14.ダンジョンへ行こう(行くとは言ってない)
2000pv突破しました!
「ライトさん、起きて!おーきーてー!」
「ぐえっ」
腹にのし掛かる衝撃で目が覚める。最悪な朝だ。目をあけると、布団の上にはダイブしてきたのだろう、宿の娘ノエルがいた。最高の朝かもしれない。
「おはよう、ライトさん!」
「ああ、おはよう。ノエルは朝から元気がいいな。」
「もう!朝ごはんの時間終わっちゃうよ!遅れた人にはお父さん絶対ごはん出さないんだから。」
どうやら日の出の鐘がなっても、朝食の時間になっても起きてこないので、呼びに来てくれたようだ。天使か。やはり昨日は色々ありすぎて疲れがたまっていたみたいだ。主に精神的な意味で。
ノエルが起こしてくれたおかげで朝食を食べられたライトは、顔を洗ったその足で鍛治屋が集まる通りに来ていた。資金はたんまりある。具体的にはセレナやアルベルトから貰った金貨合計300枚だ。領地を持たない法衣貴族の年給が金貨500枚だったり1000枚だったりするので、これは相当な大金だ。もちろん重量も相当だが、昨夜手にいれたユニークスキルのインベントリに収納しているため、なんの問題もない。ギルドでD級冒険者以上でないと書いてもらえない紹介状をもらっているので、門前払いもないだろう。教えられた店につくと、そのまま躊躇い無く中に入る。
「こんにちはー、冒険者ギルドで紹介されて来ましたー」
「おう?なんだ坊主。ギルドの紹介状があるってことはD級か。若いのにてぇしたもんだ。ゆっくり見ていきな」
中にいたのはずんぐりとした体型に長い髭の男。ドワーフだった。
「革鎧系と、魔法剣に使えるロングソードってありますかね?あと、このオーガの牙で槍とか造れますか?」
話しやすそうな人だったので、いくつか質問をぶつけてみる。
「そんなに一気に用意して大丈夫か?予算はいくらだ」
「全部合わせて金貨250枚くらいですかね」
ライトは隠さず予算を伝えることにした。ここで低く告げることに意味はない。また、槍はオーダーメイドで、剣は既製品を買うのは、剣の入手が急務で槍は数日後でも困らないからだ。
「なんだ、どっかの貴族の倅か?まあいい、そんだけありゃ大丈夫だな。」
親父さんが少し表情を曇らせたので、誤解をきちんと解いておく。
「いえ、平民ですよ。たまたま貴族が魔物に襲われているのを助けまして、それで大金が手に入ったんです」
「そうか。あー、なんだ。いい加減なこと言って悪かったな」
「普通はそう考えると思いますので、気にしていませんよ」
苦笑しながらそう答える。
「それで、魔法剣に耐えられるロングソードと、革鎧だったな。剣はそこに並べているものならどれでも使えるはずだ。鎧はそうだな‥‥‥丁度ブラックオーガの革鎧が坊主のサイズに合いそうなのが一着あるぞ。値段は金貨100枚だな」
「おお、それを持ってきてもらってもいいですか?」
「いいぞ。剣でもみながら待ってるといい」
都合よく条件にあう鎧があるようだ。待っている間、言われた通り剣を見ておくことにした。
指定された棚を見てみると、魔法付与を前提としているだけあり、金貨50枚以上の物がほとんどだ。ミスリルやアダマンタイトを使った剣になると、金貨何百枚もするものも多い。
鑑定を使いながら眺めていると、一つの剣が目に留まった。ミスリルとアダマンタイトの合金製の剣なのだが、その性能にもかかわらず、値段が金貨100枚なのだ。手に取って振ってみても、特に違和感はない。
(なんだこれ、絶対値段設定間違ってるだろ。曰く付き奴か?)
「どうだ、良さそうなのはあるか?」
そこに親父さんが戻ってきた。気になるので聞いてみることにする。
「この剣なんですけど、値段に合わない業物に思えるんですけど、何か理由があるんですか?」
すると、親父さんは僅かに目を見張る。
「坊主何者だ?その年で魔法剣は使える、武具の目利きも出来るたぁ、普通の冒険者じゃねえだろ。おっと、詮索は御法度だったな」
流石にライトの素性に疑問を抱いたようだが、自発的に引き下がってくれた。
「まあ、なんてこたぁねえ。中古品って話だ。とは言っても状態は新品に近いから、分かる奴が買ってくれれば良いくらいの気持ちでその値段にしてる」
どうやら、鍛治師の道楽的な行いのようだ。ライトの心の中では、この剣を買うことがほぼ決定した。
「話がそれちまったな。こいつがブラックオーガの革鎧だ。防御力はもちろん高いし、ある程度の魔法耐性もある逸品だぜ。B級でもギリギリ通用する」
鑑定でもほぼ同じ結果が出る。どころか、腕力に若干の補正がかかるようだ。名前からして黒ずくめを想像していたが、各所が鋼鉄で補強されており、銀と黒のコントラストが綺麗である。少なくとも、若干中二病を引きずっているライトにはグッと来た。
「サイズも少し調整すれば大丈夫そうですし、鎧はこれにしようと思います。槍のオーダーメイドはいくらくらいになりますか?」
この問いに、親父がニヤリとしながら答える。
「坊主は上客になりそうだからな。剣と合わせて金貨200枚以上買っていくなら、槍の分はタダにしといてやる。素材も坊主が出すことだしな」
「おお!本当ですか!?じゃあこの剣とその鎧、買わせていただきます」
「即決即断は嫌いじゃないぜ。そのロングソードはミスリルとアダマンタイトの合金製でな。ミスリルの魔法伝導率とアダマンタイトの剛性を高いレベルで両立してる。大事にしてやってくれや」
その場で代金を一括で支払い、親父に鎧を微調整してもらったライトは、カモフラージュの袋の中でインベントリからオーガの牙を取りだし、親父に渡して店を出るのだった。
装備が新しくなってホクホク顔のライトは、いよいよダンジョンに向かう。王都近くにあるダンジョンは、グランレイの迷宮と呼ばれており、入口で出入りのチェックが行われていた。そこでギルドカードを見せて、ライトはダンジョンに足を踏み入れた。
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