26.ゴールデンウィーク直前の平日はかなりキツい
すいません、昨日に引き続きかなり遅めな時間になってしまいました。
昨夜の食事の予定がオールでカラオケになるとは思ってなかったんですm(_)m
「街に帰ったら、何のジョブに就かれるのですか?」
余韻に浸っていると、シルヴィーにそう訊ねられた。
「ん?ああ、槍士と召喚士が中途半端になってるから、そっちを上げるかな。剣士系統と闘士系統はその後」
「ご主人様は元々槍士だったのですね」
「ああ、室内での護衛依頼があってさ。剣の方が扱いやすいと思って」
「街に帰るのが待ち遠しいですね」
微笑ましいものを見るような穏やかな表情でシルヴィーが言う。しかしライトにはユニークスキルのジョブチェンジがある。
「ああ、それなんだけど。俺、スキルで自分や味方のジョブ変えられるんだ」
「‥‥‥なんと言うか、失礼ですが、ご主人様って便利ですね」
そんな会話を交わすうちに槍士と召喚士をセットし、ビッグウルフのハクを召喚する。
目の前に魔方陣が浮き出し、そこから純白の毛に包まれた大柄のウルフが現れる。
「このウルフは召喚獣ですか?」
「そうだよ。D級のビッグウルフだ」
(あ、狼系かぶってるやん)
シルヴィーがハクを撫でるのを見ながらそんな益体もないことを考えるライト。
しかし、シルヴィーとハクの組合わせは存外相性が良かった。
両者ともに索的能力があり、動きが素早いため効率が増し、遊撃や前衛が充実したのだ。
また、ライトが槍に持ち替えたことで前衛のスペースが空き、シルヴィーとハクの前衛、その後ろから的確に突くライトの中衛と戦術が安定してきた。
「結構連携が上手くいってるな。まだ召喚枠が余ってるけど、これ以上は邪魔になりそうなくらいだ」
「そうですね。ハクも素晴らしい働きをしてくれています」
共に狼をルーツに持つからなのか、シルヴィーとハクはすぐに打ち解けた。若干ながら意志疎通が出来ているようでもある。
「槍も使い勝手が良いし。ドズルの親父さんいい仕事してるぜ」
「っ!ご主人様、後ろです!」
突然、シルヴィーが叫んだ。振り返ると、今まさにオークとゴブリンの集団が出現するところだった。
ハクが雄叫びを上げて突進する。先頭のオークに飛びかかり、その隙にシルヴィーが止めを差した。
「そのまま接近戦に集中しろ!後ろのゴブリンメイジは俺が受け持つ!」
返事を待たずに、ライトも突貫する。シルヴィーとハクがいる左翼に敵の注意が向いているので、右翼から攻める。
一体のオークが道を塞ぐが、足の間に槍を絡ませて態勢を崩す。そのまま石突で顔面を強打して転倒させると、槍を半回転して倒れたオークの首に撃ち落とした。
ドロップ品を残して一瞬でオークは消える。その奥に目をやると、今まさにゴブリンメイジがシルヴィーとハクに向かって魔法を放とうとしていた。
「土壁!」
無詠唱で射線上に壁を出現させ、一気に走り抜ける。ゴブリンメイジの背後に立ち、魔物を挟み撃ちにした陣形になる。
目の前に現れたライトのせいでシルヴィー達を狙えないメイジと、シルヴィー達に邪魔されてメイジを助けられないオーク。これで勝負は決したようなものだ。
ゴブリンメイジは近づかれた相手に対して抵抗する術を持たない。精々が普通のゴブリンと同じような戦闘力だ。
ライトの目の前には三体のメイジがいたが、その程度の数は敵ではない。
横に一閃して二体を仕留めると、ギャギィッと魔法を撃とうとする残ったメイジに、上段からの振り降ろしを放った。
シルヴィー達の方を見ると、五体いたオークはその数を二体まで減らしていた。先制攻撃で倒した分を抜いても、すでに二体倒していることになる。
いくら俊敏性に優れているといってもハクはまだD級の魔物である。真正面からならばオーク相手では一対一が関の山のはずだが、シルヴィーと組むことによってここまで有利に戦いを進めていた。
「離れろ、一体は魔法で始末する」
シルヴィーとハクが離脱するのを視界に捉えながら、火矢の上位魔法「炎槍」を発動する。二層のボス戦で使った時とは違い、当てることが目的なので地面に撃ったりはしない。
高速で射出された炎の槍は狙い違わずオークに命中し、業火に身を包んだオークは一瞬で命を落とした。
残ったオークはシルヴィーが両腕を切断し、ハクが喉笛を食いちぎって倒した。
「お疲れ様でした。ご主人様」
「シルヴィーもお疲れ。最初は焦ったけど、D級の魔物なら数が多くても問題ないな」
「はい、大丈夫だと思います」
オーク五体にゴブリンメイジ三体と、このダンジョンではこれまでで最も多い敵との戦闘を終え、しばらく休憩をとったライト達は、十分に体力が快復したのを確認して先に進んだ。
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