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34.大事なところで鑑定しないのは大抵舐めプ

夜になってしまいましたが、投稿します

 そして翌日。ついにセレナの成人パーティー当日となる。

 開始は夕方からなので、ゆっくりと起きたライトは、午前を宿で過ごした。


「いってらっしゃい、お兄ちゃん!」


「いってらっしゃいませ」


「ああ。行ってくるよ」


 天真爛漫なノエルと、クールな表情を崩さないシルヴィーに見送られて城に向かう。

 城では、既に門衛とは顔見知りなのであっさりと通され、いつもの老執事に案内された。


 部屋自体は茶会の場所ではなかったため、新鮮味を覚えながら歩いていると、とある部屋の前で執事が立ち止まる。


「こちらで殿下がお待ちです。私はこれで」


 慇懃な態度で腰を折る老執事に礼を告げ、ノックをするライト。

「どうぞ」と声がするので中に入り、そして言葉を失った。


 そこに居たのはセレナだ。しかし見慣れた筈のセレナは着飾り、少しの化粧をしているのだろう。目が冴えるような美少女であることをライトは再認識する。


 ドレスは瞳の色と同じ透き通るような青。そして過度にならないくらいのアクセサリーをしている。特に銀に輝くティアラが目線を上に集め、その端正な顔立ちが嫌でも目に入る。


(綺麗だ)


「ライト様?どうかなさいましたか?」


「あ、ああすいません。あまりに綺麗だったもので見惚れてしまいました。とてもお似合いですね」


 セレナに心配そうに聞かれたことで正気を取り戻したライトは、早口に話す。途端、セレナは赤面する。


「あぅ、ありがとうございます‥‥‥」


「良かったわねセレナ。おめかしがんばったものね」


「ル、ルヴィア!」


 いつものようにルヴィアがからかい、セレナが慌てる。特に緊張している訳でもないようだ。

 ルヴィアの方は主役を立てるためか、普段よりも特に着飾っているような点は見られない。


 と、そこに様子を見に来たのだろう。アルベルトが姿を見せた。


「セレナよ。様子はどう、だ‥‥‥」


 アルベルトもライトと同じように停止した。


「おおおお!さすが我が娘だ!こんなに綺麗になって」


 その取り乱しっぷりは、今にも泣き出さんばかりだった。

 その後もひとしきりセレナを褒めちぎったアルベルトは、ライトにも声をかけた後宰相であるルヴィアの父に引きずられて行った。




 それから少しの間を部屋で過ごし、係りの者から呼ばれたのでセレナやルヴィアの先導に従った。


 着いた場所はパーティー会場の控え室のようであり、アルベルトとその妻、つまりは国王と王妃がいた。アルベルトに普段のおちゃらけた様子は微塵もなく、そこには国を背負う男の覇気のようなものが感じられた。


「時間だ。行こうか」


 そう言って立ち上がるアルベルト。それに従いその場の皆が動き出した。





 会場には数多くの貴族が集まっていた。恐らくは王都に住む貴族の殆ど、そして王都外からも多数の貴族が来ているのだろう。

 派閥があるのか仲が良い者で固まっているのか、あちらこちらで複数の団体やグループが出来上がっている。


 そして、当主だけでなくその子息令嬢も多く来場していた。

 セレナと同じく今年成人を迎える者達の顔見せと縁談の取り付けも、このパーティーに含まれているようだ。


 思い思いに話している貴族達だったが、アルベルトを先頭に王族が入場すると一転して静まり返った。さすが貴族と言ったところか。

 ちなみに、王族を一ヶ所に集めると防衛上危険なので、今回はセレナとその両親だけの出席となっている。


「皆、よく集まってくれた。娘の成人という祝いの日にこれだけの貴族が参加してくれることを嬉しく思う。長い言葉は無用であろう。ゆるりと楽しんでいってくれ」


 厳かに口を開いたアルベルトは、最後には優しい笑みを浮かべて締めくくった。


 それからは先程までの活気を取り戻し、子息や令嬢を連れた貴族を筆頭に、挨拶回りに精を出している。

 勿論、前に座している国王夫妻やセレナにも、位の高い者から順番に挨拶をしにやってくる。


 公爵や侯爵、更には辺境伯までもが領地を離れてこのパーティーに参加していた。


 次々とやって来る者達や、会場にいる人間を流し見しながら鑑定し、怪しい者がいないか警戒を続ける。目に写る警備の知り合いは、マルコ含めて警備に集中していた。驚いたことに、モーガンも会場の警備として隅で待機していた。


「ご機嫌麗しゅう、セレナ殿下」


「ええ、ありがとうございます。ベッケンバウアー侯爵」


 セレナを下卑た目で見る、豚貴族も出席しており、現在セレナと話している。傍らに控えるライトは気を抜かずに警戒する。


 ベッケンバウアーはいい歳を過ぎたおっさんでありながら、息子ではなく自分の妻にセレナを欲しているという悪趣味な親父だ。

 セレナも、途切れることのない挨拶の列や、ベッケンバウアーへの対応で少しずつ疲れてきているようだ。


「セレナ殿下、私と婚約を交わせば、必ず幸せにして差し上げますぞ」


 謎の上から目線はともかく、禿げ上がったデブが気障ったらしい台詞を言っても気持ち悪いだけだ。


「閣下、失礼ですが他の方々も殿下へのご挨拶を心待ちにしておりますので、そろそろ‥‥‥」


 あまりにも長く居座るものなので、ライトがそう切り出す。セレナは助かったというように喜色を浮かべてライトを見た。


「ふん、平民の分際で。まあ良い。セレナ殿下、また後日」


 ベッケンバウアー侯爵は後ろを見やった後、せかせかと離れていった。


 少しのハプニングがあったものの、パーティーはつつがなく進行していった。

お読みいただき、ありがとうございます!

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