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15.ダンジョンへ行こう(お前らはコボルトの命乞いを聞いたことがあるのか?)

 ダンジョンの一層は、洞窟のような構造をしている。むき出しの岩の壁や天井はゴツゴツとしており、地面はある程度均されている。また、ダンジョン内は真っ暗ということはなく、何故か一定の明るさが保たれている。


(お~、これぞダンジョン、迷宮って感じだな)


 キョロキョロと視線を動かしながら進む。しかし、その姿から想像されるほどの隙はない。


「今の俺はまた弱くなってるからな。それでなくても魔物相手は命がけなんだ。気を引き締めよう」


 そんなことを考えながら歩いていると、曲がり角からコボルトが2匹姿を見せた。コボルトはゴブリンと同じく、F級の魔物だ。背丈も似たようなもので、頭が犬のようになっており、全身に茶色い毛が生えている。犬といっても愛嬌などは全くなく、狂暴な獣の顔である。

 まだコボルトはこちらに気づいていないようだ。今のライトは1レベルなので、先ずは安全に遠距離から攻撃を始める。


「火の矢、敵を射抜け―――火矢(ファイアアロー)


 無詠唱や詠唱省略を用いると威力が減少するため、通常の詠唱を行う。かざした右手の先に矢の形をした炎が発生し、一匹のコボルトに放たれる。火矢は狙いを外すことなく命中し、獲物を一撃で絶命させた。魔法を発動したことにより相手もライトに気づき、残った一匹がこちらに向かって迫る。


「いい感じだ」


 ガウッッ


 火矢の威力に満足したライトは腰に差した剣を抜き、コボルト目掛けて走る。右手に持った剣で袈裟懸けを繰り出すと、コボルトは錆の入ったナイフで受け止める姿勢をとる。


 が、ナイフもコボルトもまるでバターを切るような抵抗の無さで真っ二つになるのだった。


 レベルアップのアナウンスが脳内に響くも、ライトは剣の切れ味に驚くばかりだ。


「これは思っていたよりも良い性能をしてるみたいだ。素のままでもオーガくらいなら問題なく斬れるんじゃないか?魔法剣を乗せたらどんな威力になるんだ」


 過度な装飾が一切ない、銀色の刀身を持つ武骨な剣を見る。たった今魔物を切り捨てたにもかかわらず、血や肉片は全く付着していない。それもそのはずだ。この剣はB級以上の冒険者が使用してもおかしくない業物なのだから。


「今の俺には過ぎた武器だけど、すぐに装備に見あうくらい強くなってやる」


 気合いを入れ直したライトは、死体が消えた後ドロップした魔石を回収し、ダンジョンを進む。





 一層では、五分や十分に一度程度の頻度で魔物と遭遇する。現れるのはどの魔物もF級ばかりだった。特に苦戦することもなく攻略していると、広間のようになっている場所にたどり着く。

 広間の中央に、一際大きなコボルトが陣取り、その周りには五匹ほどのコボルトが集まっていた。背後に下へと続く階段が見えるので、恐らくここはボス部屋のような所なのだろう。大きなコボルトを鑑定すると、コボルトファイターというE級の魔物だった。階層主はその階層の魔物よりワンランク上の強さを持っているようだ。


「よし、行くか」


 ライトは一瞬で覚悟を決めると、広間に足を踏み入れる。すると、今まで動かなかったコボルト達がこちらに向かってくる。子供と同じくらいの大きさのコボルトのなかで、一匹だけ大人ほどもあるコボルトファイターは最後尾だ。


 ライトが風魔法の風刃(エアカッター)で先制攻撃を仕掛けると、二匹のコボルトが血飛沫をあげ倒れる。数匹のコボルトが一斉に飛びかかってくるのを、無詠唱で発動した土壁(アースウォール)で遮断する。


「はっ!」


 土壁のこちら側は階段状に作っている。土壁を駆け上がって頭上から剣を数閃するだけでコボルトは全滅した。


 着地したライトにコボルトファイターが手斧を降り下ろす。ライトはそれを剣で受け止め、一瞬の鍔迫り合いの後ファイターの胴体を蹴り、仰け反らせる。体勢を崩したコボルトファイターは、呆気なく首を跳ねられてその場に崩れ落ちた。


「ふう、一層はこんなもんだな。お?」


 ライトが剣を鞘に納めるのとほぼ同時に魔物の死体が消え、ドロップ品が現れる。コボルトファイターがいた場所には、魔石と共に鉄製の箱が置かれていた。いわゆる宝箱である。


「おお~!やっぱこういうの見るとテンション上がるな!まあ、E級の魔物から出た宝箱だから、大した物は入ってないだろうけど」


 箱を開けると、中には一本の短剣が入っていた。鑑定すると、鉄で作られた普通の品だが、動きが少しだけ速くなる効果が付与されている。名前は「コボルトの短剣」と表示されている。


(安直感がすごい)


 白いウルフにハクと名付けたライトが言えることではない。

 ダンジョンでは装備品などがドロップしたり、このようにマジックアイテムと呼ばれる様々な効果が付与された物もまれにドロップすることがある。マジックアイテムは人族が作ることもできるが、同じ素材でも効果が付与されているのとされていないのでは値段が大きく異なるため、手に入れるには大金が必要だ。


「意外と掘り出し物が出たな。予備や二刀流に使えそうだし、装備していくかな」


 短剣を背中側の腰に装備して、ドロップ品を回収した後、下へと続く階段を降りていった。




 二層は、一層とほぼ変わらない環境に少しだけ一層よりも強い魔物が出現する。先程戦ったコボルトファイターのような、F級の魔物の上位個体が混ざり始めるのだ。


 階段から五分ほど歩くと、ゴブリンの上位個体ゴブリンソルジャーと、ゴブリンアーチャーが姿を見せた。











 ステータスーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前:ライト


 ジョブ:剣士lv.11、闘士lv.11、魔法剣士lv.6


 HP:840/840

 MP:1660/1660


 力:86

 速:87

 技:85

 魔:64


 スキル:剣術lv.3、体術lv.2 、基本属性魔法lv.2、魔法剣


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ジョブ解説


 魔法剣士:剣による接近戦と魔法による中・遠距離戦をこなす中級ジョブ。武器に魔法を付与して高威力の斬撃を放つ魔法剣というスキルを修得できる。本来は魔剣士というジョブが一般的なのだが、ライトには魔剣士ではなく魔法剣士が発現した。魔法剣士、勇者、英雄はそれぞれ同位のジョブよりもステータスの成長の合計が大きく、またどの能力も満遍なく成長するため、同系統職であると考えられる。


お読みいただき、ありがとうございます

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