表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/34

17.意外な事実

 ダンジョンから帰った翌朝、ライトはドロップした魔石を売りに冒険者ギルドに来ていた。

 魔石は魔道具の燃料やマジックアイテムの動力として使われる上、ある程度元の魔物のランクも分かるので、冒険者ギルドや商業ギルドで常に取引されている。


「おはようございます。キャロさん」


「あ!おはようございますライトさん。昨日はいつくるかなーって待ってたんですよ?」


 前回と同じカウンターに行くと、猫獣人のキャロラインがいた。

 猫耳がピンと立ち、尻尾がゆらゆらと揺れている。

 頬を膨らませて半目で睨み付けてくるが、迫力のはの字もない


「昨日はダンジョンに行ってたんですよ。魔石の買い取りお願いできますか?」


「はい。こちらで結構ですよ」


 ニコニコと陽気なキャロに癒されつつ、魔石を取り出す。殆どはFやE級だが、D級の魔石も三つある。


「ダンジョンってグランレイの迷宮ですか?これD級冒険者複数人パーティーの一日の収穫と変わらないんですけど‥‥‥やっぱりライトさんは普通じゃないですね」


 冒険者は金のためならなんでもするわけではない。自分や仲間の命を最優先に行動する。そうしなければ死ぬか、再起不能になるのが関の山だからだ。むしろ安全に気を配っても呆気なく死ぬことすらあるのだから。

 結果無茶な行動は控えるし、手当たり次第に戦闘をすることもない。

 また、自分と同級の魔物にはパーティーで戦うことを推奨されていることもあり、数人で一方的に勝てる相手としか戦わないのが普通だ。結果手取りが少ないとしても、命あってのものだねである。


 しかし、ライトの場合は少し事情が異なる。

 複数ジョブに同時に就けることでステータスでは格下の相手でも各ジョブのレベル適性を上回り、常に多量の経験値が取得できるのだ(さらに加護による経験値ブーストもある)。

 また、いざという時にはレベルカンストしている上位職に就くこともできるのだから、一見無茶に思えるレベリングもリスク管理は案外しっかりできているのだった。


「おう坊主!がんばってっか?」


 筋骨隆々のスキンヘッドが近づいてきた。今は並んでいる冒険者もいないので、少しここで話しても大丈夫だろう。


「ガイモンさん、こんにちは」


「ライトさんは元々D級冒険者クラスの実力がありますので、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、ガイモンさん」


 ライトとキャロラインが挨拶を返す。


「なんだ、そんじゃあ要らんお節介だったか」


「いえ、冒険者としては新米ですので、色々と教えてください」


「だったらいいんだがな。何か困ったことでもあるのか?」


「実は、昨日ダンジョンの二層で弓持ちの魔物に遭遇しまして‥‥‥」


 ライトラはダンジョンでの出来事を説明した。





「やっぱりパーティーを組んだ方がいいんですかね?盾を買うのも考えたんですが」


「それも良いが戦闘奴隷を買うのもありだぞ」


 ガイモンが予想外の言葉を返す。さらにキャロも同意するように補足する。


「パーティーを組むのもたしかにギルドは推奨しています。しかし、相性が良いメンバーを探すのは大変ですし、分配の仕方や上下関係など様々な問題もあります。臨時のメンバーで、となるとさらに問題が起きやすいです」


「冒険者が奴隷を買うのって結構当たり前なんですか?」


「キャロが言ったような問題は奴隷相手なら殆どないからな。パーティーメンバーが全員奴隷って奴もいるくらいだ。」


 ライトは王都に着いた初日に出会った一人の奴隷商を思い出した。彼がライトを冒険者だと思い、奴隷を売ろうとしてきたことに今更ながら納得する。


「そうなんですね。今度商館によってみようかと思います」





 魔石の代金を受け取り暫く話をしていると、ギルドに一人の騎士が入ってきた。


「む?ライト殿ではないか!それにガイモンも久しぶりだな」


 セレナとルヴィアの護衛隊を率いていたモーガンだ。


「モーガンさん!ご無沙汰してます」


(といっても三日ぶりくらいだけど)


「おう、兄貴か。久しぶりだな」


「え?ガイモンさんとモーガンさんって兄弟なんですか?」


 初耳である。二人は実の兄弟だったのだ。


「モーガンさんも昔は冒険者をしていて、御二人でパーティーを組んでいたそうですよ」


 キャロラインがそう教えてくれる


「へえ、何ていうパーティーだったんですか?」


 この問いに二人が息を揃えて答える。


「ガイモーガンだ!」「モーガイモンだ!」


 違った。揃ってなかった。


「あぁん?何で兄貴の名前が先に入ってんだよ、ガイモーガンだったろうがっ!」


 とガイモンが睨みを効かせると、


「何を言うか。これだからお前は。モーガイモンだったであろうに」


 モーガンも一歩も退かない。ガチムチの二人のおっさんがしのぎを削るのは、それは暑苦しい光景である。


(何をやってんだアンタら)


 などとは言えないライトだった。






「それで、モーガンさんは今日はどのようなご用件でいらしたのですか?」


 ある程度落ち着いたところでキャロラインが尋ねる。


「うむ、それが盗賊に襲われたという報告があってな。冒険者ギルドの方に調査依頼を出しに来たのだ」


 お役所と各ギルドはお互いに連携を取り合っている。冒険者ギルドと騎士団や警備隊で言えば、今回のように異変があれば調査依頼を出したりするのである。


「なるほど、十人程の盗賊に商人の馬車が襲われたわけですね。当ギルドには何も連絡が来ていないのですが、護衛は雇っていなかったのでしょうか?」


 渡された書類を見てキャロラインが呟く。商人が馬車で移動する場合には、お抱えの護衛がいない限り冒険者を雇うのが常識だ。


「依頼料をケチったのであろう。荷馬車を置いて馬で逃げたのでなんとか助かったようだ」


「分かりました。ではこちらで調査依頼を出しておきます。すでに多くの冒険者が依頼を受けて出払っておりますので、調査が行われるのは明日になると思われます」


「街の近くで盗賊が出るってんなら、調査は早い方がいいな。丁度今俺が空いてるが、パーティーメンバーがそれぞれ所用でな‥‥‥」


 そう言って、ガイモンがこちらを見る。キャロラインとモーガンも期待するように視線を送る。


(さっき臨時パーティーは危ないと言ってたのに。まあ、どうせダンジョンに行く以外予定はないしな)


「俺でよければご一緒しますが、二人だけで大丈夫なんですか?」


「十人規模の盗賊相手で、さらに討伐ではなく調査であればD級の依頼として扱われるはずだな?」


「はい。モーガンさんのおっしゃる通りです。ガイモンさんはベテランで実力はたしかですし、ライトさんも戦闘能力は問題ないでしょう」


 モーガンの確認にキャロラインが答える。これを聞いてガイモンはニヤリと笑った。


「決まりだな。準備が出来てるならこのまま行くぞ」


「俺は大丈夫ですよ」


 その場でキャロラインが依頼を発行し、ライトとガイモンは商人が襲われた街道へと向かうのだった。






お読みいただき、ありがとうございます


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