朝チュン
朝
すがすがしい朝の陽気とちゅんちゅんと鳴く小鳥たちに囲まれ俺はベッドから体を起こす。
「んー!よく寝た!」
がばっと布団を蹴飛ばし、やたらと爽快な気分でベッドサイドに立つ。
「アクセリナおはようっ!」
何故か驚愕の表情を浮かべるアクセリナ。
顔を赤らめ仕切りに俺の下半身のあたりをちらちらと指の隙間から見ている。
奇妙な沈黙の後、俺はやたらとスースーするような感覚に気づく。
「「…キャーーーー!!」」
二人して悲鳴をあげた。
「誠に申し訳ない」
「まあ元はといえば私が原因だからね…」
俺が昨日履いていたズボンとその他一式が物干し台でぷらぷらと風に揺れている。
昨日やんごとなきことが起こってしまったことは状況が説明している。
「本当に申し訳ない」
「うん…もういいよ…」
……
俺はもう一度ベッドに寝転び
「アーア、ヨクネタ。オヤ、アクセリナオハヨウ!!」
と3文芝居を始める。
「…そんなことしても駄目よ」
「…本当に申し訳ない」
「もういいわ…」
その後、絶望の淵から立ち直ったのはちょうど1時間後、ベッドサイドに立てかけてあった長剣が、何無視しているのですか?と俺に問いかけてきてからであった。
「おはようございます。ショウ様、昨日は申し訳ありませんでした」
長剣が喋っている。
「その人…?その剣?、妖精の羽根の地下室にあった剣らしいわよ?」
「初めましてご主人様。お加減は如何ですか?」
「あ、ああ問題ない。むしろ昨日は助かった。君の名前は?」
白銀の様にまぶしい光を放つ長剣に問いかける。
「まだ私には名前がありません。私に名前をつけて下さいご主人様」
「そのご主人様ってのは?」
「私を手に取り戦う主のことです。私に名前をつければ使い手と認め、誓いを破らなければわが身を一生捧ることを誓います」
重い。
「誓いの内容は?」
そうですね…と考え込む長剣。
「屑男にならないというのはどうでしょう?」
意外と口悪いなこの剣。
「ちょっとショウ。よく考えて契約するのよ」
アクセリナが心配して声を掛けてきた。
この機会を逃す手はない。
「…いいだろう。お前の名前は…月雪花でどうだ?まあ大雑把に言えば、きれいな様子といった意味なんだが」
「ツキユキハナ不思議な音です。気に入りました。私は月雪花と名乗りましょう。これからよろしくお願いしますご主人様」
「ああよろしく相棒!!」
月雪花との間に魔術回路のようなものが繋がった。
「ねえオヤッサンに説明に行かないとまた縄で縛られるわよ?」
絶対にごめんだ。
とりあえず俺たちは妖精の羽根に向かうのだった。
「ちょっと入っててくれるか?」
俺は虚数庫を開き月雪花を入れようとする。
「ご主人様!!待ってください!!怖いですその空間!!絶対いやですその中に入るなんて!!」
まるでスマホのバイブレーション機能の様に震える。
「わかったわかった。ごめんなお前普通の剣じゃなかった。鞘がないからアクセリナ何か布はないか?」
「布ねちょっと待ってて…」
アクセリナがシーツを持ってきてくれた。
「朝ごはんはその辺の露店で買いましょう」
俺にシーツを手渡しながらアクセリナが提案する。
「そうだなそれでいい」
布で月雪花を包み家を後にした。