23.ジョブプラス
サブタイトルはギャルゲーではありません
ギルドを出た後、近場の食道で昼食をとった。
メニューはシルヴィーの要望に応えて肉中心のものだ。二人では初めての食事なので結構奮発した。
想像通りというか、シルヴィーは柔らかい肉よりも、分厚くて多少噛みごたえのあるものの方が好きなようだった。日本人よりはアメリカ人の嗜好に近いかもしれない。
食後のシルヴィーは耳や尻尾がパタパタと動いており、上機嫌のようである。表情にはあまり出ていないが、出会って少しの時間でも表情のままの無感情ではないことがライトには分かり始めていた。
「それで、シルヴィーは何のジョブに就いてるんだ?能力バランスはどんな感じ?」
これから戦闘奴隷として一緒に戦っていく上で、できるだけ正確な実力を把握しておくのは重要なことだ。
「ステータスを見ていただいて構いませんよ?主人は奴隷のステータスを開くことができますので」
そうシルヴィーが言うので、試しにシルヴィーのステータスを思い浮かべてみたところ、目の前にステータスウィンドウが標示された。
「おおう、本当だ。じゃあ遠慮なく見させてもらうぞ。どれどれ」
シルヴィーは少し恥ずかしそうに頬を赤らめている。
ライトノベルやマンガでよくあるように、この世界の住人にとってステータスを見られるのはあまり気持ちのいいもにではない。嘘をつけない事細かなプロフィールを見られるようなものだからだ。
ステータスにはスリーサイズ等も載っているが、ライトはできるだけ見ないようにする。
(すげー、やっぱりスタイル無茶苦茶良いな)
見ないとは言っていない。
ステータスーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:シルヴィー(奴隷)
種族:銀狼獣人
年齢:18
ジョブ:剣士lv.25、lv.
HP:720/720
MP:43/43
力:65
速:74
技:50
魔:19
スキル:剣術lv.3
ユニークスキル:超感覚、武才
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「う、うおお!?」
そこには驚異的な数値が並んでいる。獣人はその肉体的特徴から、人間よりも身体能力が高い個体が多い。魔法分野においてだけは人間に劣るが。
中でもシルヴィーは、同レベルの剣士と比べて「力」「速」がそれぞれ三割と四割ほど高い。HPも突出している。これは人間と比べてステータス上の最高到達点が同じだけ高いことを表していた。
さらに滅多に見られないユニークスキルも二つ有している。
MPと「魔」は多少低めだが、ステータスは特化させるのが一般的なので問題にはならない。
「ん?銀狼?普通の狼獣人じゃないのか?」
ライトは、シルヴィーの種族が狼獣人ではないことに気がついた。
「はい。銀狼獣人は狼獣人よりも高い運動能力を持ちます。ユニークスキルに超感覚があるのが分かりますか?それは優秀な銀狼獣人に発現するもので、五感が非常に鋭敏になります」
心なしか誇らしげに説明するシルヴィー。ふさふさな白銀の尻尾が揺れている。
ライトは当たりを引いたことを確信した。普通に奴隷商館に行っても、このレベルの才能を持った奴隷は中々いないだろう。いたとしても、今のライトが買える金額ではないはずだ。
「シルヴィーは凄いんだな。レベルも高いし。武才ってユニークスキルは字面から言って戦闘系の補助スキルだよな」
ライトの成長速度が異常なので気づきにくいが、18歳で20レベル以上の者は少ない。兵士や冒険者でも下位職のまま引退する割合が半分以上だ。
「はい。詳しくは私も鑑定したことがないので分かりませんが、そうだと思います」
ライトはさしあたって最後の質問をする。
「じゃあこれを聞いたら鍛治屋に行くけど、もう一つジョブに就けるとしたら、何がいい?」
「?どういうことでしょうか?」
シルヴィーは困惑の表情を浮かべる。耳もしおらしくペタンと倒れた。
「言葉通りの意味だよ。適正のある範囲でもう一つジョブに就けるならってこと。」
ライトは、女神の加護の力によって、庇護下にある者の同時に就けるジョブを増やすことができる。
シルヴィーはすでに奴隷としてパーティーに加わっているので、この恩恵を受けられるのだ。
また、ライトは彼女の意思をできるだけ尊重したいと考えていた。例えば彼女があまり適正のない魔法系統を希望しても、そのジョブに就けるのなら叶えてあげただろう。
「そうですね、私はライト様のお役にたちたいです。ですからライト様が喜ばれるようなジョブに就きたいですね。強いて言えば、それが戦闘職ならなおのこと嬉しいです」
「そうか」
これを聞いて、しばし悩んだ末ライトはシルヴィーの二つ目のジョブを決めた。
少しの間とは言え、ライトが黙って考え事をしているのを見て不安になったのだろう。シルヴィーが堪らず声をかけた。
「ライト様?」
「ん、ああごめん。ちょっとステータスを見てみて」
「はあ、ステータスですか?‥‥‥え、ダブルジョブ!?」
シルヴィーが今日一番の驚きの表情を浮かべた。耳や尻尾もピンと張っている。
「ど、どうして私のジョブが。これはライト様のお力なのですか?」
「誰にも言ってないから、秘密にしといてくれよ」
ライトは悪戯が成功した少年の様に笑った。
シルヴィーのステータスを確認したライト達は、鍛治屋へと向かった。元々槍を受け取る日でもあったのだが、シルヴィーの装備を揃える必要もあるからだ。
「こんちはー、ライトです。槍は出来上がってますか?」
「おう、坊主か。バッチリできてるぜ。ちょっと待ってな‥‥‥ん?横のべっぴんさんはお前の女か?」
「今日からライト様の奴隷になりました。シルヴィーです」
そう彼女が言うと、鍛治屋の親父はニヤニヤと笑い始めた。
「ほぉ~う、坊主もませてんなあ。ああ、俺は見ての通りドワーフで鍛治師をやってる、ドズルってもんだ」
何気に初めて名前を聞いたと思いながらも、ライトは苦笑いである。
「いいから、槍持ってきて下さいよ。あとシルヴィーは戦闘奴隷ですから、そんなんじゃないですよ」
「そんなんって何だ?俺は何も言ってないぜ」
「だあ!いいから槍とってこんかいザ○家の親父!」
なおも茶化し続けるドズルに、ついつい素で突っ込んでしまうライトだった。
ステータスーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:シルヴィー
ジョブ:剣士lv.25、軽戦士lv.1
HP:745/745
MP:46/46
力:67
速:77
技:51
魔:19
スキル:剣術lv.3、軽業
ユニークスキル:超感覚、武才
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