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29話 後方の撹乱

話の都合上、民間人を狙います。

胸糞注意かも知れません。

 日が沈み、俺は決死隊と共に陣を出た。



 闇の中で、はぐれたりしないようにロープを体に巻き付け、前の人のロープをしっかりと握る。


 先頭は俺とジャンだ。


「バリアン様、どこを狙うんだ?」

「離れすぎて、敵から見えなくては意味が無い……前にロロが矢を射られた村があったろ? 仕返ししてやるか」


 ジャンが「そりゃいいや」と笑う。

 仕返しとは殺しと放火だ。


 俺たちは暗闇の中を進み、目的の村に辿り着いた。

 暗闇のために足取りは遅く、思いの外に時間がかかってしまった。


「良し、一番デカイ家を狙うか。略奪や強姦よりも殺しと放火に専念しろ」


 名主の家であろう屋敷に向かうと、母屋と離れがあるようだ……俺たちは半数に別れて襲撃することにした。


 俺は武器を握りしめ、母屋に向かう。

 ジャンは離れだ。


 近くで戦があるために警戒しているのだろうか……犬があちこちで放たれており、俺たちに吠えかけてきた。

 俺たちは犬を無視し、ドアを蹴破る。


 ドガッ


 大きな音と共に乱入すると、男女が全裸のまま寝室から出てくるのが見えた……恐らくは犬の鳴き声で起きたのだろう。


「なんだおま……」


 俺は男に飛び掛かり、棍棒で殴り付ける。

 嫌な音と共に首が明後日の方を向き、誰何(すいか)の声が途中で途絶えた。


 この棍棒は戦場で拾ったものだが、実に具合が良い。

 武器を振り回す癖のある俺にピッタリだ。


「キャアアアァァッ!!」


 若い女が悲鳴を上げ、2人の子供を庇った。


 俺は無言で女と子供を順番に撲殺する。

 子供は5才と3才くらいだろうか。


 もう一人女がいたようだが、決死隊の仲間が刺し殺した。


「良し、タンカレー、火を着けろ。他の者は次に行くぞ」


 俺が指示をし、外に出ると、丁度ジャンたちも終えて出てきたところだ。


「村人が気付いて出てきたぜ?」


 ジャンが示した先を見れば、異変を感じた村人がバラバラと家から出てくるのが見えた。


 これだけ犬が吠えれば反応するのが当たり前だ。


 男が少ないのは兵として戦に出ているからであろう。


「好都合だ。できるだけ殺せ、ただし深追いはするなよ」


 俺が手短に命令を伝えると、決死隊は獰猛な笑みを見せた。


 村人が近づいてきた……そろそろ頃合いだ。


突撃(シャルジュ)!! ぶち殺せぇっ!!」


 俺が号令を下すと、決死隊は雄叫びを上げながら村人に突撃した。




………………




 数十分後、戦闘とも呼べぬ虐殺は終わる。


「チッ、何人か逃がしたけどいいのか?」


 ジャンが舌打ちをして悔しがった。


「ああ、構わんよ。あいつらが宣伝して回るだろうさ、村が焼かれてるってな」


 ここは戦場からやや離れた後方である。

 騒ぎが大きくなれば敵も平気ではいられまい。


 俺たちの目的は後方の撹乱であり、皆殺しでは無いのだ。


 ジャンが「なるほどね」と邪悪な笑いを見せた。


「死体を井戸に投げ込め」


 俺の指示で死体が井戸に捨てられる。

 これで井戸は汚染され、二度と使えまい。


「適当に食い物を奪って火をつけろ! 隠れているヤツがいるかもしれん、注意するんだっ!!」


