日常が終わった日
「おはよー。」
「おは。」
俺はいつもと同じ友人に同じ挨拶をし、いつもと同じ学生生活を開始する。退屈な授業は眠気を誘い、どうにか起きていようと漫画を机の下で読みながら授業に耳を傾ける。
周りが静まりかえっていることに気付き、顔を上げると、教師が俺の横に立っていた。俺は申し訳なさそうに、頭をさげ、漫画を机に入れる。教師は何も言わずに授業を再開した。
ほとんど喋ったことのない片思いの女の子のほうをちらっと見るが、特に何も思っていないように黒板のほうを見ていた。まぁ俺に興味があるわけでもなしに、気にするわけもないか。
昼休み、いつものメンバーである金子と知憲と一緒に弁当を食う。高校二年のいつもの日常。教室には俺が片思いしている女の子とその友達、あとは2グループが飯を食っており、後の奴らは学食に行っているようだった。
教室には10人程度。男女比で5:5だ。ここでマッチングでもして、告白出来たらと思うが、その子に対してはどうしても告白が出来なかった。中学時代は簡単に告白したりされたり、付き合ったり、別れたりということがあったのに、その子に対してはなぜか臆病になってしまっていた。まぁ俺が今まで接してきた女性の中で、断トツに俺の好みだったということもあるのだろう。どんな女優もモデルも彼女には俺の中では敵わないと思っている。俺の中ではだ。
「おい、なんか話しろよ。」
知さんが言う。こいつは急に俺をいじろうとする。
「シヅキはあの子のことを考えてるんだろ。夢中なんだろ。あの子に。」
金ちゃんも便乗しようとする。
「うるさい。聞こえる。」
俺は二人をスルーしようとするもニヤニヤした二人は、
「さっさと告白しろよ。中学の時のシヅキはどこに行ったんだ?教室のど真ん中で大声で告白してたろ。見事にフラれてたけど。」
「あーあれな。速攻フラれてたよな。そのあと便乗した奴が同じ告白して、成功してたな。」
金ちゃんが笑いながら言う。
「あの子は変わった子だったんだ。噂じゃ外国人が好きで日本人には興味がないと。」
「いっつもシヅキは対して関わりもない子に告白してフラれているよな。そんで関わりのある子からは告白されている付き合っていると。」
「いっつも好きでもない女と付き合ってるもんな。しかもギャル。」
「付き合ってみたらいい子かもしれないじゃんか。まぁたいてい逆にフラれているけど。告白してきてフルってどういうことなの。」
「重いから。」「重いんだろ。」
二人が声を合わせて言う。
「シヅキは束縛が凄すぎる。」
「男と喋ってるだけで不機嫌になるもんな。」
「・・・やきもちくらいやくだろ。」
「そういうレベルじゃないんだよ。」
いつもと同じ、たわいもない話をし、時が過ぎていく。ちなみに俺達は中学からの腐れ縁というのもあるが、三人とも麻雀が好きで、遊ぶときはたいてい麻雀だった。かといって引きこもり気質というわけではなく、まぁ俺は引きこもり気質だが、俺は陸上部で短距離エース、知憲はダンス部部長、金子は水泳部エースという位置にいる人間だった。知憲はダンス部ということから、男女ともに交友関係は広く、金子はそんなに異性に興味はなさそうなものの、二人ともモテた。俺もぼちぼちだが、基本的に何かで関わりがないと、女子と話すことは無かった、知さんのコミュ力がうらやましい。
「さて、トランプでもやるか。」
知さんが急に言い始める。
「トランプか、大富豪?ポーカー?ブラックジャック?」
「大富豪だろ。」
そう言った瞬間、教室内がゆがむ。
そして、景色が暗転し、俺は意識を失った。




