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7.おいハク。そこを替われ

「ふふふっ、かわいい。」


「本当に。とっても愛らしいですね。」


 ブロンドの髪を肩で切り揃えた少女、セレナと、軽くウェーブがかったチョコレート色の髪を伸ばした少女ルヴィアがハクと戯れている。セレナは可愛い系、ルヴィアは綺麗系と言ったところだろうか。二人とも16歳前後に見える。


(かわえぇ~。やっぱ美少女は正義だな。)


 今、ライトとハクは馬車に乗っていた。位の高い貴族用なのだろう。人が3人に狼が1匹でも余裕がある広さだ。


 ライトが旅をしていてどこか街へ向かう途中だったことを説明すると、王都でお礼をしたいとのことだったので、世話になることにしたのだ。


「しかし、俺みたいな平民をお嬢さん方と同じ馬車に乗せて良かったんですか?」


 側面から顔を出し、並走するモーガンに声をかける。 少女二人のゆるふわ空間にまざる勇気は、ライトには無かった。


「何をおっしゃいますか。命の恩人に対して貴族も平民もありませんわ。」


 何故か応えたのはセレナだ。こちらを見据える青い瞳に向き直る。


「そう言っていただけるのはありがたいのですが。魔石までいただいてしまってすいません。」


 そう言って頭を下げる。


 ライトはオーク5匹とオーガ1匹分の魔石が入れられた肩掛けの鞄を渡されていた。護衛隊の備品である。回収を諦めた、合流前に倒した魔物の素材も、いくらか持ってくればよかったと少し後悔したのは余談だ。他には、オーガの牙だけ回収して槍と一緒に預けている。


「それはライト様が御自分で討伐された魔物の素材です。お気になさらないで。もちろん王都に着きましたら改めて謝礼をお渡しします。」


 謝礼を褒賞金だと判断したライトは、貰っておいて損はないと思い、返事をする。


「ご丁寧にありがとうございます。自分は大したことはしていないのですが。」


「謙遜なさらないで下さい。ライト様がいなければ、私達はあのオーガやオークに殺されていました。魔物を相手に舞うような姿は素敵でしたわ。丁度黒髪に黒目ですし、1000年前の勇者様のようですね。」


 こちらを持ち上げているのだろうが、勇者云々はライトには冷や汗ものだ。別段勇者レイと同一人物などとバレる訳もないのだが、どうしてもドキリとしてしまうものだった。


「それでセレナ様、先ほどご家名をウォーカーと仰いましたか?」


 言うか言うまいか悩んでいた話題を持ち出す。ライトの記憶違いでなければ……


「ええ。セレナ・ウォーカーと。お気づきの通り、このウォーク王国の第二王女ですわ。ルヴィアはランナー侯爵家の長女で、私の幼馴染みですの。」


「改めまして、ルヴィア・ランナーと申します。セレナ様のお付きをさせていただいております。」


「王女殿下に侯爵閣下のご息女でしたか。私は振る舞いも分からない平民ですので、至らぬ点があればご指摘ください。」


 やはり、セレナは正真正銘お姫様だった。ルヴィアの方も高位の貴族の娘のようだ。ウォーク王国は公侯伯子男に騎士爵を加えた貴族体制なので、二番目に高い爵位の家である。


「そんなに畏まらないでいいのですよ。先ほども言いましたが、貴族だ平民だと目くじらを立てるほど狭量なつもりはありません。」


「セレナ様や私を救ってくださったのですから。もっと気軽に話されて?」


 セレナもルヴィアも、王族や貴族であることをかさに着ることはしないようだった。


「それにしても、殿下の回復魔法は見事でしたね。護衛の皆さんの傷をあっという間に治してしまうとは。殿下こそ1000年前の聖女様のようでしたよ?」


 1000年前共に戦った、ウォーク王国の聖女を思い浮かべる。なんとなく面影が見えた気がしたのは、勘違いだろうか。


 そう。大怪我を負った隊員も含めて、セレナが回復魔法ですぐに治療してしまったのだ。ライトもオーバーロードの反動は怪我ではないので取り除くことはできなかったが、その他の傷を治してもらっていた。


「口がお上手ですのね。そんなことを誰かに聞かれたら、教国の聖女様がお怒りになってしまいますよ?」


「セレナ様は王国でも有名な回復魔法の使い手なのです。先ほどの戦闘でも、自分も戦うと仰って、引き止めるのに苦労しました。」


 上目遣いをしながら、楽しそうに話すセレナ。どうやら茶目っ気のある性格のようだ。ルヴィアはそんなことを言いながらも、セレナが褒められたことが誇らしそうに笑顔を見せる。


 そんな風に少女たちと会話したり、外の景色を眺めたりしながら過ごしているうちに、馬車は進む。セレナやルヴィアはハクの毛並みが気に入ったようで、しきりに撫でたり、時には抱きついたりと、年相応のしぐさを見せた。


 休憩時にはモーガンや護衛の兵士達とも親睦を深めることができた。


(みんな気のいい人達だな。)


 王都へとたどり着いたのは、その翌日の昼過ぎだった。




お読みいただき、ありがとうございます


次話から王都というところですが、平日は投稿できるかちょっと分かりません


土日には投稿する予定ですので、執筆ペースによっては平日も投稿します



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