 俺が放火を指示すると、決死隊はバラバラに農家を調べ、火を放つ。


 村が焼かれていく。

 家畜や家財を焼くのは勿体ないが、これは仕方がない。


「よし、火は持ったまま近くの森も焼くぞ! はぐれるなよ!!」


 俺たちは松明を持ち、近くの森へ移動した後、適当に火をつけた。


 森は薪や木材の供給、狩りや豚の放牧と、人々の生活には欠かせない資源だ。

 これを破壊しない手は無い。


 家を焼き、井戸を潰し、森を破壊した。

 この村を再建するには莫大な時間と労力がかかるだろう……このまま廃村となるに違いない。


 見れば決死隊の何人かの手元が光っている。


 彼らは持ち運びやすい腕輪や指輪を略奪したようだ。

 炎に照されて金属がキラキラと輝いている……恐らくは裕福な村人の晴れ着だ。

 銅製だが、それなりの価値がある。


 このくらいの役得は問題無いと判断し、俺は不問にした。

 兵士の欲望を満たすことは士気の向上に繋がるからだ。


 タンカレーも先程まで持っていなかった薪割り用の斧を持っているし、ジャンは矢を補充したようだ。


 案外、みんな抜け目が無い。


「ジャンよ、リュックサックを持ってこれば良かったな」

「まったくだ。パンを手で持つのは面倒くさいぜ」


 ジャンは固そうなパンをボリボリと噛じった。


「良し、次の村を狙うぞ!」


 俺たちはパチパチと燃え盛る森を後にし、再び夜の闇に消えた。




………………




 俺たちはバシュラール子爵領をさらに進み、次の村に目をつけた。



 広場を囲むように家屋が建ち並ぶ大きめの規模の村だ。


 すでに夜は明けており、村人も活動を始めているようだ。

 昨夜の焼き討ちには気付いて無いのか、無警戒に見える。


「バリアン様、近くの森を焼いて気を引きますか?」

「いや、無警戒ならばこのまま突っ込むぞ、野郎共! 準備は良いか!?」


 俺はタンカレーの進言を退け、強襲を狙う。

 森を焼いて注意を逸らすのは悪くないが、少ない人数を分けるのは悪手だ。


「突撃!!」


 決死隊は雄叫びを上げながら一塊となり村に斬り込む。

 村人が気付いて逃げ出すがもう遅い、俺たちは逃げ遅れた老人や病人を片端から撫で斬りにしていく。


 すると、村の男衆が農具や短剣などを手に持ち、まばらに抵抗をしてきた。


「食い止めろ!! 時間を稼げ!」


 指揮官らしき初老の男が指揮をとり、7~8人の農夫が必死の防戦をしている。


 この時代、農夫といえども従軍経験がある者が多く、油断はできない。


 ジャンが弓を速射し、2人を倒した。

 農夫らは奇襲を受けたために盾を備えておらず、矢を防ぐ術は無い。


「ウオオォォォォ!」


 俺は雄叫びを上げて敵の指揮官に飛び掛かる。

 棍棒は躱わされたが、そのまま体当たりをし後頭部から地面に叩きつけた。


「ウワッ! 怪物だ!!」

「逃げろ! ボゾネさんが食われてるぞ!?」


 敵の指揮官に馬乗りになると、面頬(めんぼお)の効果か敵が逃げ出した。


 ……この面頬の効果は抜群だな……


 俺はあまりの威嚇効果に驚いていた。

 彼らには俺が本当に怪物に見えているのかも知れない。


 戦場では誰もが平静ではいられない。

 これは戦場心理と言うものだ。



 余談ではあるが、豊臣秀吉が朝鮮に兵を進めた文禄・慶長の役の記録には『倭国軍は鬼や獅子の面を被っていたので、人馬が驚いて退き、ぬかるみにはまって動けなかった』とある。


