第十三話 友情こそ最強の武器
「よし、さぁ行こっか城田さん」
ストレス発散出来たし、気を取り直して行くとしますか。
城田さんの方を向くと、城田さんがオロオロしていた。
「う、うん……」
多分、優華の事を心配しているんだろ。
チラ、チラッと優華を見る城田さん。
「大丈夫よ、気絶しているだけだから」
「え、でもこのままって訳には……」
「良いのよ、気にしなくて。ほら、遅刻しちゃう急ごう」
強引に城田さんの手を引き、学園に向かう。
足を進める最中、振り返ると優華は未だ地べたに平伏していた。
うん、放っておいても大丈夫だな。
玄関で内履きに履き替え、教室に入る。
俺たちの教室は、三階の一番端に位置している。なので階段を上らなければならない。
正直、階段登るのめんどくさい。
教室には既に、クラスメート数人がいた。
俺と城田さんは数人のクラスメート達と朝の挨拶を交わし、自分の席に着く。
数分遅れで、優華が教室に入ってきた。
もう意識を取り戻したか……、意外と早かったな。
「酷いよ、カナっち!人の事落としといて勝手に先行くなんて!」
「あんたが悪いからでしょ!」
泣きべそかきながら、優華が抱きついてくる。
鬱陶しいことこの上ない。
「ふん!」
優華の頭部にエルボーを喰らわす。
「ぎゃふ!?何すんのカナっち!」
「どさくさに紛れて、ケツ触んな!」
「バレた?」
詫びれる様子もなく、優華はチロリと舌を出した。
俺の額に青筋が浮き立つ。
「あんた、いい加減にしないとしばき倒すわよ!」
「ひぃ、これ以上はご勘弁を!」
ビクッと身体を竦める優華。
もうこれ以上疲れたくないし、止めよう。
「あれ?やらないの?」
キョトンと優華が小首を傾げる。
「あんたそんなにしばかれたいの?」
「いえいえ、滅相もない!」
手をブンブンと振り優華が否定する。
ふと、黒板の上に設置されている時計を見ると八時二十分過ぎだった。
そろそろHRの時間だ。
「優華、そろそろ自分の席に着いたら?……時間」
「え、本当だ。じゃあねカナっち、ミカっちまた後でね」
やっと騒がしい奴が去っていった。
───五限目終了直後。
遂に、次の時間は訓練だ……。訓練の事ばかり考えていた所為で、緊張し過ぎて昼飯も喉を通らなかった。
昼飯を食べてないけど、何故かお腹は空いていない。緊張で空腹も感じられなくなったのか?
六限目の集合場所がグランドの為、急ぎグランドへ向かう。
「カナさん大丈夫ですか?物凄く顔が真っ青ですが……」
隣にいた城田さんがソワソワとしだす。
「大丈夫、ちょっと緊張してるだけだから」
「あぁ、カナさんにとって今日が初陣でしたね。……そう言えば、カナさん魔装武具は何したんですか?」
「はっ!」
しまった!全然そのこと考えてなかった……。どうしよう……。
守護者候補生にとって、魔装武具は大切な商売道具とも言える代物だ。
だと言うのに、俺はそれを決めていなかった!
「もしかして、決めていなかったんですか?」
「──ギクッ!」
城田さんが俺の心を読んだような鋭い指摘をした。
「カナさん、わたしので宜しければ差し上げますよ?」
「え、良いの!?」
城田さんからの素敵な提案に俺は心底感激した。
「えぇ、わたしはもう使いませんから」
「そっか、じゃあ有り難く貰うよ」
城田さんが手を前に翳すと、魔法陣が現れそこから剣を引き抜いた。
その剣は、剣先に銃口が付いている剣銃だった。柄の部分には綺麗な装飾が施されている。
相当、高価な代物だろう。
「……城田さん、本当にこれ貰って良いの?」
「はい、カナさんならわたしよりもその剣銃──“デュナメス”を使いこなせると思いますし」
「分かった、この剣銃、大切にするね」
剣銃デュナメスを受け取り、亜空間にしまう。
グランドに着くと、何かが飛びついてきた。大体こうなるだろうと予想していた俺は、飛びついてきた何かを投げ飛ばす。
「ふっ、アタシの“ラブホールド”、訳してラブホを投げ飛ばすとは!さすがカナっち」
「何がラブホよ!このセクハラ猫娘!少しはセクハラするの止めなさいよ!」
抱き付いて来たのは、予想通り優華だった。昨日から今日と、出会って間もないと言うのにセクハラの応酬。今朝方もあったばかりだし……。
クリスさんが言ってた通り、いくらスキンシップとは言え度が過ぎてる。
「もー、カナっちアタシからセクハラを消したら何が残ると言うのさ!」
「あんたはセクハラだけで構成されてるんかい!?」
「クスッ…………」
俺達の会話を聞いてか、城田さんが笑った。
ハッと、俺達の視線に気づき慌てて手を振る城田さん。
「ご、ごめんなさい!つい……。会ったばかりなのに二人とも仲が良いなと思って」
「これのどこが仲良いのよ……」
「フフフ、カナっちはツンデレだね~。本当は仲良いって言われてうれしい癖に」
「ユウちゃん、ちょっとあそこで愉しいことしよっか?大丈夫、痛いのは最初だけだから、直ぐに気持ち良くなるわ……」
微笑みながら、優華の頭を掴む。
「……その愉しいことは遠慮たいなぁ」
「ダァ~メ♪」
優華をグランド倉庫の裏へ強制連行する。
そして……。
「カナっち、や、やめ!アギャアァァァァァァァァァ!!」
澄み渡るほど綺麗な青空に、優華の哀しく虚しい叫びが響いた。
「あれ、三鏡さんはどうしたんですか?」
愉しいことを終え戻ると、城田さんがまだ戻って来ない優華を心配し聞いてきた。
「暫くは戻って来ないと思うよ。ほら、早く行かないと遅れちゃう!」
「え、あ、ちょっ……」
城田さんの手を引き、集合場所へ向かった。




