第7話 かすかな希望
数霊の補助を受けて、倖大はアナスタシアの支配を解除した。
【倖大】
「それで? 珠陽を取り戻す方法っていうのは?」
【アナスタシア】
「その前に、確かめたいことがあります」
【アナスタシア】
「貴方は召喚者――、この世界の者ではないのですか?」
アナスタシアは思い詰めたような表情で、倖大を見つめる。
【アナスタシア】
「もし貴方が、神によってアルカディアに使わされた召喚者なら私は――」
【倖大】
「……神様がどうとかは知らないけど。ここが俺たちがいた世界と違うのは間違いないと思う」
【倖大】
「アルカディアっていうのはあんたの国?」
【アナスタシア】
「……本当に何も知らないんですね」
【アナスタシア】
「昔、祖父から聞いたことがあります」
【アナスタシア】
「神は気まぐれに、異界より有能な戦算士を呼び寄せることがあると」
【倖大】
「……じゃあ俺は、この世界の神とやらに呼び寄せられたのか?」
【倖大】
「そいつが、珠陽を殺したのか」
【アナスタシア】
「……それは、私にも解りません」
【アナスタシア】
「ただ貴方がただ者ではないということは解ります」
【アナスタシア】
「諱数近似解算出定理の早さも正確さも異常でした」
【アナスタシア】
「自慢ではありませんが、これでも今まで諱数防御計算式が上手く働かなかったことはないんですよ」
悔しそうに頬を膨らませるアナスタシアの仕草は、どこか幼い。
だが彼女の言葉を信じるなら、アナスタシアは非常に優秀な戦算士とらやであるようだ。
そして倖大には、それ以上の力がある。
【アルカディア騎士】
「アナスタシア様! ヤズド軍本陣が西の森から移動を開始しました」
ふと、アナスタシアの元へ騎士が駆け寄ってくる。
【アルカディア騎士】
「敵軍指揮官ドゥアトの姿を確認。至急お戻りください」
【アナスタシア】
「解りました。すぐに第三隊を迎撃に向かわせてください」
アナスタシアは騎士にそう命じると、改めて倖大に向き直り手を差し出した。
【アナスタシア】
「……倖大さん、でしたよね」
【アナスタシア】
「ご存じの通り、我がアルカディア軍は現在、ヤズド軍と交戦中です」
【アナスタシア】
「この地において、私は指揮を執らねばならない身。貴方とゆっくり話している暇はありません」
【アナスタシア】
「ですから少しだけ、力を貸してください」
【アナスタシア】
「貴方の力があれば、ヤズド軍に勝利することも難しくないでしょう」
【アナスタシア】
「その後ならばいくらでも、お話しします。
――貴方の大切な人を取り戻す方法を」
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