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秘密陶芸体験

いよいよ人気投票1位バリアンと6位陶工妻が登場します。

前回の話とは全然違いますがご容赦ください。

 これは領都の拡張計画が始まったころの話だ。


 久しぶりの開拓地ベイスンへの視察に赴いた俺は、ほど近い場所に新しくできた集落に立ち寄ることにした。

 この集落はわずかに5戸。

 陶工を移住させたばかりの名もなき集落である。


 最近、瓦作りから陶芸へと趣味をシフトさせた俺は、たびたびこの集落を訪れて陶芸体験を重ねていた。


 今回の訪問の目的は集落のリーダー格である陶工が試している施釉陶の研究成果を確認するためだが、今日は折悪しく陶工は留守のようだ。


 ……まあ、亭主がいなくても視察くらいはできるしなあ。


 勝手に工房とかに入るのはちょっとアレかもしれないが、俺は王様なのだ。

 領地にあるものは俺のもの、多少のジャイアニズムは許されるはずだ(注※ダメです)。


 この地で施釉陶は珍しく、完成すれば交易品となる。

 リオンクールにも徐々に貨幣が流通してるし、贅沢品としての需要もあるだろう。


 豊かにするってのは飯が食えるようにするのも大事だけど、こうした文化が根づくことも大事だよなあ、などと考えながら工房を見学した。完成が楽しみだ。




――――――




 そして簡単に研究成果などを確認した俺は、工房にてお楽しみの陶芸体験をすることにした。さすがに勝手にはできないので陶工の妻も一緒である。

 もう何度も訪れているので、この女房も顔見知りだ。

 茶色い髪を簡単に編み込んだ女房は少しやせ型だが、尻のボリュームはある。なかなか趣きぶかい女だ。


「……まず、土を()ねて全体的に馴染ませます」

「なるほど、均一にするんだな」


 陶工の妻の動きにあわせて俺も手を動かしていく。

 指先に柔らかく、しっとりとした感触が伝わり、俺を喜ばせた。


「……次はこうして、粘土でヒモを作って……」

「こうかな?」


 俺がギュッと力をこめると陶工の妻は「ああ、いけません王様」と許しを乞う。

 だが、まだまだ器作りは始まったばかりだ。俺は手を緩めず、更に激しく動かした。


「どうしたんだ? 次は何をするのか教えてくれないと」

「ああ、そんな、いけません、それはいけません……」


 徐々に女房の指導にも熱が加わり、激しさを増す。


 こうして秘密の陶芸レッスンは続き、俺は何度も何度も教えを受けた。

 あまりに熱が入り、護衛の同胞団員から「陛下、家主がもどります」と注意されるまで続けてしまったほどだ。互いに時が経つのも忘れてしまったらしい。


 やはり、芸術とは良いものだ。

 荒んだ心を癒し、人生を豊かにする。

 俺は文化のすばらしさを再認識し、領内に広く根付かせる決意を新たにした。


 ちなみにできた器はぐにゃりと大きく歪んでいたが、それはそれで沓茶碗(くつぢゃわん)みたいで面白く、そのまま焼いて貰うことにした。

 作っている最中に「雄牛のようにたくましい」とか言ってもらったので銘は『雄牛』である。




――――――




 こうしてできた器は大不評であった。


 次女のリナは「お父さんまた変なことしてる」と顔をしかめてプイっとどこかに行ってしまった。難しい年頃なのだ。

 陶工妻との秘密体験はバレてないはずだが思春期だしなあ。


 ロロは苦笑しながら「うーん、丸い方が使いやすくないですかね」とコメントした。この遊び心がわからんとは無粋なやつだ。


 執事のモーリスは真面目くさった顔で「わかりませんが素晴らしいと思います。私にはわかりませんが」などとわかりませんを連呼していた。


 どいつもこいつも芸術には理解がない。まだまだリオンクールの地に文化が根づくには時間がかかりそうだ。


 皆の文化的啓蒙のために、来月くらいにも陶芸を学ぶ必要があるだろう。

 俺は来月の予定に領内視察と書き込んだ。

陶工妻の話を考えるのは頑張りました……明日も更新します。


リオンクール戦記2、早売りのお店はそろそろ店頭に並んでいるかも。

よろしくお願いします。

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