水色の光
強酸で溶かされるとかどういう痛みなのだろうか。
多分体が炎に包まれるような感じだろう。
炎は俺の専売特許なのにな。
なんか冷やりとした感覚を感じる。
強酸に体を溶かされるときはひやっとするのだなと暗闇のなか思った。
なんかいい匂いもするし、さっきまで身体中痛くて熱を持っていたのだがスゥーと冷気が染み渡る。
来世があってこの記憶が受け継がれるのであれば、強酸フェチになれるかもしれない。
とバカなことを脈絡もなく考えていた。
というかドラゴンブレスって質量あるの?
なんかモニモニしているのだがと、ようやく異変に気づく。
目を開けるのが怖い、さっきから氷つく様な冷気を感じ始めた。
観念してそろりと薄目を開くと神々しいまでの水色が目にうつしだされた。
そして聞き慣れた声で水色はこう言うのだった。
「マスター、お仕置きです」
私は呆然と背後から迫ってくる膨大な魔力を感じていました。
マスターを助ける為なら私の存在が削り消えてもいいと思いながらその方法を考えました。
当然その様な方法はなく、刻一刻と魔力の渦がマスターに牙を向こうとしています。
少しでも魔力の渦からマスターを遠ざけようと私は私を構成する体を魔力に変換して、フレームに注ぎ入れていました。
それは初めての痛みでした。
存在がどんどん削りとられている私の体は途方もない熱をもって私を苛みます。
「ごめんなさい…マスター」
最後に謝罪とお別れを言います。
私を構成していた核となる部分がフレームに吸い込まれていき、私は意識を失いました。
次に目が覚めたときは光のなかにいました。
私を構成していた体は無くなっており、幽霊のようになっていました(もともと精霊は物質には触れられないのですけれど)。
そんな状態の私の前に、我が親愛なるマスターが駆る相羽家に代々受け継がれてきたフレームが姿を現したのです。
そのフレームが私に問いかけます。
「……?」
聞かれるまでもありません。
あの日、ショウをマスターと呼ぶようになってから、私はマスターの為に生きると決めたのですから。
「……?」
と、当然ですっっ!!
私は頬を赤らめながら言いました。
その瞬間私は新たな私となってマスターの元に帰っていくのでした。
15cm程度だった相棒は10倍くらいに身長が伸びていた。
髪の毛は腰に到達しており、その色は深い水色。瞳の色も水色である。
フリルが所狭しと使われた水色を基調としたワンピースはその体にピッタリと張り付いている。
そんな凄く水色になった我が相棒。
あと触れない筈の精霊である彼女に触われているのだ。
手をワキワキと動かすと、その透き通るような真っ白の肌をした可愛らしい顔がポッと火がついたように赤くなった。
「絶壁ではないが小ぶりだな、今後に期待」
といつも通りに冗談を言うと。
相棒の背後に般若の面が浮かぶ。
俺はプロのボクサー顔負けのコークスクリューブローをもらい回転しながらぶっ飛んでいった。