4人
4人に一体何が起こるのか。
物語は始まったばかり、皆様に最高のホラーを届けられるよう努力致します。
あれから時は経ち、彼らは皆大きくなった。あるものは都会へ出て働き、あるものは地元に残り家業を継いでいる。
それでも彼らはたまに会っては昔の話をしたり、自分の身の回りのことについて話したりしていた。
ある夏のお盆の日、彼らはまた地元で集まることになった。その日もまた、とても暑い日だった。
指定された時間に、指定された飲み屋に1番初めに顔を出したのは、美奈子だった。
すでに外は暗くなっており、所々の家では灯りのついていないようなところもある時間だが、暑さは昼の頃とあまり変わらないように感じられた。
中に入り周囲を見渡すが、当然まだ誰も来てない。
「私が1番か…」
そう呟くと次の瞬間、目の前の視界が暗くなった。
「えっ、ちょっと何?誰?」
急に後ろから目隠しをされて動揺していると、すぐに元気そうな声が聞こえてきた。
「だーれだ。」
その声の主が誰か美奈子はすぐにわかった。しかし、
「えっ、誰?ちょっと分からないんだけど。店員さんこの人変なんです。」
それを聞いた、目隠しの主は慌てて手を離し、目の前に現れた。
「ちょっと美奈子⁈私だよ。私のことを忘れたの⁈」
美奈子はクスッと笑うと、さっきまで慌てていた友人の方を見た。彼女自身も半分ふざけて慌てた様子をしていたのだろう。すぐにいつもの友人に戻っていた。その様子を見ていた店員もクスクスと笑っている。
地元で、知り合いの多いここだからこそ出来るおふざけだ。
「久しぶり、恵子。元気にしてる?」
「もちろん。美奈子も元気そうで良かった。他の2人は?まだ美奈子だけ?」
「そうみたい。きっとそのうち2人も後から来るよ。先に飲んでよう。」
「それもそうだね。」
恵子はそう言うと、すいませんと一言言って、店員にビールとおつまみをいくつか頼んだ。
「それにしても今日も暑いよね〜。もう嫌になっちゃうよ。」
恵子は服をパタパタとさせた。
額から流れる汗がスーッと、恵子の服の隙間へと落ちていった。そんな様子を見ていると恵子がなんだか少し色っぽく
見えてきた。
都会の暑い中、今まで自分は何回この行動したのだろうか。ふとそう思うとなんだか恥ずかしくなってきた。
「それでさ美奈子、今年はどれくらいこっちにいる予定なの?」
「うーん、とりあえず1週間くらいかな。恵子はいつまで休み?」
「私はいつもどおりだよ。」
「そっかー、じゃあ今年は何して過ごす?」
「うーん。とりあえず、今日は美奈子の家にお泊まりする。」
美奈子が、また?とい笑いながら言うと、恵子もまた笑いながら、またーと言っていると、さっき頼んだビールとおつまみが順に運ばれてきた。
運ばれてきたビールを口の中へ少し流すと、冷えたビールは夏の暑さを少しだけ下げてくれる気がする。
恵子はというと、主に運ばれてきたおつまみに手をつけている。恵子曰く、ビールのためにおつまみがあるのでなく。おつまみのためにビールがあるのだそうだ。
美奈子はもちろん恵子と逆の意見だが、恵子の美味しそうにおつまみを食べているところを見ていると、恵子の言っていることの方が正しいのではと思えてくる。
「しかし、あいつら遅いね。いつになったらくるんだろう。いつも、私と美奈子が先について待ってる感じじゃない?」
恵子は焼き鳥を串から食べ終え、その串をクルクルと回している。
「まぁ、しょうがないよ。みんな仕事あるんだから。それに、私の場合は休みの日に来てるわけだし。」
恵子は、ふーん、とだけ言うと串を皿にもどした。
「ねえ、美奈子。」
「何?」
「美奈子は誰かと結婚したりとかする気はないの?」
「結婚?うーん、今のところは特にする気はないかな。別に気になる人もいないし。逆に恵子はどうなの?」
「私も特に結婚したりとかは多分ないかな。でも、好きな人はいるにはいるよ。」
