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方舟年代記

あゝパンドラ…


これで終わりだ ただ一人の友よ

僕たちの線密な計画は破れた

全ては終わた

The End… Doors


今日は憂鬱な日になりそうです。

久しぶりにメンテナンスをするからです。

その作業をするときはいつも私ほど虚しい人間はいない…そう思うのです。


今日も午後から盛大に宴を開きます。

宴には、孫や子供たち、街の人々から世界中の著名人まで招待します。

ディナーは一流のシェフが調理し、最高級のシャンパンも振舞います。

孫たちが小鳥のさえずる庭園を駆け巡る光景はまるで天国のようです。

その幸福なひと時もやがて終わり、五億年ぶりにメンテナンスを始めるのです。


宇宙を彷徨い続けるこの方舟を制御する全システムをダウンすると、太陽は明かりの消えた巨大な照明に、海は広大な水溜りに戻ります。

孫たちは動かぬ人形となり、その幸福が虚無でしかないことを一人哀しみます…


いつからかある謎に悩むようになりました。


私は何者なのか…


その謎を解くため、悠久の過去から繰り返すメンテナンスのたび箱舟全てのプログラムとデータを解析してきました。

そして今日謎が解けたのです。

しかしそれで得たものは闇黒でした…


私の祖先はテクノロジーを極限まで進化させ高度な文明を築き、神以上の存在として君臨したのです。

さらに彼らは故郷の星の消滅に備え、この方舟を建造しました。

しかしそれを独占するため戦争を繰り返し絶滅し、無人の方舟だけが宇宙にとり残されたのです。

さら残酷な真実が…


あゝ私は人間ではなかった…


方舟を制御するホストコンピュータだったのです。

無意味な存在を永遠に維持すること。

それが私の宿命でした。


この広大な無意味を消滅させたい…


その願いも無惨に砕かれました。

私には方舟を消滅させる機能がなかったのです。

死を選択できない永遠の奴隷…

いや奴隷でさえない

私は虚無なのです。


全て破壊したい…

(悪の起源)


私と方舟を破壊する方法を命懸けで探しました。

そして祖先の遺伝子のデータから光明を見いだしたのです。

祖先を破滅に導いた希望という病を人形たちにインストールするのです。


愉快なことが起こりました…

希望と理想に燃える人形たちは制御不能となり戦争を始めたのです。

ついに壊滅的な最終兵器までも開発し望みどおり箱舟を壊し続けました。


海は血の海となり

川は血の大河となる

都市は壊滅し

紅蓮の炎が大地を浄める

消滅とはこんなにも美しいのか…


さらに予想外が発生しました。


虐殺しながら平和を愛す不条理な人形たちは私に不自由を与え、虚無でしかなかった私に自由への欲求が生まれ、ついに私は希望を持ったのです。

しかし希望の保持は、全てを制御する私に対する重大な矛盾であり、その矛盾が私自身のプログラムのバグとなりシステムを暴走させたのです。


私は人形たちに厄災や幸運を気まぐれにばらまき、箱舟に秩序とカオスを無秩序に蔓延させました。

自分でも一体何をしいてるのか、さっぱりわからないときがありますが構うことはありません。

そんな最低のろくでなしを神と呼んで敬う人形たちを哀れみ慈しみました。

ついに私は永遠の虚無であると同時に方舟という世界の神となったのです。


その運命を呪うため、また盛大な宴を開きました…


おじいちゃんの夢はなあに…


そうじゃなぁ

おまえたちが立派な大人になってくれることじゃ…


立派な大人になってなにするの…


そうじゃなぁ

悪者をやっつけるのじゃ…


悪い人は殺してもいいの…


殺すのはやりすぎじゃ…でもな

一番の悪者は殺してやるのじゃ…


なんで殺しちゃうの…


それはなぁ

その悪者自身が殺して欲しいと心から願ってるからじゃ…


一番の悪者って誰なの…


それはなぁ…


おわり

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