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梅の木

おじいちゃんとおばあちゃんがお店をやっていたとき、裏庭は、駐車場にしていたため、植物は植木鉢で育てていた。といっても、ほんのすこしだけ。その少ない植木鉢のなかに、ちょっと、年季のはいった梅の木があった。どうして、この梅の木がそこにあったのかは、もう誰も覚えていない。きっと、おじいちゃんが、誰かにもらったのだと思う。それは、盆栽用の梅の木で、植木鉢に植えられていたので、あまり元気が良いとは言えなかった。


それでも、毎年、春になると、ほんの数えるほどの花を咲かせて、すこし葉っぱを茂らせてた。

それは、お店の裏口の玄関に置かれていて、ときどき、おばあちゃんが水をあげていたので、なんとか生き延びた感じだった。


フラワーガーデンが出来た時、おばあちゃんは、その梅の木を植木鉢から出して、フラワーガーデンに直接植えた。元気になるかは自信がなかったが、植木鉢よりマシだろうと思ったからだ。


フラワーガーデンに植えてからもう5年になる。植木鉢の時は、古木らしく見えたし、高さを20センチぐらいだった。でも、5年もたつと、1メートル80ぐらいに成長してしまった。毎年、たくさんの花がつけ、梅の実をいくつかなるようになった。


でも、おばあちゃんはすこし悩んでいる。ここは、ちいさな庭なのに、この梅の木がどんどん大きくなって大木になってしまったらどうなるだろうと考えている。

そこで、週末になると、秋彦さんに伸びすぎた梅の枝を切るように、言いつけるのだった。いくら切っても、若い枝は、ぐんぐん伸びてくる。


もう、植木鉢になんかに戻せないくらい大きくなってしまったし、いくら秋彦さんでも、引き抜くことはできないくらい大きくなってしまった。できることは、若い枝を切るくらいだ。


でも、まだ梅の実を収穫したことがない。大都会育ちのおばあちゃんは、梅干しなんて作ったことがないので、梅の実が成っても、おじいちゃんのお仏壇に備えることぐらいしかできない。梅干しは、小田原の「ちん里う」のものしか食べない。紀州の梅干しが美味しいと教えてあげても、決して、手をつけようとしない。味が違うといって、「ちん里う」のものをわざわざ取り寄せて食べている。

このちいさなフラワーガーデンでそだった梅の実を、おばあちゃんは決して食べないだろう。この梅の木は、盆栽用の梅の木で、実のなる梅の木じゃないと、本気で信じているから。


梅の実がなったら、おじいちゃんの仏壇にあげて、梅が成ったと報告しましょう。

でも、おじいちゃんは、植木鉢に植えられた盆栽の梅の木しか知らないから、ぜったいそんな話を信じないと思う。梅干しは、小田原に限ると、おじいちゃんは言うにちがいない。


おじいちゃんの大好きだった銀座の百貨店の地下の食品売り場にも、「ちん里う」の梅干しが並ぶのは、珍しかったので、小田原から取り寄せて食べていたもんなぁ。



後話

6月7日 梅の実を収穫。隈なく探したが6個だけ。おじいちゃんの仏壇にあげて、ちゃんと梅が成ったと報告しました。おじいちゃんは、お店の経営をしていた今風にいえば、アントレプレナーだったので、植物には、ほとんど無関心でした。玄関脇の盆栽して何年も置いてあった梅の木が、実を成ったといっても、どう考えても信じてもらえないと思うけど。

 今年の実は、少なかった。花はたくさん咲いたのだが、きっと、受粉するためにハチさんが来なかったのだろう。来年は人工授粉に挑戦かな?


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