いざ出発
「そんなことになっていましたか…水中専用の装備、特にトーピドーは流石に作り置きがありません。少し時間をいただけますか?装備のマイナーチェンジも行いたいので、そうですね…3日、いや、1週間ください」
アクアがすごく活き活きした表情で言っている。
恐らくお金を気にせずに自分のやりたいように開発ができるからだろう。
「ああ、セルマさんも準備に多少時間がかかると言っていたからそのぐらいの時間はあると思う」
「ふふふふふふふ、マスター少しお使いをしてきていただけますか?必要なのは」
アクアがさらさらとメモ書きに必要なものを書き込んでいる。
えっと、魔石にミスリルとその銀糸…ジャイアントシーウィード、グラビタイト、フェニックスの尾羽?一体何を作るつもりなんだ?
「私は常々水中装備に不満を持っていました。火力が低いと。向こうでは魚雷以上の火力が必要ないからと予算が下りなかったですからね。ふふふふふふふ、楽しみです」
アクアが怪しい笑みを浮かべながら地下の魔窟に下りていった。
やりすぎないようにしろよ?
そして1週間後
俺たちはアクアに使い倒されながら日々を過ごし、新兵器と弾薬の補充が終わった丁度その時に、セルマさんから準備が出来たからすぐに出発して欲しいと連絡を受けた。
「行先はセネグ公国の南にある港町ローコリヌねぇ。お兄ちゃん、ここからローコリヌまでは馬車でのんびり行って1週間位だよ」
一週間か…現代では地球の裏側まで一日かからないのにな、まあのんびり行くとしよう。
「食糧とかの荷物はもう手配して馬車に積み込んでいるから、今日はもう寝て明日出発にしよう」
「じゃあ今晩は皆でお兄ちゃんを堪能してからのお休みね♪旅中ではお預けになるから、お兄ちゃん分を十分に補給しとかないと」
「そうね、今日はショウに頑張ってもらわないといけないから、家から持って来た極濃スピリットスネークエキスを…」
アクセリナが俺を手際良く縛りながらいつか見た水差しを取り出した。
俺、明日を無事に迎えられるのか?
翌朝、嫁達はつやつや、俺はげっそりと足取りもおぼつかない様子でアルムの正門前に立っていた。
「あら、早いわねって、大丈夫?何か彼げっそりしているけど」
セルマさんが馬車を引き連れて現れた。
「ちょっとやりすぎちゃって♪」
てへっとスティナがおどけながら言った。
…本当にな、死ぬかと思った。
「御者台には私が乗ろう」
この中で、馬車を操った経験があるのはアネッテだけなので、必然的に彼女に乗ってもらうことになっていた。
ギルドの御者さんとアネッテが運転を引き継いだ。
「私が言うのもなんだけど、ショウ気を付けて。もし駄目そうなら無理しなくていいわ。向こうと話をつけてそういう契約になっているから」
「はい、死なない様に全力でやってきます。もしもの時の為に逃げる手段も用意してあるので、駄目そうならおとなしく尻尾を巻いて逃げます」
虚数庫には隠蔽やら防護やらの魔術を施した救命艇が入っている。
救命艇はこの1週間で製作した装備の1つだ。
「なら安心ね。ローコリヌについたらこの書状を地方を治めている領主のフェルナンに渡して頂戴、何かと力になってくれるわ。頑張ってきなさい」
俺は激励の言葉と封蝋でとじられた手紙を受け取り、アルムを出発した。