表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/43

桑の実

 おばあちゃんのフラワーガーデンには、なぜか、桑が一本植えられている。

 孫の冬樹が小学校4年生ときに、学校の理科の時間に、蚕を一匹も育てるように持ち帰ってきた。

 そこで、秋彦さんが、蚕の餌になるように、家の近くの畑から、桑の枝を一本切り取って、庭の植木鉢に挿しておいた、すると、根がでて、葉っぱもでてきた。


 秋彦さんは、田舎育ちだったので、小さいころ、実家で蚕を育てていて、桑の生命力をよく知っていたので、いい加減な挿し木でも根がつくことを知っていた。

 冬樹の蚕の飼育は、2ヶ月ほどで終了し、蚕は繭になった。

 植木鉢に残った桑は、そのまま捨てられず、15年ほど育てられることになった。植木鉢だったので、特に大きくもならずにいたのだが、おばあちゃんの家に引っ越してくるとき、捨てられずに、やってきて、おばあちゃんのフラワーガーデンの梅の木の隣に植えられてしまった。

 すると、桑は、どんどん大きくなってしまった。


 あるとき、その桑には、桑の実がなっていた。

 秋彦さんは小さい時に、桑の実をみていたので、もぎ取って食べていた。


大都会育ちのおばあちゃんにとって、桑の実が桑の木に成っているのを見たのは初めてだったにちがいない。


おばあちゃんが、その実をみて、「桑はいつ花を咲かせたのかしら」と、いった。


秋彦さんはパニックになった。「桑の花?、桑の花?」


えー。桑の花なんてみたことがないぞ。

秋彦さんの実家には、蚕がたくさんいた。家の1階に、人間が住んでいたのだが、2階には、何万匹の蚕が飼われていたのだ。蚕が桑を食べる音が聞こえたもんだと、昔話によく語ったもんだ。


秋彦さんの子供ころは、桑と蚕にあふれていて、お手伝いもいっぱいしたのだ。


なのに、桑の花をみたことがない。ぜったいに、桑の花をみたことがない。


しかし、厳然と桑の実があるのだから、桑の花があったにちがいない。


しかし一度もみた記憶がない。


桑は花を咲かずに、実を付けるのだろうか。


大きくなった桑を眺めながら、この春には、桑の花をつけているのだろうか?


いつか、見つけてやる。


後話

そこで、秋彦さんは、注意深く観察を続けている。新芽が、出て来るときに、なにか、小さな花らしきものが、ちょろとついているのを発見。これが、桑の花なのか?桑の実が成るまで観察しよう。

まるで、小学校時代の夏休みの観察日記ではないか。50年も前の出来事だが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