃったりしても夢じゃ──



「まあ、夢だよね。」



 ガイドにはこうも書かれている。

 ランクがよっぽど高くない限り、見た目が大きく変わる事は無いって。

 エルフのスキルでもランクが低ければ少し耳が尖るだけで、イケメンに成ったりはしないんだろう。ゴブリンとかスライムになっても安心ではあるけど。



「イケメンじゃなくても良いから、そこそこ強めの種族だったらなぁ。

 ……ヴァンパイアとか、ないかな。」



 今は期待しすぎず、変化が起きるのを待とう。そう言い聞かせて眠った。






 でもやっぱりワクワクして、上手く眠れなくて、起きた時にはもうお昼。

 慌てて鏡の前に立って、そこで気づいたんだ。自分が女の子になっている事に。



「意味わかんないって。なんだよこれ!」


 

 女の子になる種族ってなんだ。そもそも、姿はほとんど変わらない筈なのに。

 ともかく混乱してても始まらないし、まずは確認だ。端末を取り出して、自分のステータスを確認する。

 やっぱり?になっていた部分に種族名が書かれている、けど。



「──嘘、冗談でしょ?」



【LV】:1

【HP】:200

【MP】:700

【筋力】:7

【体力】:7

【魔力】:233

【俊敏】:9

【魔防】:211



【固有スキル】:Sランク/種族変化・サキュバス




 Sランクの、サキュバス。それがスキルの正体だった。Sランク何てほとんど都市伝説で、そんなの存在し無いと思ってたのに。

 最強ランクの種族変化スキルで、身体がサキュバスその物になったって事!?

 顔を上げて鏡を見直す。やっぱりそこには女の子。

 自分の理想の女の子の姿になるのは、まさにサキュバスだなと思うけど。



「オレがそうなりたかったわけじゃない!!!」



 男としてそんな女子と付き合いたかったのに、この身体じゃ……

 いや、でも、レベルを上げたらスキルを制御して元の体に戻れるかもしれない。

 そもそも、端末で元に戻る方法が調べられるかもしれない。

 もう一度画面を見つめれば、固有スキルの下に詳細と書いてある。

 そこを開くと、スキルのより詳しい情報が現れた。



『スキルによるバフ一覧』

・魔力値が極大上昇する

・MP値が極大上昇する

・肉体がサキュバスに完全に(・・・)変化する

・『特性:レベルドレイン』を習得する



 確かに、魔力とMPが昨日よりもはるかに強くなっていた。

 女の子になる以外は、流石Sランクって感じだ。

 それよりも完全にってなんだ?もしかして、もう戻らないって事?


 情報はまだ終わりじゃない。下に、スキルによるデバフが表示されていた。



『スキルによるデバフ一覧』

・討伐による経験値の取得を無効化する

・アイテムによる経験値の取得を無効化する

・『レベルドレイン』以外による経験値の取得を無効化する



 つまり、魔物を倒してもレベルアップが出来ないという事だろう。

 絶望的にも思えるデバフだけど、意味は分かる。経験値の代わりに、レベルドレインを使って強くなればいいんだ。


 身体の変化に戸惑っていたけど、実はSランクスキルの恩恵を見て少し前向きになっていた。

 女の子になっちゃったけど、代わりに最強の探索者になれるかもしれないって。

 

 Sランクスキルで使える技能なんだ、レベルドレインはチートに決まってる。

 レベルドレインの文字を押すと、今度はその詳細が表示された。



『特性:レベルドレイン』

効果:対象の経験値を吸収し、術者の経験値とする

条件:対象が異性であり、使用者に生殖本能を刺激されている場合、接触時に発動する

 



 効果は予想通り。

 でも、発動条件を見てチートかどうかなんて考えられなくなってしまった。


 

「もしかし、て……」



 異性、って事は今自分はサキュバスだから男性限定で。

 生殖本能、の意味なんて一つしかないし。

 接触、がトリガーになるならつまり。



「……えっちな事されなきゃレベルが上がらないってこと!?」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公がサキュバスとありますがヤギの角や尻尾、コウモリの羽などありますか? サキュバスと言われれば大抵は上記の特徴をイメージするのですが?!
[一言] 面白そうです! これからの展開に期待ですね(≧∇≦)
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