第3話 ヤズド王国
草木をかき分けて洗われたのは、3人の騎士風の男たちだった。
(こんなところで、コスプレ?)
もしかして、ヤバい人たちだろうかと、倖大は咄嗟に彼らの数値を視認した。
(……珍しい数字の並びだな)
(でも、そんなに嫌な感じはしない)
【騎士コスプレの男】
「……、――、が……e……?」
倖大は珠陽と顔を見合わせ、ひそひそとささやいた。
【珠陽】
「何て言ってるのかな? 英語じゃないよね?」
【倖大】
「たぶん違うと思う」
(観光客か?)
混乱で頭がおかしくなりそうだった。
(目が覚めたら知らない場所にいるし、携帯はつながらないし)
(人に会えたと思ったら騎士コスプレしてるし……)
【騎士コスプレの男】
「……い…ぁ、……――!」
【騎士コスプレの男】
「………e……a……」
【騎士コスプレの男】
「――!!」
【倖大】
「!?」
騎士コスプレの男たちは何事かを叫び、やや乱暴な動きで珠陽へ手を伸ばそうとした。
(は? コスプレ暴漢かよ!!)
倖大は咄嗟に珠陽の前へ出た。
だが男は気にした様子もなく倖大の腕を掴んで引き、歩くように促した。
珠陽の後ろに1人が回って、背中を押す。
【倖大】
「おい、何だよ。乱暴するなって」
【珠陽】
「こ、倖大……これって……避難所につれていってくれる……とかじゃないよね」
【倖大】
「……」
【珠陽】
「言葉も通じないし、逃げた方がいいのかな?」
【倖大】
「……いや、変に抵抗しない方がいい気がする」
何かが違う。そう思いながらも、倖大ははっきりとは否定できなかった。
(こいつらの腰の剣、重そうだし)
(本物じゃなくても武器の代わりになりそうだ)
(こんな土地勘のない所で、万が一珠陽とはぐれたらまずい)
男たちの連行されしばらく歩くと、やがて少しばかり木々の開かれた場所に出た。
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そこは一見、キャンプ場のように倖大には見えた。
だがそこに楽しげな雰囲気はない。
男たちと同じ格好をした騎士が、物々しく見張り、周囲を警戒している。
(コスプレ集団?)
(いったい何なんだよ)
信じられない思いで辺りを見渡した倖大の目に、先ほどまで木々に遮られて
はっきりと視認できなかった月が映った。
【倖大】
「……嘘だろ」
【珠陽】
「倖大? どうしたの?」
【倖大】
「月が……、月の数値が違うんだよ。こんなこと、いままでなかったのに」
長い間、数字の重なる世界を見てきて1つだけ確かな事がある。
それはあらゆるものの数字は、いつ何時見ても、絶対に変わらないということだ。
(だったら、あれは月じゃないのか)
(俺たちはいったい、どこに流されたんだ――!?)
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妙なキャンプ場につれてこられた倖大たちは、やがてひときわ大きく、豪華なテントへ連れて行かれた。
テントの中央では、体格いい壮年の男がずっしりとした体を少し窮屈そうに椅子に預けている。
【??】
「……なんじゃ、この忙しいときに!」
【倖大】
「!?」
(あれ……、言葉がわかる)
(なんで急に……)
【騎士コスプレの男】
「……e…a……! ドゥアト様。しかし……ux…こ我が軍の……lee…ガ……」
(いや、半分くらいは解らない……?)
(なんか同時翻訳がかかってるみたいな感じだけど……)
(とりあえず、この偉そうなオッサンはドゥアトっていうのか?)
【騎士コスプレの男】
「……怪しい……haw:t、……――jdiです」
【ドゥアト】
「…………スパイの…aer:k…閉じ込めておけ!!」
【騎士コスプレの男】
「はっ」
何とか言葉を聞き取ろうと苦戦しているうちに、話はまとまってしまったようだった。
やがて倖大たちは、再び騎士コスプレの男たちに連れられて豪奢なテントを出た。
半ば訳もわからないまま、今度は何もない殺風景なテントの中に押し込められる。
【珠陽】
「やだ、ちょっと何するのよ!」
縄で縛り上げようとした騎士たちに、珠陽が驚いて抵抗しようとする。
【倖大】
「珠陽、じっとして」
【倖大】
「俺たちたぶん、スパイか何かだと思われてる」
【倖大】
「しばらく閉じ込められるだけみたいだ」
【珠陽】
「えっ、倖大。言葉がわかるの?」
【倖大】
「ちょっとだけな」
縄で倖大たちを縛り上げると、男たちはテントを出て、外で見張りを始める。
倖大は耳を澄ませて、男たちの会話に集中した。
【騎士コスプレの男】
「本当に、……ガキ…スパイ……?」
【騎士コスプレの男】
「……でも十露戦争中にこんなことろ…w:eg:a。ただの市民じゃ……」
【騎士コスプレの男】
「……ヤズド……アルカディア……戦算士aex……」
(さっきより理解できる……)
【珠陽】
「ね、ねえ、今戦争って聞こえなかった?」
【倖大】
「珠陽にも聞こえたか。俺も聞こえた」
【倖大】
「何だかよく分からないけど……。俺たち、とんでもないことに巻き込まれた気がする」




