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43 友と家柄

「延津に送られた時もそうだ。俺の上司は審配子飼いの将だったが、奴ら、俺を人としてさえ扱わなかった。大方、俺の口を封じる肚だったんだろ。所詮、袁紹軍じゃあ、俺みたいな卑しい出自の者はいいように使い倒されて、いなかったことにされちまうんだ。お前には想像もつかないだろうがな」

 その通りだった。雷天の言い分も分かる。袁紹軍は能力より出自で人を評価する傾向が強い。審判にとってそれは有利な条件だが、その他大勢にはどうにもならない壁だった。

「雷天。俺は、俺は、お前が死んだものとばかり思ってたんだぞ」

 最早、審判は目を逸らし、全く関係のないことを言うしかできなかった。その様子を見た雷天は馬首を返した。

「そうか。そうだよな。お前が曹操軍に寝返るには、失うものがデカ過ぎだな。昔の恩義と、友達の誼で今回は見逃してやる。この先を西に迂回して進めば袁紹本陣まで敵と出くわすことなく辿り着けるだろう。だが、次に会ったときは首を頂く」

 そう言い残し、雷天は兵を退いた。

 審判の配下は命拾いし安堵したが、審判はもうそれどころではなかった。それからどうやって倉亭から退却したのかよく覚えていない。ただ、次から次へと襲い掛かってくる敵兵を必死に討ち払ったのを断片的に覚えているだけだった。かつて冀州が平和だった頃、審判は戦場での華々しい活躍を夢見ていた。が、それは大量殺人を意味する。倉亭の敗戦では、その夢見た極限状態の真っただ中に審判はいた。その光景は地獄だった。思い出そうにも、それが夢か現か分からぬほどに。大勢の人間が凶器を手に取り、二つの群れに分かれて殺し合う様は、まるでヒトが下等な猿に先祖返りしたようであった。いや、猿でもここまで愚かな殺し合いなどしないだろう。

 ヒトは猿以下。

 倉亭の戦いで、審判が学んだことのひとつだった。

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