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11.更新来たと思ったら別視点でちょっと残念だったことないですか?だがする

 王城のとある一室。そこに二人の少女がいた。この国の第二王女であるセレナと、その友人でお付きでもあるルヴィアだ。セレナは瞳の色と同じブルーのドレスを着ており、胸元、肩、背中のラインにフリルがあしらわれている。花が咲いたようなその姿は、まさに可憐といえる。それとは対象的に、ルヴィアの着るドレスはワインレッドを基調としており、少女のあどけなさを残しつつもどこか大人の魅力を感じさせる。


「ライト様、来てくださるかしら」


「モーガン様からも伝えてくださったようだし、心配しなくてもちゃんといらっしゃるわよ。約束を破る方には見えなかったじゃない」


 午後からやって来る予定のライトを、今か今かと待つセレナと、それを妹を見るような穏やかな表情で見守るルヴィア。公の場では王女と侯爵令嬢という身分を弁えた話し方をしなければならないが、ここには二人の他には隅に控えるメイドしかいない。二人は幼馴染であり、ルヴィアの方が一つ年上なのもあって、プライベートでは砕けた話し方をしていた。


「それはそうだけど、命の恩人ですもの。王族として、きちんとしたお礼をしないわけには行かないじゃない」


(ふーん、王族として、ね)


「ねえルヴィア。このドレス変じゃないかな?やっぱりルヴィアのドレスみたいに大人っぽいものの方が‥‥‥」


「大丈夫よ。とっても可愛いわ。ライト様もきっと気に入るわよ?」


 本心からそう告げるルヴィア。


「もう、そう言うことじゃないわよ。王族として、子供っぽいとか思われたら大変だと思って聞いてるのに。あ、シャル、今日の茶葉はお願いしたものを用意してくれたかしら?」


 メイドの一人に声をかけながらも、ソワソワとした様子のセレナ。


 しきりに「王族」としての振る舞いを強調する彼女が、ルヴィアにはこれまでと違って見えた。















「来ていただけて嬉しいです。紅茶を用意していますの。どうぞお掛けになって?」


「はい、失礼します」


 内心の動揺をおくびにも出さず、無難な対応を心がけるライト。


(女性に会ったらまず褒める。ってのは安直すぎか?でもなんか高そうなドレス着てるし。他に何を話せばいいか分からん)


「そのドレス、よくお似合いですね、殿下。ルヴィア様もとても素敵です」


「まあ、ありがとうございます。嬉しいですわ」


「ありがとうございます。口がお上手ですね」


 絵に描いたような笑顔を浮かべる二人。セレナは嬉しそうに、ルヴィアはどこか楽しそうに見える。


(やっぱ貴族は余裕あるなー)


 席につくと、控えていたメイドがそれぞれ紅茶を淹れはじめる。


「どうも、ありがとうございます。」


 そう言ってメイドに小さく頭を下げると、メイドは会釈を返して部屋の隅に戻った。外を歩いてきて喉がカラカラだったので、すぐにカップを手に取り紅茶に口をつける。

 何故かじっとこちらを見つめるセレナ。何か感想を言わなければならないのだろうか。


「おいしいですね。」


 高級な茶葉を使っているのだろうが、紅茶など飲みなれているはずもなく、月並みな感想すら出てこない。美味しいのは本当なのだが。


「本当ですか?今日は私のお気に入りの茶葉をお出ししたの!気に入っていただけて良かった。このケーキも凄く美味しいと王都で評判ですの。どうぞ、お食べになって?」


 しかし、セレナは上機嫌のようだ。勧められるままにケーキも一口。チョコレートでコーティングされたそれは上品に甘く、ふわふわなスポンジケーキは舌触りがとても良い。また、紅茶との組合せもマッチしている。


 その後も、しばらくは歓談が続く。王都で過ごしてみてどうだとか、このケーキはどこの店のものなのかとか、馬車でも話したようなとりとめもない話だ。会話を楽しんでいると、ふいにルヴィアが切り出した。


「セレナ様、そろそろお礼の話をなさってはいかがでしょうか?」


「あ、私ったらすっかり忘れていました。ライト様とのお話が楽しくて、つい」


「私も楽しくてここに来た理由を忘れていました。」


 美少女との会話は、いつしても飽きないものだった。セレナも恥ずかしそうに忘れていたことを打ち明ける。


「それで、ライト様に何を差し上げれば喜ばれるかが分からなくて。もちろんお金の用意はあるのですが、他に何かご希望はありませんか?」


 バツが悪そうにそう言うセレナ。しかし、ライトの方も別段欲しいものなど無いか、金で買えるものなので気にた様子はない。


「私もお金をいただけるものと思っていましたので、構いませんよ。それに、冒険者や傭兵に支払う対価と言えば、やはりお金ですからね。丁度装備を揃えたかったので非常にありがたいです。」


「でしたら、こちらを受け取ってください。」


 すると、やはりメイドがやって来る。今度はトレイの上に袋が乗せられている。それを受けとると、ずっしりとした重みが伝わる。


「こんなにいただいてよろしいのですか?」


「命の対価としては少なすぎるくらいです。王族の護衛としても適正の範囲ですから、気にせず受けとってください。」


 僅かに困惑したように聞くと、当然と言うように頷くセレナとルヴィア。


「それなら、ありがたくいただいておきます。王女殿下とルヴィア様はお忙しいでしょうから、私はそろそろ帰らせていただこうかと思います。」


 お礼も渡されて、そろそろ頃合いかと思ったライトがそう言って立ち上がる。


「ええ、そうですね。ライト様にもご予定がおありでしょうから、あまり引き留めるのもいけませんね。」


 セレナが寂しげな表情を一瞬で隠したのを見逃さなかったルヴィアが口を開こうとした時、勢いよくドアが開かれた。


「おお、君か、セレナの命の危機を救ってくれたという少年は!」


 よく響く声で叫びながら現れたのは、壮年の男性だった。短く揃えられた金髪に、きりっとした顔立ちは覇気と威厳を感じさせる。


「お父様!?どうなさったのですか!?」


「どうもこうもあるか!娘の恩人が来ているのに、顔も出さん父親がおるか!」


 セレナと男性のやり取りに、目眩を覚えるライト。


(まてまて、王女様の父親?それってもしかしなくても、この国の国王じゃないのか?)


 まだまだ宿には帰れそうにないことを悟るライトだった。

お読みいただき、ありがとうございます


更新って何時くらいが良いんですかね。予約の時間を統一したいなーと思う今日この頃です

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