9.
一部説明ぶ(ry
「おいおい、こんなひょろい奴が冒険者になるつもりかよ!」
(おお!?これはテンプレの新人いびりイベント発生か?)
斧を背負った、スキンヘットの男を素早く鑑定する。
ガイモン
ジョブ:斧豪lv.32
HP:1900/1900
MP:450/450
力:320
速:128
技:160
魔:32
予想していたよりはステータスが高い。モーガンには少し劣るだろうが、それでもC級冒険者くらいの実力はあるだろう。余裕をもって対応できる範囲ではあるが。
「ああ、そのつもりだけど。」
ガイモンの挙動に注意しながら、そう応える。襲いかかってきた場合は、後ろの猫耳受付嬢に被害が及ばないよう気をつけなければならない。
「そんな細い腕で魔物の相手なんかできるのか?」
にやにやと笑いながらこちらを見るガイモン。たしかに彼の筋肉は盛り上がり、ゴブリン程度なら素手で殴り倒せそうである。
「冒険者に夢を持ってんなら、諦めてとっとと帰った方が身のためだぜ?」
「いや、身分証を作る必要もあるし、登録を止めるつもりはないよ。」
なめられても今後の活動に響くと思い、強気な口調で話す。
「そうかい。なら始めのうちは街での雑用の仕事や、外に出ても薬草採取系の依頼を取ったり、他の冒険者も一緒の護衛依頼を受けるのをすすめるぞ。調子にのって魔物の討伐依頼を受けて死ぬ奴も多いからな。準備はしっかりしろよ。」
(‥‥‥‥‥‥ん?)
「何かあったら俺に相談しても良いからな。なんたって俺はC級冒険者だからな!そんじゃあ頑張れよ。ガッハッハッハ。」
「はあ、ありがとうございます?」
背中をバシバシと叩いて、ガイモンは離れていった。あっけにとられて立っていると、受付嬢が我慢できないといった様子でクスクスと笑う。
「ガイモンさんはとっても面倒見がよくって、よく新人冒険者さんのお世話をしているんですよ。顔が怖いし口も少し悪いので、最初は誤解される方が多いんですけどね。」
「そうなんですか。てっきり、いちゃもんをつけにきたのかと思いましたよ。」
どうやら親切で話をしていたようだ。意外といい人のようで一気に気が抜けてしまった。顔で判断するのはやめようと反省するのだった。
「でも、新人が準備を怠ったり、実力不相応の依頼を受けたりして魔物に殺されるのが多いのは本当ですので、気をつけてくださいね?」
「はい。戦闘経験はありますが、油断しないよう気をつけます。」
「大変結構です。それではステータスチェックとギルドカード作成をするので、こちらの魔導具に手をのせてください。」
言われたとおりに水晶のような魔導具に触れる。素のステータスでは色々とまずいことになるので、昨夜のうちにユニークスキルの「隠蔽」を使ってステータスを弄っていた。
ステータスーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:ライト
種族:人間
年齢:18
ジョブ:槍士lv.33、召喚士lv.33
経験済みジョブ:無し
HP:1240/1240
MP:1520/1520
力:99
速:66
技:144
魔:144
スキル:槍術lv.3、召喚魔法lv.2
ユニークスキル:鑑定
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「うわぁ!すごい!ダブルジョブなんて私久々に見ました!レベルも年のわりに高い!それにユニークスキルも持ってるなんて、ライトさんすごいですね!鑑定は、名前からすると鑑定士ジョブの鑑定系スキルに似たものなんですかね?」
ユニークスキルは、個人が先天的、または後天的に持つスキルだ。ジョブに就いて取得するものではないので、転職しても消えることがない。ユニークスキルは非常に珍しく、持っているのは百人に一人とも千人に一人とも言われる。
自重はあまりする気がないので、いつかやらかしても言い訳が効くように調整した。ダブルジョブまでは表示させ、ユニークスキルも鑑定は表示している。
「あはは、もう少し小さな声で話していただけると助かるんですが‥‥‥」
猫耳受付嬢のあまりの驚きぶりに、つい苦笑いを浮かべてしまう。
「あ、すいません私ったら。それに詮索するのもご法度でした。」
「いえ、気にしていませんので、そちらも気にしないでください。」
「うぅ、すいません。あ、申し遅れました。私、受付嬢のキャロラインと言います。気軽にキャロと呼んでください。」
「キャロさんですね。よろしくお願いします。」
「はい。よろしくお願いします、ライトさん。それでは、こちらが冒険者ギルドのギルドカードになります。ステータスや実績によっては、初めから最高D級で登録されるのですが、ライトさんはレベルも高いし、実戦経験もあるそうなのでD級からのスタートになります。」
気を取り直したキャロから、タグプレートのようなギルドカードを受けとる。見ると、名前の横にD級と表示されている。
