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18.ガイモンGO

今回、対人戦の描写があります。次話前書きで今話のあらすじを書きますので、苦手な方はブラバ推奨です

 盗賊の調査依頼を受けたライトとガイモンは、受け取った地図に記された街道に来ていた。商人が襲われた地点である。


「ここらへんですね。馬車の破片みたいな物が散らばっていますし」


 ライトが言うように、辺りには木片や車輪が散乱している。商人は抵抗せずに逃げたはずなので、恐らく盗賊達が荷物を奪ったあと壊したのだろう。


「連中雑な仕事してやがるな。案外速くアジトが見つかるかもしれんぞ」


 ガイモンがそう言った矢先だった。


「ガイモンさん!これ」


 指差す先は街道を外れ、林の方向。草木が繁っているが木の枝が一本折れており、地面をよく見ると消しそこなった足跡が残っている。


「おう、よく見つけたな、ライト。行くぞ」


「罠やカモフラージュの可能性は?」


「もちろんあるが、パッと見他に手がかりはなさそうだ。あくまでも調査だから危なくなれば退けばいい」


 そう言って、人が通った痕跡の残る林へと入っていくガイモン。

 冒険者としては先輩である彼に、ライトも素直に従った。





 林の中を音を音を立てないように進む。しばらくすると、そびえ立つ岩壁が見えてきた。崖を下から見ているような位置に、洞窟らしきもものが。


「ガイモンさん」


「ああ、慎重に近づくぞ」


 二人は息を殺した会話を交わす。

 洞窟の入口を遠巻きに眺めるようにして見張っていると、やがて中から二人の男達が出てきた。

 みすぼらしい鎧を着て、どちらも腰に剣を差している。


「だぁ~、負けちまうとはついてねーな」


「っとにな。見張りなんてしても、どうせ誰もきやしねーよ。どうせ明日には引き上げるんだ」


 そんなことを話ながら、入口の前に立つ盗賊。だらけた態度でろくに周囲に気を配ってえないことから、あまり練度の高い連中ではないことが分かる。


「それにしても、今日の馬車に乗ってた女、ありゃすげぇ上玉だったな」


 その言葉に、話に聞き耳をたてていたライト達が顔をしかめる。


「ああ、あんな女めったに見られないだろうな。お頭が今夜遊んだら売り払われるだろうから、俺達には関係ないけど」


「お頭は処女は傷をつけずに高値で売り払うから、どうだろうな」


 この会話で、時間に余裕がないことをライト達は悟る。

 どうやら洞窟の中で女性が捕まっているらしい。さらに、明日にはここから移動するということは、王都に戻って討伐隊を組んで再び来る頃にはすでに逃げられている可能性がある。


「‥‥‥どうしますか?ガイモンさん」


「どうするもなぁ。まあ、俺達でやるしかねーだろうな」


 視線を交わし、頷く。


「お前の方が俺よりスピードは上だろう。あの見張り、即殺できるか?」


 その言葉には、人を殺せるか?という問いも暗に含まれている。ライトは一瞬葛藤するも、すぐに覚悟を決めた。


「できます。」





 見張りの盗賊二人は、今もぺちゃくちゃと話を続けている。仕舞いにはその場に座り込む始末だ。

 木々の切れ間まで近づいたライトは、そこから一気に走りだし、男達に斬りつける。


「っ!何だおま」


 一人には直前に気づかれたようだったが、問題なく首をはねる。

 それぞれ一撃で仕留めると、林からガイモンが出てきた。


「よし、中に入るぞ。もしかしたら十人以上いるかもしれんから、油断するなよ」


「分かっています」


 言葉少なに洞窟へと侵入する二人。人を斬ったことに意識を向けないよう気を配ったのかと、心の中で感謝するライト。


 洞窟は奥で二つの道に別れていた。片方からは盗賊たちが話している声が聞こえる。昼間から酒でも飲んでいるのか、上機嫌で話す声、陽気な笑い等が響く。奥の広くなっている場所を覗くと、9人の男達が輪になって座っていた。


「どうやら連中は油断してるようだな。恐らくもう片方の道の先には奪った荷物が置かれているんだろう」


「俺もそう思います。このまま行きますか?」


「ああ。俺がコイツを投げたら戦闘開始だ」そう言って、一拍の間を置いたガイモンは、得物の斧を手前にいた男に向かって投擲する。


 男は頭に斧が突き刺さり、何が起こったかも分からぬまま絶命する。


 盗賊たちは突然の事態に動きをとめるも、侵入してきた二人を見ると、奥の男が声を荒げた。


「敵襲だ!武器を取れ!」


 そういう間にもライトは一人、ガイモンは二人をさらに仕留めている。

 戦闘力ではC級の実力がある冒険者二人の奇襲に、練度の低い盗賊程度がまともな抵抗をするのは難しい。

 一人、また一人と斬り伏せられていく。


 ガイモンの戦いには高い技術が見られた。両手持ち片手持ちを器用に使い分け、力押しではなくコンパクトな構えで次々と重い斬撃を当てていく。時には刃の腹や柄も使い効率的に敵を仕留める姿は、まさに熟練の斧使いだった。


「くそってめえら冒険者か!」


 恐らくは頭なのだろう、盗賊達の中で最もガタイのある男がガイモンと数合斬り結ぶも、その優劣は明らかだった。


断撃(ブレイク)


 ガイモンが斧の武技で頭に止めを差した時、丁度ライトも残りの盗賊を仕留め、この盗賊団は僅か数分で全滅した。


「‥‥‥終わりましたか」


「ああ、もう片方の道の先にも残ってるかもしれんが、恐らくこれで全員だろう」


 二人は道を引き返し、女が捕まっているだろう部屋へと向かった。


 そこには、一人の少女が倒れていた。みすぼらしい服に身を包み、くすんでいるが銀髪であることが分かる少女は、ひどく衰弱しているようだった。びっしりと汗を書き、意識は朦朧としているのかこちらを気にした様子もない。


「容態が悪そうだ。ガイモンさん、街に連れていって治療しないと」


「ああ、すぐに戻ろう」



 それからライト達は急いで少女を連れて王都へと戻った。少女をギルドへと預けたライトは、調査依頼の報酬を貰って宿に帰った。依頼を成功させた達成感は、なぜか感じられなかった。


お読みいただき、ありがとうございます


辛口な評価や感想お待ちしてます!もちろん甘いのもねw

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