表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/119

3 甘美なる過去

「審判、空元気でもいいから声でも出してくれよ。見ろよ、連中の死んだ魚みたいな目を」

 副官の粛が苦言を呈した。副官という肩書きではあるが、幼馴染の誼でのコネ人事である。そんなことが許されるのも綱紀の緩い袁家ならではだろう。実力よりも縁故の方が重視された。粛に促され審判は一同を見回す。皆、暗い顔をしている。分かりきっていたことではあるが。とはいえ、一体何を言えばいいというのか。

 元気を出せか。それで元気が出るなら苦労はない。それともお前ら、何だその面は、と、発破をかけるか。この状況でそんなことを言っても反発されるだけだろう。

 今、彼らの行く末は大方見当がついている。袁家は負けたのだ。明るい展望など何一つ見出せない。それでも彼らは歩を進めるしかない。止まれば死ぬか、虜囚の憂き目に遭うだけだ。正直、護衛の兵士達がここまで多少の落伍はあったにせよ、ついてきたのは粛の楽天的な性格と、その手腕によるところが大きい。文武に見るべきものはないが、人を纏める力は彼の方が秀でていた。が、それもそろそろ限界に近づいていた。護衛を宥める役目は粛に丸投げして、審判はといえばこれまでの来し方に思いを馳せていた。 いつから、何故、こんなことになってしまったのか。一年前の今頃は自分達には栄光が約束されていると信じて疑わなかった。その更に数年前はどうであったか。あれはおよそ十余年前、初平元年の正月。審判は十余歳だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