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42 認めたくなかった再会

 審判は行動を開始した。予想が正しければじき、この場所には敵、もしくは寝返った軍が攻め込んでくる筈である。が、当たって欲しくない予想はよく当たるもので、伏勢が姿を現し、進路を遮られた。更に、審判は我が目を疑った。伏勢の部隊を率いるのは雷天だったのだ。

「雷天。雷天じゃないか。どうしてお前が曹操軍にいるんだよ」

 死んだと思っていた雷天が生きていた事実には驚きだったが、曹操軍に所属しているということは、その理由は明白である。だが、聞かずにはおれなかった。

「審判か。久しぶりだな。こんなところで会っちまうとは、偶然ってのは恐ろしいもんだ。」

 雷天もバツが悪そうだった。戸惑う配下を制し、単騎、前へ出た。審判も応じて前へ出る。

「ご覧の通り、今、俺は曹操軍は干禁殿の麾下にいる。延津攻略の任についた直属の上司が無能な上、嫌な野郎でな。見切りをつけて寝返ったんだ。あのまま袁紹軍にいても、日の目は見れないのが分かったからな」

 そんな単純な理由ではあるまいと審判は思ったが、雷天は審判が口を開く隙を与えず、

「なあ、ここで会ったのも何かの縁だ。お前も、俺と来いよ。曹操軍では身分や出自に関係なく、武勲を評価してくれる。俺も戦働きを認められて、干禁軍の副将にまでなれたんだ。実は、敵を討ち取るより寝返らせた方が今回は手柄になるんだ」

 審判は雷天の言い分に怒りを覚えた。

「それが、それが裏切りの理由か。袁紹軍ではお前は評価されなかったから鞍替えしたのか。俺の父がお前を取り立てた恩も忘れたのか。それを俺が、どんな目で見ていたのかも知らなかったのか」

 その剣幕に雷天も怯んだが、静かに語り始めた。

「そうか。済まなかったよ。だがな、審配が、お前の親父が、公孫瓚討伐戦で俺に何をやらせたか、お前は知らないだろう」

 雷天の冷静な反応に審判はぎくりとした。まさか雷天の寝返りの真相が父の取立てにあったとは思っていなかった。

「俺はあの戦いで戦場には出ちゃいない。かといって審配の護衛をした訳でもない。俺がやらされたのは暗殺だ。審配にとって目障りな者、邪魔になる者の陣に潜り込み、戦のドサクサに紛れて殺すんだ。勿論、失敗すれば命はない。発覚してもそうだ。戦より危ない橋を何度も渡らされたよ。それで戦が終われば武勲もない。恩情で軍馬尉に就かせて貰ったって陰口を叩かれたときには笑ったよ。ああ、これが袁紹軍ってところなのかってな」

 審判は絶句した。雷天の話が真実である保証はない。だが、そんな嘘を用意できるほど雷天が器用でないことを知っていた。


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