1.最初の登場人物がおっさんな件
冒頭数話の説明回って読むのめんどくさいですよね
近年、ライトノベルのジャンルの中で異世界転移、異世界転生といったものが人気を集めている。
かくいう俺も異世界ものやファンタジーが大好きだ。中世ヨーロッパの世界観を彷彿とさせる街並み、現代日本では滅多に見られないような大自然、そして何といっても剣と魔法と大冒険に心踊る。
だが、異世界「転生」、てめぇはダメだ。
ある日突然見知らぬ世界で目覚めるのは良い。最初から強いのではなく、地道な努力で力を伸ばしていく過程も大事だろう。
しかしそれが生まれたての赤ん坊によって行われる場面を想像すると、どうしても違和感を拭えないのだ。
何がダメってビジュアルについていけない。
赤ん坊が戦場で無双したり、武器や素手で格闘したりする姿を想像すると、ちょっと。それにあれ、ヒロインも必然的に幼女なのが一番辛い。俺はロリコンじゃないのだ。
肉体的な成長過程とかも別に重視してないから、最初から元の姿で転移した方がスムーズに物語が進んで面白いと思うし、何より全部異世界転移でも同じようなことができるじゃないか。
まあ、転生ものでも好きな作品もあるけど。
それにランキングに載ってたらつい目を向けちゃいますよね。」
「先程からライト殿が延々何をおっしゃっているのか私には分かりませんが、ご覧下さい。王都グランレイが見えてきましたぞ。」
隣で馬を走らせている騎士の人が声をかけてきたので街道の前方を見ると、円形に囲まれた石壁と、その前で入退の手続きをするために並んでいる人々が遠くに確認できた。
「おお、本当だ。ようやく人里でゆっくりできそうですね。」
「ええ、無事に姫の護衛を果たせて本当に良かった。我々がオークの群れとオーガに襲われた時にライト殿が助勢してくださったおかげです。重ねてお礼申し上げます。」
騎士の人が丁寧に頭を下げる。ガタイの良い渋いおっさんに畏まられてもこっちが困ってしまうじゃないか。
「いえいえ、頭をあげてください。偶然近くを通りかかっただけですので。それにこちらこそ道が分からなかったので街まで御一緒させていただき、ありがとうございました。」
この数日の間にそれなりに親しくなった間柄ではあるが、ここはかしこまる場面かと思い、なるべく丁寧な言葉遣いを心がけて話す。きちんとした敬語は使いなれていないのでどこか間違っていないだろうかとすこし不安だ。
「王城までお招きするよう姫からも言いつけられております。明日の午後にお越し下さい。衛兵にも伝えておきますので」
この誘いには正直困った。別段目立ちたくないとか、貴族には良いイメージがないとか、そんなことは考えていないが、冒険者にでもなって気ままな暮らしを楽しもうと思っていたので、フォーマルな場にいきなり呼ばれるのは少し面倒だ。
だからと言って何も予定が無いのに断るのは善意で申し出ている相手に失礼だし、そもそも王族に対して逆らう様なことをしてもろくなことにはならないだろうと、返事を口にする。
「王城に招いていただけるとは恐縮です。必ず参上致します。それでは俺は平民用の方から手続きをしますのでこれで。」
騎士の人や他の護衛達に別れの挨拶をして、外壁の門へと向かう。
そう。ライトこと伊藤光は異世界に転移していた。
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