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45 門前の狼

 一方その頃、顔琉達は壺関城に着いたものの夜更けになっていた。当然、城門は閉ざされ、中に入ることなどできないのだが、厳戒態勢が敷かれているのか門番の姿が見える。

「おう、門番が立っておるわい。奴らに頼んで中に入れて貰おうか」

 歩き疲れた粛がふて腐れて顔琉に苦言を呈す。

「何言ってんだ。割符も持ってない俺達を、夜の夜中に入れてくれるもんか。爺さん、アンタとうとうボケたのか」

 粛が言う割符とは通行手形のような物である。尤も、戦時下ではそんな物、あったとしても怪しいものなのだが。しかし顔琉は委細構わず突き進む。案の定、二人の門番に止められた。

「待て待てえ。ここをどなたのお城と心得る。恐れ多くも袁紹様の族氏、并州刺史は高幹様のお城であるぞ。頭が高い。控えんかあい」

「随分威勢が良いのお。すまぬがその高幹様に取り次いでくれんか。白狼山の顔狼牙が来たとな。なに、言えば分かる。伝えぬとお主ら、手柄を棒に振るぞ」

「誰やねん。ナントカ山の顔ナントカって。けったいな爺いやなあ」

 すると、もう一人の門番が制した。

「待て、朗郎。なんかその名前、聞いたことあるでえ。ひょっとするとこの爺さん、高幹様の知り合いかも知れへんで。一応、守備隊長に聞いてみようやないか」

 そうこうする内に守備隊長が血相を変えて現れ、直ちに高幹を呼んでくるので待っていて欲しいと言って再び城内に消えた。すると先刻の門番二人が遅れて現れ平身低頭した。

「えろうすんまへん。貴方様があの顔狼牙とは露知らず。僕ら、高幹様の忠臣中の忠臣、沈伸、朗郎いう者だす。今後ともご贔屓に」

 そう言うと守備隊長に怒鳴られつつ、二人も城内に入っていった。待っている間、粛が青ざめて顔琉に問い質した。

「ア、アンタ、あの黒山の顔狼牙だったのか。なんで今まで隠してたんだ。詐欺だ」

 顔琉は嘆息して首を振った。

「顔狼牙など会うたこともないわい。高幹に手っ取り早く会うための方便じゃよ。少しは頭を使え」

 いや、待て待てと、粛は納得いかない。名を偽って高幹に会うのなら他の誰でも良いではないか。やはりこの老人の正体はあの悪名高い顔狼牙。そう考えた方が説明がつく。すると額彦命が聞いてきた。

「粛さん、顔狼牙って、一体何者か?」

「ああ、額彦命は知らなくて当然だよな」

 粛は子供の頃に聞いた話を思い出しつつ説明した。


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