恵子の言葉に美奈子は驚いた。まさか彼女の知らない間にそんな相手がいるとは思っていなかったからだ。
しかし、こうなると相手が誰なのか気になってくる。今まで美奈子の周りではそういった話をあまり聞く機会がなかったせいなのだろうか、それとも一番の親友である恵子だからなのかは分からないが、多分この時人生で一番女子をしていると思う。例えるなら、彼女を100人を集めて『今までの人生で自分女子だなと思った瞬間は?』と聞いたら、100人の彼女がこの瞬間を答えるくらいだ。
「その、恵子。相手って誰?」
「秘密。」
即答だった。
「えっ、あっ、うん…。そうだよね。うん…。ごめん。」
あまりの即答に、これ以上恵子の相手が誰なのか聞こうとは思えなかった。そしてなんか悪いことを聞いた気分だった。
「ふふっ、どうしたの美奈子。もしかして、悪いこと聞いたとでも思ったの?」
少し頷くと、恵子は微笑みながらこちらをみつめた。
「大丈夫だよ。怒ってないし。それに今のでそんな風に思っちゃうなんて美奈子も相変わらず優しいね。」
「そうかな?それにしても良かった。あまりにも即答だからなんかあまり話したくことなのかなって思ったから。」
「美奈子のそういうところ、私好きだよ。」
「そっ、そう?ありがとう…」
「なに、美奈子もしかして照れてるの?」
「ふぇっ⁈」
図星だった。そしてそれ以上に彼女が照れてることをバレ、変な声が出たことにはずかしくなった。
「ふふっ、美奈子可愛い。」
「もう恵子のバカ。」
「今度はツンデレ?そんな美奈子も可愛いよ。」
彼女には、もう、これ以上は無理だった。恥ずか死しそうなのだ。
そんな時、店の入り口が開き、店員の元気な挨拶が響いた。
「あっ、美奈子。やっとあいつらきたよ。」
恵子が、呆れたように今店に入ってきた2人を見る。
「遅くなって悪い。こいつと一緒の電車に乗ってたんだけど、途中で電車が止まってさ。」
恵子はさらに呆れたようにため息をついた。
「涼介、それ前にも行ってなかった?どんだけ電車に嫌われてんの?」
涼介は悪い、悪いと言いながら恵子の隣の席に座った。
美奈子の隣にはもう1人の幼馴染の康太が座った。
「いや、ごめんね。遅れちゃって。涼介と同じ電車だといつも遅れるんだよ。」
「おいおい、電車が遅れたの俺のせいにするなよ。ていうか、いつもじゃないだろう。」
「まぁね、というかみんなで集まろうって日に限ってだね。そういえば。」
「最低。美奈子、今度は私たちのせいにしてるよ。こいつ。」
「いや、別にそういうわけじゃ。」
「そういうわけじゃ?なに?」
流石にもうこれ以上なんか言っても無駄だと思ったのか、嫌々ながらも、もう一度、遅れてゴメン。と、謝った。
「それで、2人はなに飲むの?私と恵子はもう2人で飲み始めてたけど。」
涼介は、しばらく考えて結局同じのでいいやと言って、店員にビールを頼んだ。康太も同じのでというと、恵子はすかさずおつまみを追加した。
「お前、本当におつまみばっかり食うな。」
それに、不満を持ったのか恵子はムスッとすると。
「別にいいじゃん、美味しんだから。それに私からしたらおつまみが本命でビールがおまけなの。」
「はいはい、そうですか。それはもう何回も聞いたよ。」
恵子は涼介のそっけない対応に余計にムッとした。
美奈子はこんな何気ない時間に、この時なぜかとても幸せな気持ちになった。
そして、もしここにあの子もいたらと思うと少し胸が締め付けられる思いにもなる。きっとここにいる誰もが胸の奥底に思っていることだろう。
結果的に、何も起きませんでしたね。
しかし、次の話では何かがきっと起こる。絶対に起こる。いや、やっぱり更に次に起こる。多分おそらく起こる。多分そう思います。
それでは、次の話でお会いできるのを楽しみにしています。