「へえ、ありがとうございます。」
「いえいえ、良い人材が相応の依頼を受けられないのは、こちらとしても損失ですので。それでは説明に入らせていただきますね。」
「はい。」
「まず、ギルドでの規則の話になります。喧嘩をしない、悪いことをしない、こまめに依頼を受けること、以上です。」
「やけに簡単ですね。これも冒険者に分かりやすいようにすることの一環ですか。」
「仰る通りです。あまり詳しく話しても理解できない方が結構いらっしゃるので。」
今度はキャロが苦笑する。
「次に、依頼と等級の話に移らせていただきます。依頼には雑用、採取、護衛や討伐等様々な種類があり、等級ごとにあちらのボードに掲示されています。」
と、キャロが反対側の壁にあるボードを指す。
「ボードから受けたい依頼をカウンターにお持ちいただくことで依頼を受けられます。また、依頼の斡旋も私達の仕事ですので、何を受ければいいか分からない時はご相談ください。」
「そうなんですね。その時は相談させてもらいます。」
「はい。お待ちしておりますね。」
キャロは満点の営業スマイルを見せて、話を続ける。
「受注できるのは、冒険者ランクと同じ等級の依頼までですのでご注意下さい。冒険者ランクはF、E、D、C、B、A、Sと上がっていきます。依頼の達成実績や経験、勤務態度等を加味し、一定のラインに達したと判断されると昇級できます。C級以上に上がる際には模擬戦を行う場合があります。高ランクになるほど強い魔物の討伐依頼が増えるので、単純に戦闘力が求められるためです。」
キャロの説明に相づちを打ちながら、内容を頭に入れる。
「最後に、等級の大まかな目安を説明して終わります。F級はゴブリンやスライム等、一般人の方でも倒せる魔物の討伐や、街付近の薬草採取、様々な雑用が依頼内容になります。E級もほとんど同じですが、討伐依頼の割合が増え、護衛依頼も受注できるようになります。D級になるとオーク等、一般人では数人いても敵わない魔物の討伐依頼が発生します。レベルでいうと、大体戦闘系下位職の20レベル以上でしょうか。」
「今の俺のランクですね。」
「はい。C級になるとオーガやオークジェネラルといった単体で脅威になる魔物や、ゴブリンキング等の、群れを発生させる魔物の討伐がメインとなります。C級冒険者の方々は皆さん中位職に就いていたり、複数職をお持ちです。ここまではギリギリ人間と言えます。最終的にはC級冒険者を目指す方がほとんどですね。」
「ギリギリ人間て‥‥‥酷い言い方ですね。」
「ライトさんは明らかに才能があるので、最低でもC級にはなると思いますよ?」
剣士や魔術師等の下級ジョブのレベルを上限まで上げたり、何らかの条件を満たすと、その系統の上位のジョブが発現することがある。中位職や中級ジョブと言われるもので、発現するかどうかは個人の才能にも左右されるため、就いている者は多くない。騎士や斧豪がこれにあたり、さらに中級ジョブを極め、多数の条件を満たすと一部の天才に上位職、上級ジョブが発現する。
「B級以上になるとドラゴンや悪魔といった、物語に出てくるような存在の討伐依頼が出されます。ここまでくると完全に人の域を越えた超人と言えますね。最低条件は上位職に就いていることです。A級以上ともなると各国に数人しかいません。」
「なるほど、参考になります。」
「高ランクになると指名依頼が来たり、貴族並みに稼いだりと人生薔薇色なので、頑張って下さいね。以上で説明を終了します。お疲れ様でした。何かご質問はありますか?」
「大丈夫です。キャロさんもお疲れ様です。」
「ありがとうございます。それではこのまま依頼を受注しますか?」
「いえ、これから用事がありますので、今日はこれで。」
「分かりました。それではまたのお越しをお待ちいたします。」
「はい。お世話になりました。」
そう言って冒険者ギルドを後にするのだった。
(才能あるみたいだし、乱暴じゃないし。顔はあんまりカッコよくはないけど、優良物件かなぁ)
キャロラインがそんなことを考えているとは、ライトは知らない。
第9話.前回テンプレと言ったな。あれはウソだ。
ステータスーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:ライト
ジョブ:槍士lv.33、召還士lv.33、英雄lv.10
HP:1950/1950
Mp:3220/3220
力:349
速:316
技:394
魔:394
スキル:槍術lv.3、召還魔法lv.2、オーバーロード、HPMP自動回復:中
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ジョブ解説
斧豪:下級ジョブの斧士を限界レベルまで上げ、斧スキルのレベルなどの条件を満たすと発現する中級ジョブ。斧系統のジョブは「力」の成長が著しいものが多い。つまり脳筋。
お読みいただき、ありがとうございます