狩り
再びフレームを召喚する。
改めて機体性能を確認しておこう。
索敵と隠蔽の魔術を行使してみる。
「これは凄いな…」
まず索敵性能だが、パッシブ、アクティブ共に性能が劇的に向上している。
湖の底から、雲の上まで一目瞭然だ。
次に隠蔽だが…
隠蔽魔術を行使し、助走をつけブーストジャンプで蒼月湖の小島から跳ぶ。
出来るとは思っていたが想定以上の跳躍力とブースト性能だ。
それに、静穏性、擬装効果も激しい運動をしてもほぼ減衰することがない。
完全に斥候に特化した機体に変化したようだ。
「私の特技がそのまま機体に反映されているようね。ということは攻撃では役に立てないかもしれないわね」
「そうでもないと思うぞ?プランがあるから楽しみにしていてくれ」
機体の出力レベルを戦闘モードからサスペンドモードに切り替える。
これだけセンサーの能力が良ければ不意打ちに会うこともないだろう。
魔力消費を抑えた機体モードに変更する。
今度こそアルムに帰るか。
小走りで森を駆けていく。
アルムまで半ばといったところか、パッシブセンサーに感あり前方200mに中型の魔力反応2つあり。
避けることもできるが…
「アクセリナ、月戦うぞ」
機体をサスペンド状態から、戦闘出力まで引き上げる。
「隠蔽」
機体を周囲に溶かし込み跳躍、木の上に降り立った。
敵の姿を視認する。
「あれはオウルベアとアイアンタートルね。パワーとタフネスにだけ気をつければ余裕で倒せる敵よ」
「ご主人様私をお使いください!一撃で葬り去って見せましょう」
ならば、右手に月を構え何時でも跳びかかれるようにする。
あと一歩…今だ!
「…!」
木が擦れる音がすると同時に、ほとんど音も無く熊の頭上に接近。
「疾ッ!」
一撃で熊の首を刈り取った。
痛みを感じることもなかっただろう。
亀がようやくこちらに気づく。
「クリエイトエーテルエッジ!!」
「ひゃん!」
月を芯として魔力を通し刃を形成すると月が艶めかしい声をあげた。
「食らえ!」
刃が到達する直前に、亀が防御姿勢をとる。
「シューッ!!」
亀が魔力を体に巡らせた。
エーテルの刃が若干の抵抗を訴えたが甲羅をたたき割り亀が絶命した。
腕の関節に若干のエラーが発生する。
「ちょっと腕の衝撃吸収が弱いみたいだな…」
そう言いつつ熊と亀の拳大の魔石を回収する。
「肉は回収しないの?どっちも美味しいわよ」
「どの部分だ?」
「熊は右手、亀は内臓とか腐りやすいから肉でいいんじゃない?」
そういえば中国料理で熊の手が使われているものがあったな。
「試したいことがあるから左手も回収するぞ?」
ナイフを召喚し剥ぎ取ってしまう。
「水よ」
簡単に血抜きも済ませた。
「その魔術便利ね。オリジナル?」
「ああ。ただコントロールがそれなりに難しいから普及しないだろうな」
魔石と肉を虚数庫に詰め込み、その場を後にした。
アルムまであと一時間。




