伏撃
「今日、王城に行ってきたんだけど、お姉ちゃんがいい男の人を見つけたらしいよ?」
オレンジジュースを飲みながらスティナがそういえばと話し出した。
アクアは前に聞いた話を思い出す。
確か王様に認められないと結婚できないとかで、アルムの第一王女が外国に婿探しに行っているとかだったはずだ。
「そうですか。どっちの方ですか?」
アネッテが髪の毛を手入れしながら説明してくれる。
「相当に強いと聞いた。なんでも30才くらいの土魔術師らしい」
スティナが少し興奮して様子でアネッテを補足する。
「契約精霊もいるらしいよ?お兄ちゃんみたいだね」
「もうこちらに向かっているのですか?」
「らしいよ?1ヶ月前に書かれた手紙にそう書いてあったって」
俺は上半身裸になり、傷の具合を確かめた。
「流石、レプリカとはいえアムリタだな」
古傷は消えなかったようだが、腹に空いた穴は綺麗に塞がっていた。
「アクセリナに感謝、感謝」
どうやら俺がいない10ヶ月の間に浴室をリフォームしたのか、家からせりだす様な形で浴室が大浴場に姿形を変えていた。
上機嫌でベルトをほどき
!!殺気?!
その場に倒れ込む様に地面に伏せる!
瞬間
強烈な破砕音と共に浴室の天井から脱衣場まで、土の槍が突きこまれた。
「召喚!!」
俺は俺は仰向けに体勢を変えながら45口径のハンドガンを召喚する。
天井の穴に向かって牽制射撃!
弾倉内の弾丸12発を全てくれてやる。
マズルフラッシュに照らし出された敵の姿は、大柄な男のようだった。
「月!!」
俺が新しい相棒の名を呼ぶと、リビングから白銀の剣が飛翔してきた。
立ち上がりながら右手で掴みとり、脱衣場と浴室の境の壁に身を隠す。
「ご主人様?!」
「敵の襲撃だ!!」
空になった弾倉を入れ替えて…?!
ぞくりと、背筋に悪寒が走る。
俺は本能に従い、前に飛び込み前転をする。
分厚い石の壁を突き破り、土の槍がさっきまで俺がいたところを突き刺した。
この敵は危険だ!
「こっちに来るな!!」
俺は嫁達に逃げろと叫ぶ。
脱衣場の天井を月で丸く斬りとり、襲撃者のいる天井に躍り出た。
「召喚」
謎の土魔術師はこの世界では俺しか使うことが出来ない筈の魔術を行使し、見慣れた茶色の魔術外骨格を呼び出した。
「なっ?!す、須藤さん?!」
俺とチームを組んでおり、ここにはいない筈の頼れる先輩の機甲魔術師が、俺に向けて殺気を放っていた。