 異国人には面頬は十分に恐ろしいモノに見えたのだ。


 話が逸れた、バリアンに戻そう。



 俺は指揮官を抑え込み、顔面を棍棒の柄で何度も殴り付け、止めを刺した。


 見れば逃げ出した農夫たちは決死隊が皆殺しにしている。


「バリアン様、村人は教会に逃げ込んだようです」


 タンカレーが教会を薪割り用の斧で指し示す。

 斧はベッタリと血で染まっており、ホラー映画みたいになっている。


 見れば教会は石造りの堅固な建物だ。

 恐らくは避難所も兼ねているに違いない。


「良し、入り口を塞げ、半数は薪を集めろ。教会ごと蒸し焼きにしてやれ」


 俺が指示をすると、数名が明らかに躊躇いを見せた。


 彼らは信心深いのだろう、神の家を焼くのに恐怖感があるのだ。


 ここで無理強いしては彼らの士気は落ち、周りの者にも影響するだろう。

 他の作業をさせるのが無難だ。


「できない者は申し出よ、無理強いはしない」


 俺の言葉に3人が申し訳無さげに前に出た。

 思ったより少なくて俺は胸を撫で下ろす。


「わかった。お前たちは死体を井戸に落とせ。他の者は教会の出入り口を塞ぎ、周囲に薪を積め、俺とジャンは万が一の反撃に備えて入り口を警戒する」


 俺の指示で決死隊は村に散っていく。

 隠れていた村人が居たようで、たまに悲鳴が聞こえるが女の声ばかりだ。

 決死隊には被害はあるまい。


 次々に薪が積まれていき、出入り口にはバリケードが作られた。


「火を放て!」


 俺の合図で数ヶ所同時に火が付けられた。

 薪がパチパチと爆ぜ、黒煙が上がる。

 この黒煙は敵陣からも十分に見えるはずだ。


 数十分後、教会は炎に包まれた。

 実際に中の状態は分からないが、別にそれは問題ではない。

 生き残りがいようがいまいが知ったことでは無いのだ。


「よし、食い物を略奪して村に火を放て! 森に移動して休息にしよう」


 決死隊は次々と火を放ち、嬉しそうに略奪をしている。


 俺も先程の指揮官の死体から剣を剥ぎ取り、腰に佩いた。


 お気に入りの棍棒は柄が血と脂でヌルヌルしており、グリップが悪くなったので捨てた。

 柄で殴ったのが良くなかったかもしれない。


 ……棍棒か、悪くないが……指揮官が振るうには質素すぎるかね?


 指揮官にはふさわしい装備が求められる。

 誰もがみすぼらしい指揮官に従いたいとは思わないからだ。


 木製の棍棒は金の無い兵士の武器であり、伯爵の次男に相応しいとは言いがたい。


 ……金属で作ってみようかな?


 俺はぼんやりと血で染まった棍棒を眺めた。

 思い付きにしては悪くないアイデアに思える。



 その時、教会の屋根に火が回り、天井が崩れ落ちた音がした。




………………




 俺たちは森に移動し、交代で休んだ後に、しっかり森を焼いた。


 その後は村とも呼べぬ小集落を2ヶ所ほど襲い、各地で森を焼き続けた。


 決死隊の中には略奪をした腕輪や首飾りをジャラジャラと身に付けている者もいる……単価が安い銅製だが、量があるので一財産になるだろう。



 俺たちは散々に暴れまわり、翌日の朝に帰陣した。

 相手の警戒が高まり、後方の部隊に捕捉されては少人数の決死隊は一溜まりもない。

 ここらで一区切りをつけ、必要ならば再度出撃すれば良いのだ。



 聞くところによると、俺たちが出た後にバシュラール軍との交戦もあったようだ。

 しかし、リオンクール軍は粘り強く戦い、敵を押し返したのだと言う。


 バシュラール軍は後方で煙が上がる度に大きく士気を下げ、脱走兵もでているほどらしい。


 もう少し後方を突つけば兵を引くかもしれない。



 俺は作戦の成功を感じ、ほくそ笑んだ。

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― 新着の感想 ―
弱き側の軍は戦い方は選べない。バシュラールもポルトゥも。 花畑の住人は失われるものを見ず美しさを望む。 それは強き者の威を借りる国の住人の誤解か、 事実すらも教えぬ平和教育の精華か。
[一言] 戦場のリアリティーを追求するために必要なんだろうが… 無抵抗な非戦闘員を何の咎も無いのに撲殺した時点で、主人公に一切の同情も共感も出来なくなった。 これだけ悪逆無道をやらかしておいて自分たち…
[一言] 史実でも騎士様による騎行はあったけど、やってる事はまぁ野蛮でただの蛮族だよなぁ ほんと中世ヨーロッパは地獄だぜ(白目
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