敗北
現在、俺はギルドマスターの執務室の床に芋虫の様に地面に這いつくばっている。
「アクセリナ、ここを頼むわね。そうね…30分くらいかしら」
「わかりました。いってらっしゃいませマム」
セルマさんは執務室から出て行った。
「ショウごめんね…ンッ。でも、こういうのも好きでしょ?」
俺は30分程いい感じにアクセリナに貪られ、シクシクと心の中で泣いていると、こんこんとノックの音が鳴った。
アクセリナが扉を開けると、そこにはセルマさん、ライオンキング、アネッテの姿が。
「お楽しみだったようね」
俺の首筋のキスマークを目ざとく見つけたギルドマスター。
「ショウすまない。セルマさんには…」
いいんだアネッテ、君は良く戦った。
「ショウすまんが、クエストを受けてくれないか?いくら俺でもセルマには勝てん」
何?あのライオンキングが負けを認める…だと?何者なんだセルマさん。
「勿論、見返りも用意してある。討伐に成功したらお前が借りた借金を全て返済したことにしてやろう。それに移動手段、船、その他もろもろ討伐にかかる費用もこちらでもつ。受けてくれるな?」
声色は普通だが、ライオンキングの目は「本当にすまん」と言っていた。
何か弱みでも握られているのだろうか?
「お義父さんに頼まれたのなら…いやとは…言えません。装備の関係で出発は少し待っていただくと思いますが」
「なら決まりね?さっそく馬やら船の手配をするわ」
そそくさとセルマさんは部下に指示を出すために部屋を出ていった。
部屋の空気が弛緩する。
「ショウ、本当にすまん。後、アネッテを責めないでやってくれ」
ライオンキングが縄を解いてくれる。
「ええ、わかっています。っと、ふう、アルムにも影響が出ていると聞いていますし、心情的には助けたいと思っていましたから。ただ、万が一がありますから」
「ああ、くれぐれも気を付けてくれ。娘たちの悲しむ顔を見たくないし、孫の顔も見たいからな」
ガスガスと俺の肩をぶっ叩きお義父さんは帰っていった。
えらいことになってしまった。
ギルドで試しに簡単な仕事を受けようかと思っていたら、最高難易度のクエストを受けてしまった。
「海に行ったことが無いから楽しみ~。あっ、水着買わなきゃ!」
えっと遊びに行くわけじゃないですよ?いやでも、しかし…ありだな嫁達による俺の為の水着ショー。
「いくらでも買っていいぞ。あっ、領収書は切ってもらってな」
我ながらせこいが、うちの財政状況はひどいことになっているのでこれぐらいは多めにみて貰わないとな。
まあなんにせよ家に帰って皆に説明して、水中戦用の装備も調えないとな。




